夜に生きるもの 木曜日のsketch of summer

下北沢風知空知での高橋徹也さんとの2マンライブ「sketch of summer」も無事終了しました。ご来場いただいた方々、本当にどうもありがとうございました。風知空知さんからのお誘いで急きょ決まったこのイベントですが、タカテツさんとの貴重なセッションも実現し、なかなかレアな一夜になったんじゃないでしょうか。
今回私はタカテツさんと一緒ということで気合いを入れて、ギターの他にシンセやサンプラー、ピアニカにリコーダーにグロッケンなど機材をたくさん持ち込み、ラーメンでいうところの全部乗せといった状態で臨んだんですが、タカテツさんは逆にギター1本と歌だけという潔いシンプルな弾き語りスタイルで、両者同じ独演ながら対照的なステージと相成りました。
本番前のリハでは2人のセッション曲の詳細を確認したんですが、タカテツさんは「グロッケンを使おうと思って」と、一泊二日の旅行に行けそうなでかいバッグに入ったグロッケンを持参して来たんですが、何度か試すもしっくり来ないので「やっぱり2人でギター弾きません?」ということになり、結局一泊二日サイズのグロッケンはそのまま持ち帰りになってしまい申し訳なかったんですが、膝の上にグロッケンを置いて演奏するタカテツさんの妙に哀愁を帯びた姿は曲に合っててとても心に残りました。ギターについては「ポロンですかね」「いやポポロンですよ」「ポポン」「いやポポロンです」などと私の手癖に寄り添って練習してもらったので彼からしたらやりにくかったかもしれないですが、ギター2本のアンサンブルが再現出来て良かったです。
そんなポポロンなリハを経ていよいよ本番を迎えたんですが、今回のライブでは色々な新しい曲を演奏したので、久々にセットリストを書いてみようかと思います。
1、陸サーファー、体育座りで
2、14.8℃カマクラ
3、サイクル曜日
4、草原ヘッドフォン
5、南米のストレンジャー
6、夜間飛行ノート
7、ガール初舞踏

1曲目「陸サーファー、体育座りで」はタイトルだけ決めて内容はほぼ即興だったんですが、出来るだけユルく演奏してみました。逗子の海岸で映画を見た時の光景を思い出しつつ。家でたまにこういう演奏してるんですが、一番リラックス出来て楽しいんですよね。「14.8℃カマクラ」は前回神森くんと一緒にやったライブの時に即興で演奏した曲が良かったのでタイトルを付けて曲にしてみました。今後も演奏する曲になりそうです。
「サイクル曜日」は毎週日曜朝9時半からTOKYO FMでオンエアされているベッキーさんの「ベッキーGO LUCKY」のジングルで毎週流されている曲なので宣伝も兼ねて演奏しました。今回初めて入っている全楽器をひとりで再現してみたんですが、なかなかスリリングで面白かったですね。足元のルーパーで積み重ねて行くスタイルなんですが、途中のギターソロをハモるくだりとか失敗せずに出来てほっとした次第です。「草原ヘッドフォン」は朗読のテキストに「躊躇という字は読めるけど書けない」というくだりがあるんですが、後でタカテツさんに「僕も読めるけど書けないですね〜」という感想をいただきました(笑)。
「南米のストレンジャー」は折角タカテツさんと一緒だからネタを仕込もうと思い、タカテツさんの「Golden Week」という曲と「ストレンジャー」という曲の一部をサンプリングして全く違う曲に仕立てて演奏してみました。国籍不明な旋律が面白いと思ったんですがその場では本人から感想がなかったので「あれ、スベッたかな」と思ってたら、帰宅後メールで「あのフレーズがメジャーキーに乗って細野さんみたいな無国籍サウンドになってて驚きました!」という感想をいただいてよっしゃと思った次第です。「夜間飛行ノート」はラップの曲なんですが、ステージでラップするのかれこれ8年振りでしたかね。8年前にかなり練習したので言葉が身体に入っていて噛むことなく出来ましたが、もっと大仰に弾けても良かったかなあと反省した次第です。(猫背でラップする姿が印象的とタカテツさんに言われました。)今後もラップはどんどん取り入れていきたいですね。
「ガール初舞踏」はダンサブルな新曲で、哀愁のあるピアニカフレーズが気に入っているので今後も演奏していこうと思った次第です。事前に「みなさんなりの舞踏をイメージして下さい」と喋ったら「武闘」だと思ったお客さんもいたようなんですが(笑)、そんな暴力的な曲ではないのです。カスタネットを重ねるという最後は決まってたんですが、さらにもうちょっと盛り上げたいなと思いました。
そんなわけで少々緊張もしたんですが、何とか自分のステージを終えることが出来ました。しかしひとりでやってると音はたくさん鳴ってるのに絵的にどうも地味なので、動くなり映像付けるなり何かしら工夫しないとなあと思ったりした次第です。
そして次に登場したタカテツさんですが、相変わらず独特で不穏で孤高のステージで素晴らしかったですね。エレキギターの空間のあるサウンドとガットギターのコード感の美しさと、同じ弾き語りでも曲によって表情を使い分けておりました。リハの時は店内に明るい光が差し込んでいたんですが、彼が歌い出すとそこに夜が浸食して来るような不思議な味わいがあって、この人は夜を持ち歩いているのかもしれないなどと思ったのですが、本番ではさらに深い闇を空間に降ろしておりました。風呂に浸かってるかのような感じでタカテツワールドにどっぷり浸ってしまいましたね。この日のために用意したという「sketch of summer」という曲もお土産に持って帰りたいくらいの良い曲でした。
そんなタカテツワールドを堪能した後、2人でセッションと相成りまして。私の「団地の中を夜中散歩する2人」という曲をタカテツさんが気に入ってくれて、今回はそれに合わせた朗読用のテキストを彼が書き下ろしてくれまして。自分の曲にタカテツさんが言葉を乗せてくれるというのは凄く嬉しかったですね。またその内容も物語の始まりのような終わりのような、少し不穏な夜の写実で。彼がそれを朗読するのを聞きながら夜の団地を舞台にした色々な想像が膨らんでいきました。ギターのポポロンもうまくいきましたし(笑)、とても心に残る演奏になりました。
さらにはタカテツさんの「夜のとばりで会いましょう」という曲も一緒に演奏しまして。この曲、「なぐさめだったらもういらないぜ」「誰かの言う明日なんて来ないぜ」というフレーズが最高な名曲なんですが、横で彼の熱唱を聴きながら夜のとばりで彼と待ち合わせているかのような感じで寄り添い、ギターを弾かせていただきました。後でタカテツさんに「この曲をこんなに情熱的に歌えたことはない、素晴らしいギターでした!」と褒めていただき再びよっしゃと思った次第です。
そんなわけで初夏のスケッチのようなイベントも無事終わりました。平日の夜ということもあり独特な雰囲気でしたが、この独特さは曜日というよりもタカテツさんの醸し出す雰囲気によるものも大きいような気がしましたね。またこのような共演もやってみたいものだと思いました。あと会場に見に来ていた山田氏が文庫本を片手にビールを飲み、丼を美味しそうに食べて自分の部屋の如く寛ぎながら見てたのが何か面白かったです(笑)。
その山田氏のバンドとタカテツさんのバンドの共演ライブというのが7月にあるんですが、私はそちらにも(山田バンドのメンバーとして)出演するので今から楽しみです。
どのようなイベントになるのでしょうか。果たして。