山田稔明バンドツアー記〜広島編

大阪から広島世羅町に移動してこの日は「ケ・セラ・セラ・ワイン・アンド・ミュージック」というフェスに出演ということで、山田稔明バンド一行は朝8時半に会場である世羅町せら夢公園にインしまして。会場の公園はかなりの広さで駐車場スペースも広大で。車で園内にズンズン進んで行くとすでに広場に巨大なステージが組まれており、まさにフェス!といった様相になっていましたね。その手前に出演者の控え室としていくつかテントが張られていたのですが、よく見ると世羅町の地元高校のテントで。「90年度卒業生寄贈」などと書かれており、その地元協力な感じが良かったですね。ちょっと学園祭ぽい雰囲気もあり。
そんなテント内に荷物を運び、外でスタッフさんが用意してくれたコーヒーなど飲んでいたら雨がぽつぽつ落ちて来て。この日の天気は一日中曇ったり雨がパラついたり、かと思えば晴れ間が覗いたりと猫の目のようにくるくる変わり、読めなかったですね。我々は一番手だったので早々にリハを行ったのですが、結構風も強く、譜面が飛ばされないようクリップで止めたりと対策に追われました。今回のフェスでは気球に乗れるイベントがあったんですが、それも風のために中止になったらしく、屋外イベントは天気に左右されるなあと改めて実感した次第です。
そんな風に吹かれたリハを終えて前室で待っていると現在広島在住のカスタネッツのケンイチロウ氏が遊びに来てくれたので「ご無沙汰ですね〜」と挨拶などしつつ、公式カメラマンの方にオフの様子を撮影などされつつ待っていたらいよいよ本番の時間と相成りまして。
いざステージに上がってみるとすっかり雨は止んで晴れ間が出ていて、絶好のフェス日和なのであり。リハの後「俺、晴れ男だから大丈夫っしょ!」と山田氏が得意げに言った直後にパラパラと雨が降り出した時はその神通力もここ世羅町では叶わぬのではと一瞬疑念がよぎったのですが、本番ではその晴れ男っぷりを遺憾なく発揮してくれました。出番が朝の11時半という何とも健康的なタイムスケジュールだったんですが、お客さんはすでに結構入場されていて。みな草の上にシートを敷いて座ったり寝そべったりしながら、何とも良い雰囲気でしたね。冒頭、私のベースの音量が突然大きくなるというトラブルもありつつ(別に私が目立ちたがり屋なわけではないのです、単にトラブルなのです)、最後まで気持ち良く演奏ができました。今回急きょ「どこへ向かうかを知らないならどの道を行っても同じこと」がリストに加えられたのですが、というのも旅立ちの前日にボブ・ディランノーベル文学賞受賞のニュースが舞い込んだからで、ディランオマージュ曲である「どこへ向かうか〜」をやらない手はないということになったのですが、やる理由としてこの曲の歌詞内に「ケ・セラ・セラ」という単語が出て来るというのもあったのですね。何で今回のイベント名が歌詞に入ってる曲を前日まで忘れてたんやという向きもありますが、「その答えは、友達よ、風に吹かれている」ということなのでしょう。まあそんなこんなでこの曲を相応しいタイミングで演奏することが出来ました。最後の曲の「calendar song」を演奏しながら「ああ、まだこれから1時間半くらいは出来るのになあ、やりたいなあ」と、昨日2時間のステージを行った身としては短くも感じましたね。いやー楽しかったです。
本番後テントに戻ると地元のお母さんたちが出演者用にと美味しい料理をたくさん用意してくれていて。我々は出番を終えたのですでに打ち上げといった感じでその料理の数々を堪能させていただきました。世羅牛も美味しかったし、松茸ご飯も美味しかったですね。
その頃には他の出演者の方々も会場に到着しまして。カーネーションの直枝さんや嶺川貴子&Dustin Wongさんなど以前molnでの貸切り図書館に出ていただいた方々とも再会出来ました。こういう場所で会えるというのも嬉しいものですね。
ご飯を食べた後は普通にお客さんとしてフェスを楽しんだのですが、公園内をうろうろ歩いたり、出店を覗いたり、走り回る子供たちを眺めたり、音楽に身を任せたり、しみじみ「良いフェスやなあ〜」と思ってしまいましたね。
バンド編成のカーネーションは本当にロックで最高でしたし。「メテオ定食」「アダムスキー」の畳み掛けにはアガりました。鍵盤で参加のカメラ=万年筆の佐藤氏のプレイも素晴らしかったですね。「EDO RIVER」を広島で聴くというのも不思議な味わいがありました。
嶺川貴子&Dustin Wongさんも屋外で聴くと気持ち良さ全開で。実に良かったですね。ギターとボイスと秋の風とちょうどパラパラと舞ってきた雨のハーモニーをたっぷり堪能しました。ダスティンさんのナイスガイっぷりを声を大にしてアナウンスしたい私がいるのです。
高野寛さんはトリオ編成でのタイトな演奏が素晴らしかったですね。山田氏のカバーで初めて聴いた時に「何だこの名曲は!」と震えた「確かな光」も初めて生で聴けましたし。「虹の都」「夢の中で会えるでしょう」にもぐっと来ましたね。
トリの二階堂和美さんもまた素晴らしかったですね。空気を一瞬にして変えるその天性の歌声に心を掴まれました。全身を使っての渾身のパフォーマンス(時にはステージを飛び出してお客さんを巻き込んでの)を見ていると、もうこの人自身が音楽というか、音楽が全身に憑依して発せられているかのような力を感じて感動してしまいましたね。(テニスコーツのさやさんと似たような音楽力を感じました。)夕方から夜になる時間帯もあって、どこか神秘的なステージでしたね。素晴らしかったです。
そんなお客さんとして楽しんでしまったフェスも無事終わりまして。そこから地元の公民館のような場所へ移動して打ち上げとなりました。日帰りでそのまま帰られた方もいたんですが、残っていた出演者さん、スタッフさん大勢で打ち上がって楽しかったですね。カーネーションの大田さんとイトケンさんが親しげにしていたので、何の繋がりなのか聞いたら2人のリズム隊であがた森魚さんのサポートをしていたそうで。そこで私も「実は私もあがたさんのサポートやってたんですよ!」と盛り上がり。それを横で聞いていた真里さんも「実は私もあがた森魚さんのサポートやったことあるんです」と告白して来て、みんなであがた森魚さんあるあるで盛り上がるという謎の展開がありました。今回の山田バンドのバックメンバーは全員あがた森魚経験者ということが世羅町で判明したのでした。その後も宴はカオスに盛り上がり、楽しかったですね。雨に降られて身体が冷えてたんですが、お酒と会話で温まりました。素晴らしい仕切りをしてくれた主催者さん、スタッフさんの働きには感謝しかありません。本当にありがとうございました。
そして宿に戻る頃には土砂降りになっており、ライブ中降らなくて良かったと言いながら帰りまして。長い1日がようやく終わったのでした。ベッドに倒れ込むようにして眠りについたのは言うまでもありません。雨の音を聞きながら。


というわけで無事怒涛のツアーも終わりました。2日とも来てくれたお客さんもいたようでありがたかったですね。また機会があれば同行したく思った次第です。
ケ・セラ・セラ。ツアーも人生もなるようになるのです。