曇天の火曜日を鳴らす 詩と六弦

駒沢大学bistro-confl.にて行われたイベント「詩と六弦」も無事終了しました。ご来場下さった方々、どうもありがとうございました。
今回はconflのシェフである関口氏の発案で、関口氏の美味しい料理をいただきながら、デザイナーであり詩人のウチダゴウ氏の朗読と私のギター演奏を共にお届けするという内容のイベントで。
聞けば関口氏はもうすぐconflを辞めて自分の店を始めるとのことで、お店在籍時最後に行うイベントがこれになるのであり、それが私の演奏なんかで良いのかしらと恐縮しつつ当日お店に行くとシェフはすでに美味しそうなサムシングを仕込んでおり。
その匂いに惹かれつつも持ち込んだ機材をセットし、これからシェフの美味しい料理を食べられるというのに何故かパンをもぐもぐ食べていた(笑)ウチダゴウ氏と軽く音合わせをしまして。
何を読むのか事前にテキストは受け取っていたものの、実際に彼の朗読を聞くのはこの日が初めてなので、おお、こんな感じかー、という手応えだったのですが、がっつり答え合わせしちゃうと本番での新鮮味がなくなるかと思い、リハでは音量のバランスなどを調整するだけに留めたんですけどね。
彼は松本からこっちに来てプリンタ環境がないらしく原稿を全部手書きして来たとのことで、見ると紙にはデザインされたかの如く文字が綺麗に整列しまとまっており。流石デザイナーさんだなあと己の汚い手書き文字と比較しつつ感心してしまったんですけどね。(私の場合、文字通り殴り書きといった様相なのです。フルボッコ書きと言っても良いくらいに。)
リハ後はあれこれ雑談などしながら「ご飯まだかなー」と夕食前の子供の如くシェフの料理を楽しみに待ち、程なくして我々の前に出された本日のメニュー(特製のカレー)を早速がっつりいただきまして。これがまた大変によろしく、「美味っ!」を3連続くらい口にしてしまった程です。
食べながら「こんな美味しいのにもうシェフの仕事しないんだもんなー」とゴウ氏がぽろっと言うので、どういうことかと関口氏に問うと「実は今度熊本でギャラリーと本の店を始めるんです」とのことで。てっきり独立して自分のビストロを開業するのかと思っていた私は驚き、ギャラリーと本てあなた、この料理の腕を仕事に活かさないの?と思ったのですが、まあ人生色々なのであり。彼の思い切った選択に眩しさを感じた私です。聞けば熊本というのも千葉出身の彼には縁もゆかりも無い土地で、あくまで閃きで決めた場所だそうなので凄いなと感心した次第です。
そんなこんな人生の岐路話に花を咲かせつつ、本番を迎えまして。
会場にはたくさんのお客さんに入っていただき。裏通りに佇む店内は今回のようなパフォーマンスを共有するのに程良い空間として機能しておりました。
私は今回も足元にルーパーを置き、ひとり多重演奏で演奏をお届けしまして。一応詩に合わせて事前に軽くフレーズを考えといたんですが、いざ本番になると全然違う演奏をしてしまうものなんかもあり、緊張感を伴いながらでしたが楽しかったですね。その場の思いつきをサウンドとして組み立てていくというのは。
ウチダゴウ氏の朗読は低く落ち着いた語り口で、曇天の火曜日の夜に相応しく。霧がかったスコットランドの森やそこに佇む家々の景色が匂い立つ言葉に合わせ、私の演奏も深い森の中のような、遠い海の底のようなスローなものになり。みなさん美味しい料理を食べた後なので子守唄の如く届き眠くなってないかなあと心配もしたのですが(笑)、まあ眠くなる心地良さというのもリスニングとしては有りですからね。見に来てくれていた巣巣の岩崎さんにも「気持ち良かった〜」と感想を言っていただき良かったです。
詩に音を乗せるというのは裸の言葉に洋服を着せていくような作業なのであり、ゴウ氏からしたら「あら、そこにその色合わせちゃいます?」みたいな意外なコーディネートがあったかもしれませんが、まあそこも含めてですからね、セッションの楽しさというのは。あまりコテコテに重ね着させるよりも軽く1枚羽織らせる程度で良かったり、実は裸のままがベストだったりするので難しいところですけどね。音と言葉が全然噛み合わないのも実は有りだったり。ただひとつ思ったのは今回は尺を詩に合わせ過ぎたかもなあということで、朗読が終わった後も独立して演奏を続けて展開させても良かったなあと後になって思いましたね。朗読が終わったら「はい、撤収〜」という感じで曲も終わらせちゃってましたからね(笑)。
アンコールではルーパーを使わずギターの独奏で朗読に合わせたんですが、一定のリズムに乗らない分抑揚がつき面白かったので、そういう展開も随所に入れた方が良いかも、などと終演早々反省会みたいなことを行った真面目な我々でしたけどね。
終演後は今回イベントフライヤーのデザインをしてくれた瀬戸山氏ともご挨拶させていただき。今回関口氏は「ポスターを作りたい!」と強く主張し、かなりでかいサイズのポスターを作成したのですが、彼もそれだけ気合いが入っていたということでしょう。デザイン自体が秀逸だったので、ポスターも見事な出来でしたね。ポスターを背に全員で記念写真を撮り、今イベントは無事終了しました。
関口氏が熊本へ旅立つということなので餞別にと思い招き猫を作って贈ったのですが、「いつ頃引っ越すんですか?来月とか?」と聞くと「いや、お店を始めるのは来年からです。年内はまだ東京にいますよ」とのことで。てっきりすぐにでも熊本に移住してお店を始めるのかと思っていた私は驚き、来年てあなた、4月に仕事辞めちゃって大丈夫なの?と思ったのですが、まあ人生色々なのであり。彼の思い切った選択に眩しさを感じた私です。まあ今回のように他ジャンルの人たちを束ねてイベントを催す確かな行動力があるのだから、きっと熊本の地に素敵な空間を作ってくれることでしょう。熊本に遊びに行ける場所が出来るのが今から楽しみです。
そんなわけで「詩と六弦」、2回目は熊本か〜と早くも旅気分でいたのですが、次回も東京で行われるようです(笑)。また異なる試みをしてみようと思っているのでぜひご来場いただけたらと思う次第です。
fwjのライブですが、次回は下北沢にて高橋徹也氏との共演です。こちらもぜひよろしくお願いしますということで。
6/11(木) 下北沢 風知空知
『sketch of summer』
出演:高橋徹也 × fishing with john
開場18:30 開演19:30
前売¥3,000(+drink) 当日¥3,300(+drink)