キュートな語り部 貸切り図書館23冊目

先日YeYeさんをゲストに迎えて行われた「貸切り図書館23冊目」も無事終了しました。たくさんのご来場をどうもありがとうございました。
YeYeさんにはかなり前から出演していただくお話があったのですが、なかなかタイミングが合わず、今回満を持しての出演となりまして。会場に現れたYeYeさんは麗しい金髪姿になっており、どこぞのモデルさんが来たのかと見まごうそのキュートネスに我々はハートをぐっと掴まれ。さらにリハが始まってその凛とした生の歌声を耳にしてまたハートを掴まれるという二段階ですっかり魅了されてしまいました。マネージャーさん(この方も美人さんでした)と共にかなり細かく綿密にリハをしていたのが印象的でしたね。
開場するとそんな彼女の魅力に惹かれたお客さんでぎゅうぎゅうの満員になり。お客さんは男女半々くらいでしょうかね。今回はソロでの出演ということでルーパーを駆使してのひとり多重演奏というスタイルで、ギターにキーボード、サンプラーにグロッケンなどを巧みに操り、美しく力強い歌声で数々の楽曲を聴かせてくれました。ループを組みながらの演奏はズレないようにかなり気を使うんですが、リズムからコーラスから様々な音をみるみる組み立てていく様は見事で素晴らしい演奏でしたね。ギターのコード感とかリズムやシンセの音色とか、音響的にも優れたポップソングといった印象を受けました。英語の発音もネイティブに聞こえ、海外でも受けそうだなと思いましたね。アジカンのゴッチのソロバンドでもメンバーとして参加されているそうですが、華もあるし歌も巧いし、絵になる人だなと思いました。
今回彼女は紹介してくれる本をたくさん持参してくれ、1冊1冊に解説や朗読などを丁寧に添えてくれて、本の紹介エンターテイメントとしても聞き応えありましたし、彼女の話しっぷりがまた魅力的で、ずっと聞いていたくなる心地良さがありましたね。お客さんもその可愛い語り口(大人っぽい歌声とのギャップがまた良いのです)に共感したり驚いたり笑ったり感心したりと、好リアクションでした。これを本屋さんでやったら彼女が紹介した本、その場ですごく売れたんじゃないかと思いましたね。どんな本を紹介してくれたかざっと挙げますと、
ジョン・バーニンガム著「おじいちゃん」
ステファニー・ローゼンハイム著「超じいちゃん」
佐藤 和歌子著「間取りの手帖」
天久 聖一著「味写入門」
楳図かずお著「漂流教室」「14歳」
中島らも著「明るい悩み相談室」「人体模型の夜」
朝日新聞社著「書き写し 天声人語 思い出アルバム」
諸星大二郎著「生首事件」
しりあがり寿著「オヤジ国憲法でいこう! 」
アリソン・ナスタシ、 関根 光宏著「アーティストが愛した猫」
世界陰謀評議会著「本当にあった世界の陰謀論入門」
八木 真澄著「ぼくの怪獣大百科
筒井康隆著「日本以外全部沈没
古市 憲寿著「だから日本はズレている」
赤瀬川原平著「老人力
荒木 経惟著「いい顔してる人」
穂村弘著「蚊がいる」
南伸坊著「笑う写真」
というラインナップでした。
絵本から漫画、写真集から小説、新書、芸人本などツボを押さえたセレクトだなあと感心してしまいましたね。YeYeさんの名前の由来は中国語で「おじいちゃん」の意味らしく、そこからのおじいちゃん絵本の朗読がまずあり。これはお子さんがいたら大層喜んだことでしょう。その後も1冊ごとに内容を解説していき、楳図かずお「14歳」では再び朗読のくだりがあり。漫画の朗読をする人が下北沢に出没しますが、その人も顔負けのユルくて味わい深い漫読でした。(『ギ〜』とか擬音を口に出して読むとユルさが増すのですよね。)楳図かずお諸星大二郎というチョイスが彼女の曲調となかなかイメージが結びつかず、自身の音楽性と愛読書の傾向がこうも違うものかと新鮮でしたね。あと彼女はお笑いが好きらしく、サバンナ八木の著書紹介のくだりではフットボールアワーの番組で八木が如何に面白かったかを熱弁しておりました。「味写入門」とか「間取りの手帖」なんかもネタ本ぽい趣向ですしね。あと彼女は相当陰謀論にハマっているようで、「この陰謀論凄くないですか!?」と内容の紹介にも熱が入っておりました。これまた音楽性とだいぶかけ離れたチョイスですが、終演後の打ち上げの席でも熱弁していたので相当好きなのでしょう(笑)。まだ若いのに筒井康隆とか赤瀬川原平とか中島らもとかチョイスが渋いなあと思いましたが、それらの方々の著書は時代を越えたスタンダードになっているということなのでしょうね。穂村弘は短歌の方は読んだことがないそうなので後で個人的にお勧めしておきました。お客さんに「これ読んだことある人〜」と聞いたり、読み方の間違いについてお客さんにツッコミ入れられたり、最後には抽選で南伸坊の本をお客さんにプレゼントしたりと会場全体を巻き込んでのトーク展開が巧みで、素晴らしかったですね。
そんなボリュームあるトークと歌と演奏に満ちたステージも無事終わりまして。終演後にはみなさんYeYeさんにサインをしてもらったり話しかけたり写真を撮ってもらったりしておりましたが、紹介した本のチェックをしている方がやはり多かったですね。これだけ豊富なラインナップだと何冊かは読んでみたいと思った本があったことでしょう。
撤収後にはお疲れさまでしたということで関係者で軽く打ち上げをし。そこでもお笑いと陰謀論の話になり、面白かったですね。本編では紹介がなかったですが、又吉とせきしろさんの自由律俳句の本も好きらしく、私もここぞとばかり又吉に会いに行った話をしたりしました。お笑い芸人を一番に尊敬しているという彼女の姿勢に激しく同意してしまった私です。あと今回彼女のアナログ盤を購入したのでジャケットにサインをしてもらおうと渡すとその場で似顔絵も描いてくれまして。これがまた味わい深いイラストで良かったですね。かなり似ていましたし。
そんなこんなで打ち上げも盛り上がり、結局遅い時間になってしまいました。次の日も昼からライブだったそうなので申し訳なかったんですが。いやしかし楽しかったですね。
そんな「貸切り図書館」、次回は10月4日にアナログフィッシュの下岡晃さんとQUATTROの潮田雄一さんをゲストに迎えてお送りします。そちらもぜひよろしくお願いしますということで。