夏の出口、カマクラ

先日鎌倉molnにて行われた高橋徹也さんのレコ発ライブも無事終了しました。たくさんのお客さんにご来場いただき、本当にどうもありがとうございました。今回は僭越ながら私もトークとギター演奏で参加させていただき、楽しい一夜を過ごさせていただきました。
今回一緒にセッションするにあたり、事前にタカテツさんから候補曲の譜面を貰うはずになっているのに待てど暮らせど来ないので、「譜面下さいましー」と2日前になって催促したら「うわぁ、もう送ったと思い込んでましたぁ〜!」とあせりが文面に滲み出た即レスがあり。その後慌てて携帯で譜面を撮ったとおぼしき写メが届いたのですが、これがまた微妙に光が反射して見え辛いのであり。タカテツ先生お願いしますよう〜と思いつつもセットの流れ上1曲減ることになったのでまあいっかとコードなど確認していたら今度は前日の夜に「やはりもう1曲追加しませんか?」と新しい曲が届くというご陽気な無茶振りがあり。タカテツ兄さんは私を試しているのかしら、スパルタ気質なのかしらという疑念が浮かんだのですが、そんなこんなしてたらもうライブ当日なのであり。
そんな当日、颯爽とmolnに現れたタカテツさんは早速念入りにセッティングし。今回はガットとアコギを持ち替えての2部構成だそうで、私は2部冒頭から登場とのことで一緒にリハしたんですが、途中まで演奏したら「うん、大丈夫じゃないすか」と早々に切り上げるのであり。自分ひとりの曲も音のバランスを見る程度で最後まで通さないのですよね。聞くと本番ですべて出し切りたいのであまりリハはやらないとのことで。なるほど本番力のあるプロの発言だなと思いつつも私としては出来ればリハして欲しい思いもあったんですが、まあタカテツさんが大丈夫言うてるから大丈夫かとぶっつけ本番に至りまして。
そんなこんなでいざ本番を迎えたのですが、ガットギターを爪弾きながら美声を放てばもう空間はタカテツワールドに染まるのですね。声もそうですが改めて華麗なコードワークにも見入ってしまいましたね。もはやオリジナルに聞こえるスティーブ・キューンのカバーは独自の日本語訳が秀逸でした。候補に挙がりつつも新譜に入れなかったという「別れの朝 歓びの詩」もとても良い曲で沁みましたね。お客さんのコーラスも美しかったです。
そしてアコギに持ち替えての2部からは私もステージにお邪魔しまして。最初はインタビュー形式で新譜についての話などをお聞きしました。そもそもジャケ写の舞台が鎌倉で、ロケハンに私も同行したというのもあって今回ライブにゲストで呼んでいただいたのですよね。(材木座海岸、逗子マリーナを巡ったロケハンの模様は以前このブログに書きました。)今回ジャケ写ロケのために夜中に東京を出て、3時半くらいから撮影を開始したそうなんですが、ジャケ中に映っている紫色の空がまだ明け始めの頃の空、表に映っている空が日が明けてすぐの瞬間の空だそうで。額縁を持っているのは画家が夏の朝焼けを永遠に閉じ込めようと時間に抗いながら描くみたいなモチーフがあるのかなと思ったんですが、タカテツさんは「何となく思いつき」と明言を避けておりましたね。たくさん撮って他にも良い写真がいっぱいあったそうなんですが、デザイナーさんがあえてそれらを入れなかったという話が興味深かったですね。良い写真ばっかりでもデザイン的に収まりが良くないらしく。良い曲があっても構成上アルバムにあえて入れないという話も同じようなことなのかなと思いましたね。(前述の「別れの朝〜」はあえてアルバムから外したとのこと)
お客さんに「ライブ前にロケ地を訪れた方はいますか?」と尋ねたところ、結構な数の方が訪れたらしく。実際にはロケハンした材木座海岸から少し移動して撮影したそうなんですが、「ツッパリが店員をしているコンビニがあった」というタカテツさんの発言に「ああ、あそこだ!」みたいに特定していたお客さんもいましたね。(今どきツッパリて、と思った私ですが)また、ジャケには使われてないですが逗子マリーナでも撮影した写真があり、私はそれも見せて貰ったんですが、かなり雰囲気あって良かったので、ぜひどこかで未発表の写真を公開して欲しいなと思ったりしましたね。
今回のアルバムは「The Orchestra」という曲が出来たことで生まれたアルバムだそうで(最初シングルのつもりだったと聞きました)、今年を代表する大事な曲とのことでしたね。この曲、歌詞とメロがほぼ同時に出来たそうですが、一箇所だけ歌詞を何度も書き直したそうです。「ちなみにそれはどこですか?」と聞くと「それは言えません!」とのことで。「言わないということをはっきり言います」とのことなので(笑)、ファンの方はどの箇所を書き直したのか想像してみては如何でしょうか。ベースの鹿島さんから「高橋は低い声が良い」と言われたのもあってこの曲は全体低い声で歌う構成になっているそうで、それを加味して聞くとまた味わいが違うのではないでしょうか。
トークの後には私もぶっつけ本番で新譜から「サマーピープル」と初期の名曲「My Favorite Girl」を一緒に演奏させていただきまして。タカテツさんが大丈夫と言ってただけあって何とか大丈夫でしたね。とても楽しく弾けました。最近はバンドでもギターはタカテツさんひとりなので、ギターが2本というのは新鮮だったという感想をお客さんからいただきました。
そして私がステージからはけた後もタカテツさんの熱い歌唱は続き。今回セットの流れ上セッション候補から外れた「夏の出口」という曲は一枚の絵画のような美しさと妖しさを宿しておりとても良かったですね。勿論新譜のメイン曲「The Orchestra」も素晴らしかったです。
そしてアンコールでは再び私もステージにお邪魔しまして。しっとりと「夜のとばりで会いましょう」を演奏しました。鎌倉の夜をこうして共有出来る喜びをじんわり噛み締めながらギターを弾きました。タカテツさんはこの日のライブを「運動会の朝のような気分で迎えた」そうで、微妙に客席からは共感されてなかったですが(笑)、それだけ楽しみなイベントだったということでしょう。そして最後、タカテツさんから前日の夜に届いた曲「真夜中のドライブイン」で賑やかにライブはクロージングしまして。(こちらも何とか大丈夫でしたね。)
今回レコ発ライブなのに新譜からは2曲しかやらないし、物販も2枚しか持って来ないという商売気のなさでしたが(笑)、鎌倉という特別な場所で記念のライブが出来たのは嬉かったですね。タカテツさんも終演後ピザをつまみにホットコーヒーを飲みながらそれをしみじみ語っておりました。
タカテツさんからライブ中聞いた話などを反芻しながら新譜「The Endlles Summer」を再び聴き込もうと思っている私です。12月4日にバンド編成のワンマンもあるそうなのでそちらもぜひにということで。