逗子フェスドラゲナイ

カレンダー通りの休みを得られない私ですが、その隙間を塗って先日、逗子の海岸で催されているZushi Beach Film Festivalなる映画祭に赴き、海辺での映画鑑賞を楽しんで参りました。こちらはGWの10日間、国内外の優れた映画を海岸という絶好のロケーションで体感するという屋外型映画祭なんだそうで、折角近所なんだし参加してみない手はなかろうと臨んでみたのです。
ちょうど逗子の海に着く頃には日没の時間になっており、目前の空は夕焼けの赤がほんのりと残りつつも夜の群青色が絵の具のように一面を染めてゆくところで、その色彩が映る海を眺めながら柔らかい砂上をさくさくと歩き、寄せては返す波の音をBGMにビールなんぞ飲んでみたらそれはもう最高というやつなのであり。思えばこちらに引っ越して来て初めての逗子訪問だったのですが、こんな良いものなら毎日でも来たいものだと思った次第です。
そんなロマンチック上等な感じの砂浜を歩いて行くとやがて映画祭の会場が見えて来て。そのお洒落な看板をくぐり抜け入場すると中にはたくさんの露店が軒を連ね、奥にはメリーゴーランドやらスケボーを楽しめる施設やらのアトラクションなんかも用意されていて、完全にフェス仕様といった様相だったので驚きましたね。その先にメインである巨大なスクリーンが設置されていて、観客は砂浜に直に座って映画を鑑賞するというスタイルで。私はへえと感心しながら同行した嫁と共にスクリーンの前に場所を確保したのですが、暖かくなって来たとはいえ夜の海辺はまだまだ肌寒く、マフラーをぐるぐる巻きにした格好で開演を待っていたら周りの若者は半袖短パンなどという夏先取りなファッションばかりなのであり。私だけが明らかに季節置いてけぼり状態で、このフェスに乗り切れてない感が如何にも自分であるなあと若干肩身の狭い思いをしつつ開演を待ったんですけどね。
ちなみにこの日の演目は周防正行監督の「シコふんじゃった」で、私は過去に何回か見ているのですが嫁は初見らしく楽しみにしているのであり。スクリーン前はすでにお客さんでいっぱいで、主にカップルが多かったですかね。私のすぐ隣にもビール瓶を目の前に何本も置いてすでに出来上がっている若いカップルがいたのですが、この2人がやたら喋り声が大きく。スクリーンにPR映像が流れている間も大声でどうでもいい話をわーわーと話しており、うるさいなあと思いながら様子を伺うと男の方はSEKAI NO OWARIのメンバーのような個性的なファッションをしており、ドラゲナイドラゲナイと自分語りを大声でし、女子の方も「わかるー」と心酔している様子なのですよね。まあ若人がフェスを楽しんでいるのだから多少うるさくても目をつぶれば良いじゃない、なんて大人の余裕をかましているうちに司会者の方がステージに現れ、この日のゲストの高木完氏と竹中直人氏が呼び込まれまして。2人はコントのようにイチャイチャしながらトークをし始め、竹中ファンである私は「おお本物だ!」とテンションが上がり、彼がハナレグミフィッシュマンズの名曲をアカペラで歌うのを聞きながらしみじみと感動していたのですが、そこでも隣のカップルはドラゲナイドラゲナイとくっちゃべっているのであり。さらには彼氏の方の電話が鳴ったようで、「あーもしもし。どうもお疲れさまですー。あ、今ですか?大丈夫ですよー」などと電話に出るのであり。その時点で私は「大丈夫じゃないし!もうイベント始まってるし!せめて席外して!」と立腹に至ったのですが、彼はテンションマックスで電話ドラゲナイに興じているのであり。さらには「あ、ちょっと代わりますー」と彼女の方に電話を代わると、「あ、シフトなんですけどもー3日に休みたいんですけどー」と彼女の方も大声で話し出すのであり。どうやらバイト先が一緒なのでしょうか、この2人は。屋外フェスとは言え流石にマナーレスに過ぎやしないかいと私は思ったのですが、まあ映画が始まれば静かになるだろうと思い、ぐっと我慢をし。そうこうしているうちに竹中氏が「私が34歳の時の映画です!」と紹介していよいよ上映が始まりまして。
大学の相撲部の青春を描いたこの作品ですが、過去に何回も見ているとはいえ私自身見るのはかなり久々で懐かしく、でも全然古さを感じさせない普遍的な面白さに感心しているうちにぐいぐいと引き込まれ。竹中氏のコメディアンとしての動き最高だなあとかモッくんの身体美しいなあとか、この台詞回しとカット割りじわじわ来るなあとか試合の流れの演出巧いなあとか、全体キャスティングがハマってるなあとか(正子役の太った彼女はいまは何やってるんだろうと想いを馳せました)、色々思ったのですがまあ結論としては本当にこれはもう名作であるなということで、心から素直に楽しんでしまいました。笑えるシーンでは会場中で笑いが起き、試合に勝つと「おお〜!」とどよめきが起き。映画を大勢で共有するというのは良いものだなとしみじみした次第です。
しかし問題は隣のドラゲナイ野郎なのです。映画の途中で「もっと飲もうぜー」とか言いながら2人して席を外したので「良かったこれで静かに見られるわー」と安心したのですが、後半になったらまた私の隣に戻って来て。「えー試合勝つのこれ」とか「お、すげーじゃん」とか映画の感想を述べるのはまあ百歩譲って良いとして(それでも良くはないですけどね)、途中から全然関係ない話をでかい声でし出すのであり。私がスクリーンの中の相撲部の未来に熱くなっているところに「いやさー俺もこの先やっぱり攻めなきゃ駄目だなとか思ってさー」などと自分の未来について語り出すのであり。「いやお前の未来なんかどうでも良いし!うるせえし!映画見ている最中に大きい声で喋るようなマナー知らずのやつに明るい未来なんか来ねえし!いっそOMAE NO OWARIを見せてやろうか!」と私の中のスナイパーが銃の照準をドラゲナイ男にぴったりと合わせ、もう少しで火を吹くところだったのですが(それこそスターライトパレードが逗子の上空に花咲くところでした)、斯様なお喋りカップルは一体何を考えているのでしょうか。屋外のフェスということで映画を見ているという自覚がないのでしょうか。映画はあくまで酒のつまみで海辺のロケーションがメインということなのでしょうか。それならばスクリーンの前から席を外して海辺で飲んでて欲しいものです。映画を見ている時に大きい声で喋る奴は全員豆腐にぶつかってZINSEI NO OWARIを迎えれば良いのにと思いながら会場を後にした私です。まあ帰り際に近距離で生の竹中直人氏を見られたのでそれで相殺としたんですけどね。
帰ってからyoutubeでコメディアン時代の竹中氏の「笑いながら怒る人」の映像を見て「こんな感じでドラゲナイカップルに注意すれば良かったな」などと思った私です。まあ若人にはこのネタ通じないかもしれませんけどね。
それはともかくフェスは楽しかったので興味ある方にはぜひお勧めです。あとマナーにはご注意をということで。