歌とギターの夕べ 貸切り図書館14冊目

先日は鎌倉molnにて「貸切り図書館14冊目」ということでTICAさんのライブが行われました。
アーティストさんにライブ中、愛読書を紹介してもらうこの企画も今回で14回目です。
TICAさんにはぜひ出演してもらいたいなと当初から思っていたので念願が叶いました。
TICAのギターの石井マサユキさんが昔やってたThe Changというバンドが私は好きで、
今でも歌詞を空で歌えるくらい聴き込んでおり、
この熱き想いを伝えなければという個人的なミッションも抱えつつ。


そんな熱き想いでリハ時間に会場に着くとしかしボーカルの武田カオリさんしかおらず、
石井さんは?と問うと「走りに行ってます」とのことで。
そういえば本番前にジョギングしたいと言ってたなと思い、
一同しばしジョグ待ちしていると石井さんがようやく現れ。
ジョギング後の疲れが微塵も見えないので流石だなと思いつつ、
「今日はどのくらい走られたんですか?」と聞くと「22キロですね」とのことで。
あまりにさらっと言うので流しそうになりましたが、
22キロ言うたらあなたハーフマラソンですよ。
本番前にハーフマラソン走るミュージシャンがいるんだなと吃驚した次第ですけどね。
そんなランナーさんとシンガーさんはその後徐にリハを始めて。
ここで練習という感じで細かく打ち合わせしながらやっていて、
へえこんな感じなんだなあと普通にファン目線で見てしまいましたけどね。


でもってその後本番になりまして。
お客さんもいい感じで入っていただき。
武田カオリさんは可憐なドレスに着替えて、
美しい歌声を聞かせてくれ、
石井さんはガットギターで時にはアルペジオ
時にはストローク、時にはカッティングでリズムや和音を鳴らし、優雅なソロも挟み込み、
ギター1本と歌唱のみながら豊かな音世界で魅了してくれました。
ロックやレゲエ、フォークなど古今の名曲がTICAにかかれば独自のアレンジでオリジナルに聞こえるという。
客席もその音楽にうっとりと聴き惚れているかのようでしたね。
また合間の2人のザ・雑談という様相のMCも力が抜けてて良かったです。
クリスマスソングなども歌ってくれて。
馴染みのあるスタンダード曲も改めてカオリさんの歌唱で聴くと胸に染み入るのですよね。
すっかり堪能してしまいました。
本の紹介のくだりではカオリさんは岡本太郎の名言集「強く生きる言葉」を挙げてくれて。
息子さんもお気に入りの本らしいですが。
ここからいくつか名言を引用して話してくれました。
本当は安西水丸さんの本を紹介したかったそうなんですが、
本が見つからなかったそうで。
石井さんは大江健三郎の「万延元年のフットボール」を紹介してくれまして。
彼のお父さんが国語の教師だったそうで、
そのお父さんの蔵書を貰ったとのことで、
貴重なハードカバーの初版を持参して来てくれました。
内容がまんまその後の村上春樹テイストが入ってるというざっくりした解説や、
伊丹十三がこの作品をテレビ番組にしたものを当時見た話、
さらには学生時代の友人が大江健三郎賞を受賞した話など
色々なエピソードを語ってくれました。
(ちなみに大江健三郎賞を受賞した友人とは安藤礼二さんだそうです)
本1冊で色々な話が出て来るのは面白いなあと聞きながら思った次第です。
そんなわけでTICAさんによる貸切り図書館は無事終了しました。


終演後は石井さんにThe Changの話を振り、
私が如何にこのバンドを好きか熱弁したところ、
当時の興味深いエピソードを話してくれました。
ファーストアルバムの「DAY OFF」という名盤があるのですが、
これはバンドによる一発録音でほぼライブ盤の如く録られたそうで、
石井さんもギターを弾きながら58のマイクで普通に歌ったものが収められたそうで。
え、それであんな良い音なの?と吃驚した次第ですけどね。
それで言えばこの日、石井さんのガットギターが良い音なので
「どこのですか?」と聞くと「いや、ヤマハの5万円のギターなんですよ」とのことで。
しかもプリアンプ通さず卓に直差しですからね。
弘法筆を選ばずというか、名手が弾けば良い音が鳴るのだという事実を目の当たりにして衝撃を受けた私ですけどね。
その「DAY OFF」は屋敷豪太さんのプロデュースで、
ドラムの音がまた最高に良いんですが、
一発録音であれだけのクオリティの演奏が出来るバンドの力量に改めて感心した次第です。
「RE-LAX」という曲の語りが好きなんですという話をしたら
バロウズジム・キャロルの影響などが背景にあるそうで。
当時はあんまり理解されなくて、先駆として佐野元春さんくらいしかそういう表現をしてなかったという話をしてくれました。
また歌詞などはRCサクセションに通ずるものがありますよねと聞くと、
元々ピアニカ前田さんのバックバンドとして組まれ、
国立を拠点に活動して来た背景からもRCやミュートビートの影響は大きいという話をしてくれました。
清志郎さんに生前自分の想いを伝えられなかったのが残念だと語っておりました。
石井さんからこれだけThe Changの話を聞いたの初めてだなと思いつつ、
あの頃の楽曲をまた聞けませんかと問うと、
ここ最近たまに歌うようになって来たとのことで。
ならばぜひまたここで石井さんにその頃の曲を歌っていただきたいと
強く要望を伝えた次第です。
実現すると良いのですが。


貸切り図書館、次回は2月1日(日)に加藤千晶さんとtico moonさんをお迎えしてお送りします。
加藤千晶さんは鳥羽修さんと河瀬英樹さんとのトリオ編成で出演とのことで。
私は10数年前に当時まだカーネーションにいた鳥羽修さんに1曲プロデュースしていただいた経緯があり、
時を経ての再会に感慨を深くする次第です。
どのような夜になるのでしょうか。
果たして。