猫と草刈り

この時期になると庭の雑草が伸び放題で、余裕で私の背丈を越えるのっぽな草共がぼうぼうと生え栄え、あたかもジャングルの様相を呈しているので仕方なく刈ることになるのですが、雑草というやつは何故にかくも成長するのかと毎年思わざるを得ません。私が現在の私の身長に至るまでに10数年要したのに対し、名も無き草共はたった数ヶ月で私と同様の身長へと成長を遂げるのです。恐るべき成長率なのです。クラスでの背の順で言えば私と近い位置に並び、親しい友人になったかもしれぬのっぽな草共をバッサバッサと切り捨てる作業は残酷にも思えるのですが、庭のジャングル化を止めるためには仕方ありません。私に岡本信人ばりの知識が備わっていれば食用の草を選り分け生活に役立たせるのですが、残念ながら私は信人要素を持ち合わせていないのです。殺人鬼の如く庭に生え聳える草共を鋏で切り倒していると、ミル坊が「あれ、ゆうくん何やってるの?」と物珍らしそうに窓から眺め、遊びに来たご近所猫ミミも「ご主人、精が出ますな」と高見の見物をしていて、2匹の猫に見守られながら草刈りするという何かの遊戯のような様相を呈し出し。猫というギャラリーを得ると私も不思議と張り切ってしまい、「ペガサス流星拳!」「廬山昇龍覇!」「ネビュラストリームネビュラストーム!」「スターダストレボリューション!」などと聖闘士星矢よろしく小宇宙(コスモとルビを振って下さい)を演出して草刈りに挑むのですが、その熱き闘いの最中いつの間にかミル坊はそっぽを向いており、ミミはひとりでゴロンゴロンしていて、私だけがポツネンと残されているのであり。我が小宇宙は寂しきものなりと肩を落としたりしているのです。
いざ刈った草の残骸を袋に詰めようとするも背の高いものは入らないのでまた細かく切るのですが、殺人鬼が遺体を袋に収納するのにバラバラに刻む作業ってこんな感じなのかなとふと思ったりし。草の脚を折り首を掻っ捌き腰を切り、無惨に切り刻まれた亡骸を詰め込むこの猟奇的ゆうくんの姿をミル坊に見られてはならぬとコソコソ作業をしていると再びミミがやって来て「ご主人、精が出ますな」とばかりに見るのであり。私のかっこいい小宇宙を見ずして猟奇的側面ばかりしかと見るのは如何なものかと問うのですが、ミミは「そんなこと言われましても」という顔で見るばかりなのです。
草むしりというある種不毛な作業を今後の人生に於いて何時間せねばならないのかと途方に暮れたりもするのですが、そこに土がある限り雑草は生えて伸びて行くのです。雑草とはそういうものなのです。この逞しさを雑草から学ぶための作業と思いながら今後も私はペガサス流星拳などを繰り出すのでしょう。
もうすぐ夏がやって来ます。雑草との闘いはこれからなのです。