primecatsの夜

先日は夜の科学の48回目、山田稔明with夜の科学オーケストラのライブでした。毎年恒例のイベントとなっており、この日が来ると年末だなあと実感するようになりました。
今回はベースのエビちゃんが出られないとのことで、山田氏から「五十嵐くん、代わりにベース弾ける?」と言われ、山田氏からの依頼はだいたい受けるでお馴染みの私は「弾けますよんー」と軽く応えたのですが、後々になりいざ譜面と向き合うと「やべー、ベースむずいやん」と意外に高い山であることが判明し、若干登るのに苦労したんですけどね。普段ギターにカポを付けて弾くことが多く、例えばAのキーの曲を一音低いGのフォームで弾いたりしているのですが、それを改めてAのキーで認識するという作業の他に、ベースだけ半音下りたりとかキメのフレーズがあったりとか抜ける箇所があったりとか普段と違う動きが多く、楽器によってかくもアプローチが違うものかと勉強になってしまいました。鍵盤の佐々木真里さんやギターの近藤研二さんはアレンジもやるので、リハでかなり細かいニュアンスまで指示してくれて、プロの仕事を目の当たりにしたという感じでしたね。「ポチの子守唄」のガラス細工のような繊細なアレンジはベースを弾いてみて改めて見事だなあと実感させられましたし。今回譜面を熟読し山田稔明の楽曲よう出来てるなあーと感心してしまった次第です。たまに違う楽器でアプローチしてみるのも曲への理解や愛着が深まって良いものだなと思いましたね。
そんな感じでいつもと違う緊張感で臨んだ本番当日ですが、この日初めて8人全員で合わすというのもあり、リハの段階で「ここはこうしよう」など直しや決まりごとが発生し、かなり集中力を要しましたね。近藤さんがステージの細かい演出まで「ここはこうしたら良いんじゃない?」とアイデアを出してくれたりして、開場ギリギリまで綿密にリハを行いました。ベースの立ち位置でのモニターが普段と全然違うというのも当たり前なんですが新鮮でしたね。今回私の隣がコーラスの綾香ちゃんだったんですが、手書きの歌詞ノートにコーラス部分を蛍光ペンで塗ってあるのが見えたりして、何か学生ぽくて可愛いな〜とかほのぼのしたりもしつつ。そんな普段と違う目線からのリハを終えいよいよ本番を迎えまして。
この日は満員御礼でお客さんがぎっちり入っており。待ち望んでいた感がステージにもひしひしと伝わって来ましたね。山田氏の小説「猫と五つ目の季節」の一節の朗読から「my favorite things」に突入という冒頭で、真里さんの「イエーイ!」という雄叫びも聞こえいきなりアガりましたね。「太陽と満月」では近藤さんのロックなギターが鳴り響き。後ろで聞いてて「かっこいい!」と痺れながらベースをぶいぶい言わせてました。今回ドラムはイトケンさんに代わりsugarbeansさんで、彼も近藤さんがガンガン弾くのに合わせてロックなドラムになってましたね。(タカテツバンドでも活躍するsugarさんと一緒にリズム隊を組めて嬉かったです。)久々となる「pilgrim」という曲を以前演奏した時は確か2009年くらいで、ドラムがカスタネッツのケンイチロウさんでベースがチャビーさんというレアな編成だったんですが、覚えている方はいらっしゃいますかね。あれから6年経ったのかと妙な感慨も乗っかって心に響きましたね。ベースは間違えると目立つので、中盤静かな曲が続くくだりは譜面に穴が空くのではなかろうかというくらい譜面を凝視しながら演奏してたんですが、何とかミスもなく弾けて人知れずほっとしていた私です。あまりに凝視するので譜面も「いや、そんなに熱く見つめないで!」と赤面していたことでしょう。
「ポチの子守唄」の前の朗読ではちょうどポチの闘病のくだりが語られたんですが、私は自分の猫がそうなったら辛いなあと感情移入してしまい、聞きながらちょっと泣きそうになってたんですが、猫を飼うようになって猫の歌がますます身近に感じられるようになりましたね。「日向の猫」もちょうど日向で寝ているミルクの姿を見ながら練習していたので、勝手にミル坊の歌と思って演奏しておりました。
本編ラストの「ユートピア」ではまたまた近藤さんの熱いギターが鳴り響き。私もsugarさんも「いったれ〜」と盛り上がりましたね。後ろで近藤さんのロックスター然としたアクションを見ながら「あのハイポジの、栗コーダーカルテットの近藤さんが自分の弾くベースの上で熱いギターソロを展開している!」と別な角度からの感動が押し寄せておりました。安宅さんのスティールも上野さんのフルートもいつも以上に熱く感じられましたね。
今回それこそ立ち位置が山田氏の後ろでマイクもなかったのでMCの相槌が打てず、少々ロンリーだなとも思ったのですが、後ろ姿を見ながら支えるというのも良いもんだなと思った次第です。エビちゃんはいつもこの位置からバンドを支えていたのだなと。そのエビちゃんが最後の曲の辺りで会場に来ていると知り妙に動揺してしまったんですけどね(笑)。
今回は恒例の景品が当たるくじ引きもあり。景品を持って来るべしのメールを当日の午前に見たので、この日のために特別なものを用意出来なかったんですが、自作の鎌倉の大仏のだるまが2つあったのでそれを持参しました。喜んでいただけたら幸いです。各メンバーの景品もらしさが感じられるセレクトで。山田氏が用意した最後の景品は楽器の鈴で、それを持ってステージに上がってバンドと一緒に「sweet december」を演奏する権利というスペシャルなものだったんですが、みなさんシャイなのかステージに上がりたくないのか(笑)、2回ほど該当者が名乗り出ないという状況になり。3回目にして当たった方がステージに上がりバンドと一緒に演奏しクリスマス気分を味わいました。今回は夜の科学オーケストラとしてではなく、primecatsという彼の小説内に登場する架空のバンドとしてのライブだとのコンセプトが山田氏から語られたんですが、お客さんもprimecatsの一員として参加出来て特別な夜になったのではないでしょうか。私も小説の登場人物になれたようで嬉しかったですね。この日は本当に最後まで楽しいライブで、終演直後に真里さんが「最初からまたやりたい〜」としきりに言っていたのもわかるわかるという感じでした。この気分をメンバーやお客さんと共有出来て幸せな時間でした。慣れぬベースでしたが安宅さんや上野さんに「良かったよ」と言ってもらいほっとした次第です。
山田氏は次の日もゴメスで29曲歌う3時間のステージを展開したそうで、相変わらずタフだなと感心した次第です。私も頑張らねばならぬなと思いました。みなさん来年も山田稔明バンド一同よろしくお願いしますということで。