雨音に包まれた鳥かご 貸切り図書館16冊目

先日はmolnにて定期的に催されている本と音楽にまつわるイベント「貸切り図書館16冊目」でした。
今回はビューティフルハミングバードさんと中山うりさんに出演していただき。演奏と共にお勧めの本を紹介していただきました。
昼間は気温は上がったんですが、夕方になると生憎の雨模様になり。そんな悪天候の中でも早くからお客さんに並んで待っていただき、会場はぎゅうぎゅうの満員になりまして。何しろ狭い店なのでお客さんも演者さんも窮屈だったと思うんですが、みなさんそれぞれ詰めたり移動したりと協力し合ってくれて、それによって会場が一体化したような印象を抱きました。
まず一番手は中山うりさんの演奏で。うりさんはアコーディオンとトランペットを可憐に奏でながら歌い、ギターとウッドベースがサポートする形だったんですが、このアンサンブルが素晴らしく、ドラムがいないのにバンドはぐいぐいグルーヴし、彼女の歌もそれに乗って力強く響いて来るのですよね。ミュゼットやタンゴなどアコーディオン音楽の要素がふんだんに盛り込まれながらも曲はポップで歌詞も耳に残るし、フォークソング調の静かな歌ではしみじみと心に伝わり、涙ぐんだりリズムに乗ったりと感情をフルに動かされながら最後まで楽しんでしまいました。素晴らしいパフォーマンスでした。
本の紹介のくだりでは
ほしよりこ著「僕とポーク」
保坂和志著「プレーンソング」
「草の上の朝食」
を挙げてくれて。彼女がお気に入りだという「僕とポーク」のヤンキーの出て来るシーンを紹介してくれました。保坂さんの方はベースの南さんの愛読書だそうで(私はずっとマネージャーさんだと思って南さんとメールのやり取りしてたのでリハでベース弾き出したのでびっくりしたんですけどね・笑)、「プレーンソング」の後半のト書きだけになるくだりを読みどころとして紹介してくれました。あそこはあの小説のハイライト的な箇所ですからね。特にストーリーのない、文体で読ませる小説なので紹介が大変そうでしたが、猫と競馬が出て来るとか、部屋に後輩が住み出すとか断片の説明をしてくれて、興味を持ったお客さんはいたんじゃないでしょうか。
うりさんは猫好きなんだそうですが、普段素っ気ない感じだけど話し掛けると笑顔で話してくれるツンデレな雰囲気も相まって彼女自身も猫みたいな人だなあという印象を受けましたね。
後輩の女子からモテそうな男前な先輩女子という印象を抱いたので打ち上げでその話をしたら、過去に後輩女子から「上履きを下さい」と言われたことがあるそうで(笑)、うり様のおみ足を入れていた靴の価値たるや相当なものだなと感心した次第です。
そんなうり様に続いてはビューティフルハミングバードさんの登場で。
ボーカルの光子さんは目の前にグロッケンと鍵盤ハーモニカを置き、時にはシェイカーを振りながら美しい歌声を聞かせてくれて。そのため息の出るような歌声に思わず鳥肌が立った瞬間がいくつかありました。本当に素晴らしかったですね。声を浴びてるだけでついつい涙ぐんでしまうのです。日々疲れている私の身体の隅々にまで染み渡りました。ギターのタバティさんは「緊張する〜」としきりに言っておりましたが、丁寧で優しいアルペジオで彼女の歌に寄り添い、とても良い演奏だなあと感心してしまいました。
本の紹介のくだりでは今回は鳥しばりというテーマらしく、全部鳥にまつわる本で。
「世界の美しい鳥」
「きれいですごい鳥」
「バードウォッチング入門図鑑 はじめに覚える33種プラス50」
を挙げてくれました。
それぞれ鳥を紹介する写真集や図鑑だそうで、キャプションがユニークな「きれいですごい鳥」の朗読では会場に笑いが起き、フリップネタを読んでるみたいで面白かったですね。「メスはさえずらない」とか「ツバメは常に飛び続けて一日300回餌を運ぶ」など鳥情報もいくつか紹介してくれて、まるで光子先生の鳥教室のような様相を呈しておりましたが、聞いてて「へえ〜」と勉強になりましたね。鳥の命題は一日でも長く生き永らえてその命を繋いでいくこと、というのを聞くと日々聞こえる鳴き声も愛おしく感じてしまうなあと思いました。鳥の図鑑、私も入手してみようと思った次第です。
歌声に癒され泣き、鳥の話に感心し笑い、こちらも感情をフルに動かされて楽しんでしまいました。
あと個人的にはタバティさんが最前列のお客さんに「私も靴下同じの持ってます!」と思わず話し掛けるくだりが妙に面白かったですね。
終演後はCDもそれぞれ鳥のように飛ぶように売れ。とあるお客さんからは「良いイベントをありがとうございました!」と私がお礼を言われ、何だか嬉しかったですね。雨音に包まれた空間で席を分け合いながら同じ感動を共有するというのは良いものだなと思った次第です。
終演後は関係者で打ち上げをし。色々な話題で盛り上がりました。個人的にはうり様の上履きエピソードが一番心に残りましたかね。あとうりさんとタバティさんがX-Japanの話題で盛り上がってたのが不思議な感じでしたけどね。
そんなこんなで貸切り図書館16冊目は終了しました。次回は4月12日にテニスコーツsakanaのみなさんを迎えてお送りします。チケットはあっという間に売切れてしまったのですが、来られる方はぜひお楽しみにということで。