ちょっとだけピアノが弾ける

先日は冷たい12月の雨がそぼ降る中、
上野の国立科学博物館にクリンペライの来日公演を見に行って来ました。
クリンペライはフランスのアヴァントイポップユニットで、
私もfwjやる上でかなり影響受けたアーティストなんですけどね。
あの奇妙で可愛くて歪なサウンドが夜の博物館で聴けるというこの上ない環境で、
しかもイトケンさんも出るということで楽しみにしながら赴きました。


会場に入ると中ではヨシモトコレクションという剥製の展示をしており。
いきなり白熊だの鹿だのの剥製が出迎えてくれ、
そこに良原リエさんのトイ楽器による演奏が聞こえて来て、
やおら異空間ムードに引き込まれまして。
中では先日molnにも出演していただいたショピンのタカハシペチカ氏にも再会し、
楽しみっすね、なんて話しながら展示など見ながらクリンペライの登場を待ちました。
(ペチカ氏はソロアルバムの帯文をクリンペライに書いて貰ったそうです)
この日は会場内のあちこちで演奏やパフォーマンスが行われ、
移動しながら見られるというコンセプトだったらしいんですが、
何しろお客さんの数が多く。
クリンペライのステージ前にお客さんが花見の席取りよろしく陣取って待機しており、
結局みんな動かず音だけ聞いてクリンペライの登場待ちという状況だったんですけどね。
(まあそれだけお客さんがいて盛況だったということでしょう)


そんな中、満を持してクリンペライが登場し。
今回はクリストフとMadame Patateという女性の方とのデュオという形で。
この女性、ロボコンに出てくるロビンちゃんのような衣装を着ており、
足元のPCや機材をいじる度にお尻が見えそうになるので
「マダム、お尻!お尻!」と
「志村、後ろ!後ろ!」的なドリフ然とした声を掛けたい衝動に何度か駆られたのですが、
それも含めて(含めてかい)キュートなパフォーマンスに魅了されてしまいましたね。
クリストフ氏がギターのループを組み、
そこに2人がグロッケンや鍵盤ハーモニカが哀愁あるメロを奏で、
合間に様々なトイ楽器によるキラキラ、カチャカチャした音を散りばめるという、
まさに独自のクリンペライサウンドが生で展開されており、
すっかり感激しながら見てしまいました。
博物館の展示物がそのキュートで不穏なサウンドに合わせて動き出すかのようでもあり、
雰囲気もばっちりでしたね。
ピッチの合ってないトイピアノやベル、
動物の鳴き声の出るおもちゃやオタマトーン(明和電機のやつです)など、
面白い音が次々と飛び出て来る様はまさしくおもちゃ箱をひっくり返したようであり、視覚的にも楽しめました。
後半はイトケンさんとトクマルシューゴ氏がサポートに加わり。
イトケンさんはドラムセットにいつもの鍋や空き缶やおもちゃ系でリズムを刻みつつ、
鍵盤ハーモニカを3種使い分けての和音を奏でたと思ったら
ウクレレ弾いたりピアノ弾いたりとまさに八面六臂の活躍で、
本当にこの人すげーな〜と惚れ惚れしながら見てしまいましたね。
トクマル氏も鍵盤やおもちゃ、バンジョーにベースと様々な楽器で参加し。
2人とも個性あるソロアーティストなのにクリンペライで演奏すると
実にクリンペライの音になっているのが流石で、
その解釈というか寄り添い方に誠実さを感じてそれがとても良かったですね。
歌ものもあればインプロ的な演奏もあり、
とても楽しめるステージでした。
終演後はレコードを購入し(売り子してたのが前にますむらひろしさんのライブで会ったアーティストさんで思わぬ再会がありました)、
そこにクリストフ氏のサインなどもいただきました。
大学でフランス語選択してたのに全く喋れぬ己の語学力の無さを嘆きつつも、
少し会話らしきものも出来て良かったです。
(このレコードはナイスなセレクトだぜと言われました)


会場を出ると雨はすっかり上がっており。
12月に降り落ちた雨粒がトイ楽器のキラキラ音と変わって我々の耳に落ち、
そのまま上がったのかもしれないなどと想いを馳せつつ、家路に着きました。
年末にとても良いライブを体験出来ました。
fwjにもフィールドバック出来たら良いな、などと思いつつ。
ちなみにクリンペライとはドイツ語で「ちょっとだけピアノが弾ける」という意味らしいです。
実にお似合いな名前じゃないでしょうか。
実際みんなピアノは達者でしたが。
ちょっとだけ弾ける、くらいなタッチで気楽に音を鳴らせたらなと思った次第です。
来年は。
クリンペライな私で。