ロンドン旅 その4

イギリス滞在4日目と5日目はニューアークにて行われたアンティークフェアに赴き。
そこでまたあれこれと買い付け作業を行いました。
再び早朝に起き長時間電車に揺られ、ニューアーク駅に着いてからバスに乗り換え、
羊や牛などが遊ぶ田園風景を「おー、イギリスの田舎だ〜」と眺めつつ揺られること数分、
白いテントの立ち並ぶフェア会場に到着しまして。
今回も東京ドーム4、5個分くらいの規模だったですかね。
とにかく広いんですよね。
この日は初日だったので掘り出し物もあるかもと勇んで臨み。
アンティークの海に飛び込み荒波に揉まれました。
私もリンカーンでの経験を活かし「これはどうかな?」などと良さげな物を自ら掘り出し。
すっかり買い付け業者の面持ちで選ぶに至りました。
(見てるとだいたい相場もわかって来るのですよね)
しかしこの日は昼頃から生憎の雨模様になり。
傘を差しつつ合羽を着つつ、とりあえず買った物だけは濡らすまいと庇いながら会場を回り。
「難儀だなあ」なんて思ってるとまた急に晴れ間が出て「やっぱ雨やめた〜」とばかりに明るくなって。
「お、晴れたか!」と思いまた合羽を脱いで歩いていると再び空が暗くなって雨が落ちて来るという。
兎に角に天気がコロコロとよく変わるのですよね。
機嫌が悪いんだか良いんだか振り回されてしまうのです。
つい「んもう、どっちなの!」と地団駄を踏んでしまった私です。
イギリスの地にて踏むとは思いませんでしたが、地団駄。
ツンデレ〜」と、「どんだけ〜」のテンションで気まぐれな空につっこんでみましたけどね。


そんなツンデレ天気の中をまた100年の時の流れを経た骨董たちを相手に想いを馳せたりなどして。
個人的に楽しんでしまいました。
物を見ながらこれまでの持ち主の遍歴を想像すると面白いのですよね。
特に今回ちょっとぐっと来たのは個人が編集したスクラップブックの類いなんですよね。
映画に関する雑誌の記事をスクラップしたものや、
ボクシングに関する新聞記事などをスクラップしたもの、
家族写真を綺麗にまとめた個人的なファイルなどの個人の思いや編集が凝縮された代物なんですが。
どんな想いでこの記事を切り抜いて貼ったんだろうと考えると、個のロマンを感じてしまうのですよね。
特にボクシングのスクラップなどは全然ボクシングのこと知らないですけど、
その完成度の高さに入手したくなったほどです。
(これの価値がわかる人が買っていたんでしょうけどね)
みうらじゅん氏のエロスクラップなども文化的価値は後年になるほど増すような気もします。
(ここに氏のスクラップがあったら即完売だろうなと思ったりしました)
そんな個人的編集のスクラップなどに心奪われつつ、ツンデレ天気に翻弄されつつも
何とかそれなりに収穫を得まして。
さて今日は帰るかと荷物を引きずり歩いていると日本人の方に「こんにちは」と話しかけられまして。
見れば嫁の知り合いの方で、同業者でもあるバイヤーさんのYさんで。
彼は同じく今回買い付けに来ていたらしく、嫁が来ていることも知っていたのですね。
そこで「そちらはどうですか」などと状況を語り。
嫁と同業者同士で情報を交換し合っておりました。
彼はレンタカーでイギリスの田舎を走り回り買い付けをしているというベテランさんで、
帰りはそのまま彼にニューアークの駅まで送ってもらい、
その後「電車の時間まで1杯どうですか」と相成り、パブにてしばし歓談しました。
「送っていただいたからご馳走しますよ」と私がYさんに買ったビールを嫁がうっかり全部こぼしてしまい、結局Yさんが自分でもう1杯買うことになったという、
プラマイゼロというかマイナスになるという事件が勃発し、
パブのおっさんに「オー、ジャパニーズうっかり!」と肩をすくめられるくだりなどありましたけどね。
(嫁は「すみませぬ〜」と恐縮しジョージ・ハリスンのギターのように軽く咽び泣いておりました)
しかし外国の地で日本人の方と会うと何だか不思議と嬉しいのですよね。
ビールを飲みつつ彼の旅の話を色々伺いました。
そんなこんなでフェア初日を終えまして。


次の日もまた同じフェアを見るためニューアークを訪れ。
もう昨日さんざ見たし2日目はパスで良いじゃんという向きもあったのですが、
2日分の入場料を払っているし、気になるのもあるということで一応回ったんですが、
「あれ、昨日こんなのあったっけ?」という見落としがあり。
雨で適当に見ていた箇所もゆっくり見たら発見があったりで、意外に見応えがありました。
しかしこの日は昨日の雨は何だったんだというくらい晴れて暑く、
GAPで買った長袖を着込んでいた私は「暑い〜」と何枚か脱ぐ事態になり。
つい何日か前は冬の格好で震えていたのに、一気に真夏の気候です。
しまいには日に焼けて黒くなるという事態になりまして。
誰が6月のイギリスで日焼けすると予想し得たでしょうか。
もう「ツンデレ〜」と気まぐれな天気に再びつっこみましたけどね。
暑い中だと疲れるので休憩しながら見たんですが、
嫁はソーセージにつけるケチャップを洋服にこぼしたり、
コーヒーをこぼすなどのうっかりを連発し、
「八兵衛〜」とつっこまずにはいられなかったのですが、
暑い中のアンティーク回りに疲弊したのでしょうか。
なかなかにハードワークなのだなあと実感しましたけどね、買い付けも。
しかし一応5時までとはなっていたものの、どの業者も早く帰りたいのか早目に片付け始めるのですね。
中には3時頃から片付ける店もあり。
どの店も営業時間を守らないんだなという発見がありました。
あと飼い犬を連れて来ている業者が本当に多く、
店を覗く度に色々な犬に出迎えられました。
お客さんも犬連れの人が多く、イギリスは愛犬家が多いんだなと思いましたね。
みな人に慣れてて可愛かったですけどね。
犬カフェも兼ねているなこのフェアは、と思いつつ、そういう部分でも楽しんでしまいました。
そんなわけで犬にも癒されつつ、
すっかり日に焼けた寒がりと八兵衛は荷物を抱えてえっちらおっちら帰ったわけです。
今後はコロコロと変わる状況を見たら「イギリスの空かっ!」とつっこんでしまうだろうな、
などと思いながら。