ブックタイムトラベル

先日、本の整理をしていた際にふと手に取った1冊をペラペラめくると1枚のレシートが出て来て。
見るとその本を買った時に貰ったレシートで、
日付けを見たらちょうど偶然にも10年前の同じ日だったのですよね。
2005年の3月1日という。
買った場所を見てみると新宿の某店で。
10年前のまさに今日、自分は新宿にいてこの本を買ったのかと思うと何だか不思議な気分になり、
ちょっとしたタイムトラベルをしたかのような気持ちになったのですが、
レシートというのはある種の記憶を蘇らせる装置みたいなものなのだなあとしみじみ思った次第です。
見ながら何となくこれを買ったという当時の風景も朧げながら思い出しましたし。
普段から本を買ったら栞代わりにレシートを挟んでおくことが多いのですが、
たまたま整理していた時に同じ日に買った物を見付けるという偶然が舞い降り、
他の本のレシートも次々と確認したくなってしまい、
結局全然本が片付かないという事態に陥ったんですけどね。


レシートに店名の他、従業員の名前なども書いてあるとどういう人なんだろうと興味をそそられ、
例えばこのササクラノゾミさんは今何やってるんだろう、まだ書店で働いているのかしら、
もう結婚して名字も変わったのかしら、
今はどこに住んでいて何を思っているのだろうなどと、
その時たまたまレジを担当してくれただけの見知らぬ人に想いを馳せてしまうのですが、
たった一度本を媒体にして触れ合っただけの関係の人の生活にまで想いを馳せられるだなんて
レシートから広がる情報量たるや凄いなと感心してしまいますね。
この日の何時何分に何という本を買ったという記録の前後から
その日の自分の前後の行動も思い出しますしね。
見てるとその頃の空気なんかも蘇って来るから不思議なものです。
ただの数字のやりとりの記録だというのに。
今だったらレシートに書いてある係の人の名前きっかけで好きになったり、
友達同士になったりすることもあるのでしょうね。
SNSを探せば本人が見つかったりしますからね。
憧れの書店員さんの日常を垣間見ることも可能と思うと凄い時代だなと思うわけです。
そう考えるとこの個人情報云々うるさい時代にレシートに係の名前が書いてあるというのは
少々危険な気もするんですけどね。


自分の本棚を見やり、たまたま手に取った本に挟んであるレシートをチェックし、
そのレシートに書いてある書店員さんの名前からどんな人物か想像するゲームなど出来るなあと思い、
早速手に取った文庫本に挟んであったレシートを見るとブックオフの物で、
レジ係の名前はというと「齋藤」というさいとう界でも最上級に難しい漢字の人物で。
この人は小さい頃は自分の名字を漢字で書けず、
簡単に「斉藤」と略していたのだろうか、
領収書を貰う際には「一番難しい方の齋藤です」と伝え、
相手が「斎藤」と書くと「あー、そっちじゃなくてもっと難しい方の齋藤!」と、
いちいち訂正するのも煩わしく、「もう平仮名のさいとうで良いっすわ!」などと
諦める場面が人生に於いて何回かあったのではないかなどと推測したのですがどうなのでしょうか。
さいとう三段活用のあるあるです。
齋藤さんが現在もブックオフに勤めているかはわかりませんが、
私は齋藤さんがレジを打ってくれた文庫本を未だ自室の本棚に置いています。
その節はありがとうございました、齋藤さん。


みなさんも本に挟んであるレシートでちょっとしたタイムトラベルと
レジ係の人の人生に想いを馳せてみては如何でしょうか。