スナフキンは語る 貸切り図書館21冊目

鎌倉molnで定期的に催されているイベント「貸切り図書館」ですが、21回目となる今回はおおはた雄一さんをゲストに迎えてお送りしました。
毎回会場を準備するのにバタバタなんですが、今回は店主が体調不良につき準備に参加出来ぬうえ開演時間も早く、急きょ助っ人のひろこさんにお手伝いをお願いしせっせと商品を片付け什器を移動し、バタバタバタバタバタくらいの慌ただしさで会場を作りまして。そんな生放送でのドリフの舞台の移動のような様子におおはたさんは「大変ですねえ」と気遣いつつ、マイクをあれこれ試したり声のEQを調整しつつ念入りにリハを行ってくれました。もうリハからバッチリでしたね。歌もギターも。
今回はありがたいことにぎゅうぎゅうの満席となりまして、後ろから見ていてお客さんの期待がひしひしと伝わって来るようでしたね。おおはたさんは巧みな話術でそんなお客さんのハートをぐっと掴み、華麗なギタープレイと艶やかな歌声で会場を魅了してくれました。それにしても彼のギターの巧さたるやです。アルペジオの繊細な指使いや打楽器のようなビートを刻むストローク、細やかな抑揚のある演奏には思わず見惚れてしまいましたね。名手だなあと。声も張りがあって色気があり、思わず引き込まれてしまいました。オリジナル曲も勿論良かったですが、ムッシュの「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」や友部正人さんの「水門」、高田渡さんの「コーヒーブルース」のカバーなども聴き応えありました。(今回は全部本人と同じキーで歌うというこだわりがあったようです。)
本の紹介のくだりではまず「ボブ・ディラン自伝」を挙げてくれて。これは「何度読んでも読み終わった気がしない」とのことでしたが、私も共感しましたね。あれは年代も飛び飛びになってるし、続編が一向に出ない謎の1冊なんですが。果たして続きは出るんでしょうか。(おおはたさんはディランの高齢を心配しておりましたね。)だいぶ昔のことなのにかなり描写が細かく、「そんなこと本当に覚えてるんかい」というツッコミをディランに入れておりましたが(笑)、ツアー先などで読み過ぎてボロボロになっている辺りに彼のディラン愛を感じましたね。その流れでディランの日本語カバーも演奏してくれました。
その他の紹介本は以下のようでしたね。
かまやつひろし自伝「ムッシュ
新美南吉の手紙とその生涯」
柳家小三治 「落語家論」
沢木耕太郎「檀」
トーベ・ヤンソンムーミン谷の仲間たち」
それに加えて野村克也の野球本も愛読してるとのことです。(ノムさんのはどの本も内容全部一緒とのことです・笑)
童話から落語、ノンフィクションにスポーツという幅広さですが、何となくおおはたさんの世界を形成するものとしてしっくり来る気がしましたね。
新美南吉の手紙については一部を歌詞に引用したとのことで、その曲を歌ってくれました。小三治師匠の本はマクラも載っているとのことで面白くて何度も読んでしまうそうで。沢木耕太郎のノンフィクション本は本当にお好みらしく、後で「深夜特急」も大好きだという話をしてくれましたね。ディランのフォークソングも「語り」ですし、落語やノンフィクションなど様々な語り口に惹かれるのかなと思いましたけどね。傾向として。
ムーミンは文中に出てくるスナフキンの台詞にとても共感したとのことで、何と全文を朗読をしてくれました。新しい歌が出来るまでの苦悩を語ったその台詞は私も共感しましたし、物を作る人間はみなわかるわかるという感じではないでしょうか。おおはたさんの紹介がまたうまく、無性にムーミンを読んでみたくなりましたね。おおはたさん自身も何だかスナフキンに重なるような印象を受けました。同じくギターを担いだ旅人ですからね。
そんな旅人のおおはたさんのステージも休憩を挟みつつ2時間半、無事終わりまして。とにかく濃密な内容でしたね。途中咳き込んで歌の合間に水を飲んでそのまましれっと歌に戻ったり、照明や空調の具合をライブ中に指示したり、なにしろステージの運び方が上手なのですよね。流石たくさんのライブをこなしているベテランだなと感心した次第です。
終演後は気さくにサインなどに応じ、お客さんとの距離が近いのも魅力のひとつなのかなと思った次第です。来てた方々、みんな笑顔だったのが印象的でした。良いライブだったということでしょう。
その後会場をまたバタバタバタと片付け、関係者一同近くのワインバーに移動し美味しいワインなどいただきながら打ち上げを行いました。友部さんの話やディランの話や木の話やスケボーや将棋など話題は多岐に渡り、とても楽しかったですね。おおはたさんの魅力にスタッフ一同感激した次第です。そんなこんなで「また次回に!」と次の訪問を約束しておおはたさんは帰って行きました。その後ろ姿は次の旅の地へ向かうスナフキンと重なって見えました。次回はいつ鎌倉に来てくれるんでしょうか。果たして。
「貸切り図書館」次回は7月26日、柴田聡子さんと小鳥美術館さんを迎えてお送りします。こちらもぜひにということで。