夜の科学vol.47 猫に鳴らす一夜

先日は山田稔明氏のニューアルバム「the loved one」発売記念ライブ「夜の科学vol.47」が恵比寿にて行われ、私も夜の科学オーケストラの一員として出演させていただきました。今回はいつものメンバーに加えゲストとして近藤研二さんも出演され、レコ発に相応しい賑やかな一夜となりました。
バンドは前日に怒濤の7時間リハを行い、スタジオに大人が8人集まって部長である山田氏を中心にそれこそ部活の如くみんなで音を鳴らしていたんですが、近藤さんが参加するくだりになると近藤さんが「ここは綾香ちゃんピアノで」「このフレーズはベースで」「最後の2小節もっと溜めて」「ここは小物をもっと派手に鳴らして」などテキパキと的確なディレクションでバンドを動かし、それがまるで他校の敏腕部長が出張で指導にやって来て部員が奮闘するといった様相で、見ててその見事な手腕に感心してしまいましたね。こうやって現場でディレクションしてるんだなあと。今回の新譜「the loved one」の中の「ポチの子守唄」という曲のアレンジを近藤さんが担当しているのですが、その曲の他に近藤さんのオリジナル曲やキンクスのカバーなど数曲一緒に演奏出来たのはとても刺激的な体験でした。キンクスの曲の冒頭のフルートのフレーズを上野さんと安宅さんがずっと練習している様はそれこそ放課後の部室での光景のようであり、見ながら明日は良いライブになりそうだなあと思ったものです。ちなみにこの日は去年亡くなった山田氏の愛猫ポチの一周忌の日で、新譜も彼女に捧げられたアルバムということで、スタジオ内に彼女もひっそりいてバンドを応援していたのかもしれません。
そんなポチに背中を押されながら、部活然とした雰囲気を携えながら、バンドは本番当日を迎えまして。この日は超満員でたくさんのお客さんにご来場いただき、ステージにいてもその熱い期待が伝わって来るようでしたね。新譜の1曲目である「my favorite things」からライブはスタートし、終始気持ち良く演奏出来ました。「太陽と満月」では音源での高野寛さんのギターソロを踏襲して安宅さんの熱いソロが鳴り。私も高野さんの綺麗なアルペジオをなぞりました。中盤は「平凡な毎日の暮らし」でのイトケンさんの迫力あるドラムに押されてバンドがぐっと乗って行くのがわかりましたね。
そしてこの日のハイライト、ゲストに近藤さんが加わりまして。キンクスのカバー「Phenomenal Cat」では前日の練習が活かされ上野さんと安宅さんのフレーズも決まり。猫の賑やかな感じがバンドで再現されました。NHKEテレ2355で流れている近藤さんの曲「眠れねこねこ」も前日の敏腕部長の指導が活かされ(笑)、バンドならではのアレンジで演奏されました。眠る猫への優しいまなざしが感じられてとても良い曲だなあとしみじみしてしまいました。近藤さんのファンであった私からしたら追っかけ部分を近藤さんと一緒に演奏出来て本当に光栄でしたね。ピアノの綾香ちゃんの演奏も優しくてとても良かったです。近藤さんと山田氏はご近所さんで猫をきっかけに親しくなったという経緯があり、近藤さん自身も去年猫を亡くされていることもあって、ポチの看病をしながら生まれた楽曲「ポチの子守唄」のアレンジは亡くなったものを悼む慈しみに満ちた上品で美しいものに仕上がっており、それが初めてライブで再現された形になりました。室内楽風の繊細なアレンジは音源でも聴きどころのひとつなのでぜひ聴いていただきたいですね。私は鈴やベルやチャイムなど鳴らしながらポチが会場のどこかで聴いているかのような気がちょっとしました。
その後「些細なことのように」「月あかりのナイトスイミング」では綾香ちゃんの荘厳なピアノが鳴り響き、会場の空気が洗われるようでした。そしてアップテンポな新曲「small good things」で本編は幕を閉じまして。
アンコールでは再び近藤さんが合流し、「hanalee」を演奏し。何度も演奏している楽曲ですが、近藤さんが加わってより多幸感が増して演奏しててとても楽しかったですね。その次に「日向の猫」を演奏する予定だったんですが、山田氏がなぜか全然違うリズムでコードを弾き出し。「あれ、これ間違ってんじゃない?」と隣で聞いていたら突然山田氏の腕が止まり、「あれ?俺は何の曲を演奏してるんだろう?」というひと言で会場は爆笑に包まれ(笑)。全然知らない曲が始まろうとする謎の瞬間が舞台に舞い降りたのですが、あれは何だったのでしょうか。まあ結果笑いが取れたので良かったですけどね。私的には会場に来ていたポチのいたずらということで解釈しましたが。(「hanalee」のリズムを引きずってしまったんですかね)そのおかげもあって湿っぽくならずに会場のお客さんのコーラスと共に盛大に演奏出来ました。
そんなアクシデントなんかもありつつ、2時間半に渡るライブは無事終了しました。ポチの一周忌のタイミングでアルバムが完成し発売され、レコ発が出来るというのは凄いことだなとしみじみ思いましたね。去年の12月にこうなることを見越して予定を入れたそうですが、その行動力を見習わなくてはいけないなと思いました。私は今回レコーディングに参加してないんですが(五十嵐だけ録音に呼ばれてないといういじりがライブ中ありましたが・笑)、その代わりに長めのライナーノーツを書きましたのでぜひご一読いただきたいものです。http://toshiakiyamada.blog.jp/archives/52122961.html
山田稔明渾身のニューアルバム「the loved one」をぜひ手に取っていただけたらと思います。
山田稔明with夜の科学オーケストラ、次回は7月3日に私も先ほどfwjで対バンしたばかりの高橋徹也さんと共演します。そちらもぜひよろしくお願いしますということで。タカテツさんとまた会えるのが楽しみです。
どうなることでしょうか。果たして。