猫と芸人と五つ目の季節

気が付けば1月も終わりかけているという。本当に早いのです、時の流れは。
今月24日に予定されていたイベント「詩と六弦」ですが、出演者のひとりであるウチダゴウさんが寒波による積雪の影響で上京が困難とのことで残念ながら延期になってしまったのですが(ご予約いただいたお客様、大変申し訳ございませんでした)、リハの段階で新たな曲の断片などをいくつか得ることが出来たので、何とかまたの開催に繋げたく思った次第です。次回の予定が決まりましたらぜひまたよろしくお願いいたします。
そんなわけでスケジュールが空いたということもあり、先日は下北沢B&Bにて行われた山田稔明氏と、お笑いコンビどきどきキャンプ佐藤満春さんによるトークイベントを見に行って来ました。山田氏の小説「猫と五つ目の季節」発売記念のイベントということでしたが、小説の話以外にもGOMES THE HITMANの大ファンだったというサトミツさんによる熱いゴメス愛が語られたり(どきキャンの単独ライブのBGMでゴメスのアルバムを丸々使用したりしていたそうです)、サトミツさんの活動の一つであるトイレにまつわる話や、お互いの創作についての話などトークは多岐に渡り面白かったですね。そもそもがツイッター上でサトミツさんが同じくお笑いコンビのラブレターズの塚本さんとゴメスについて盛り上がっていたところを山田氏本人が気付き反応したことで交流が生まれたそうですが、私はリアルタイムでそのやりとりを見ており、「おお、サトミツさんと塚本さんと山田氏が繋がった!」と興奮していたのですが、お笑いに疎い山田氏は「え、コントの人なの?漫才?」くらいな感じだったので当時少々歯痒く思ったのを思い出した次第です。その後山田氏がサトミツさんのラジオ番組に呼ばれて宮川賢さんと会ったり、サトミツさん率いるトイレバンドの一員になったりという輪の広がり方を好ましく眺めていた私ですが、トイレバンドの連絡網になかなか参加しなかったり、そのバンドに5月までに曲を書くと言いつつ実際出来たのが秋頃だったなどのエピソードがサトミツさんから語られ、ツン山田発動してたんだなあと思った私です。(彼はたまにツンが出るのです。それこそ猫のように)。
この日のトークは打ち合わせなしだったそうですが、サトミツさんはさすがの芸人スキルでトーク全体を回し、山田氏は山田氏でどきどきキャンプのネタにちなんでジャック・バウアーの物真似を披露するなどデレ山田を発動し(前日youtube見ながら練習したそう)、盛り上げておりました。さすがにそのネタはもう旬を過ぎてるんじゃないのと私的には思ったんですが、無駄に巧いのが山田クオリティなのですね。
サトミツさんは山田氏の文章の巧さに加え内容にも感動し何度も読み直したそうで、自身も犬を飼っているので果たして自分もこれだけの愛情を注げるのか思わず自問したというような感想を述べておりました。また猫のこと以外に当時のバンド活動のレコード会社から契約を切られた経緯などの生々しい事情も書いてあるので、サトミツさんは「自分は普通に好きで聞いていただけだけど、こんなことがあったとは驚きました」とファン目線で語っておりましたね。山田氏は最初主人公の名前を全然違う名前にしてたそうですが、途中から山田という名前に変えたら筆が乗ったそうで、内容が自伝的なだけに名前によって思い入れが変わるものなんだなと思いましたね。バンド活動が停滞した時期に他の人への楽曲提供の仕事も始めた山田氏ですが、ある時期から自分名義の作品を作らねばと思い立ってそちらをセーブしソロ作制作に力を入れたそうで、片やサトミツさんの方はお笑いコンビとしての活動の他に構成作家として台本を書く仕事も増え、そちらで自分の才能が開花するのを感じたとのことで、裏方仕事と表舞台に立つ仕事の両方をこなす2人ですが、どちらに充実感を抱くかに於いて両者は対照的なんだなと思いましたね。2人の仕事観が伺えて興味深かったです。
この日は後半が山田氏の弾き語りライブという構成で、サトミツさんリクエストによるリストを歌うという内容でしたが、ゴメスのレア曲を入れつつも一応この日のイベントに合わせた新旧取り混ぜた選曲になっており、さすが作家さんの目線だなと思いましたね。サトミツさんは自分だけのリクエスト大会に興奮を隠しきれぬ様子でした。久々に聞くゴメス曲も良かったですが、2人による共作だというトイレの歌もとても良かったですね。
サトミツさんは「山田さんは曲も歌詞も文章もとにかく優しい」としきりに言っておりましたが、私的には優しいだけじゃないのが彼の魅力なんじゃないのとちょっと思ったのですが、会場に見に来ていたタカテツさんも開口一番「山田くんの音楽は優しいだけじゃないよね」と同じようなことを言っておりました。おそらくこの日のサトミツさんは殊更に彼から優しさを感じ取ったということでしょう。目の前で好きな人に好きな曲を歌って貰うなどあまりない機会ですしね。
終演後には私もサトミツさんにご挨拶させていただいたのですが、サトミツさんが作家をしているオードリーのオールナイトニッポンの長年のリスナーである私としてはそれこそ興奮を隠し切れず、「リトルトゥース」だの「謎の都市町田市」だの「ビトたけしさんのお店」だのリスナーのみぞ知る単語が会話に頻出したのですが、にこやかに対応していただき感激した次第です。本当は番組のハガキ職人から作家見習いになったものの挫折して大阪へ帰ったツチヤタカユキさんのことも聞きたかったのですが、ご挨拶程度だったので聞けずじまいでした。今度機会があればそういう話も聞きたく思った次第です。
ライブ後には山田氏と関係者一同で軽くご飯を食べて帰りました。タカテツさんが頼んだコーヒーが見るからに薄そうだったので「随分なアメリカンですね」と言うと、「これはコーヒーではなく黒く濁ったお湯ですね」と応えながら飲んでいたのが何か面白かったですね。「黒く濁ったお湯」とは彼の歌詞に出て来そうなフレーズだなと思いつつ。
そんな感じで1月も終わりかけています。早いのです。時の流れは。