35年目のカーネーション 日比谷野音のアーリーサマー

6月の終わりにカーネーションの35周年記念ライブを日比谷野音に見に行ったのですが、これがまた素晴らしい内容で、私の心の内に良き思い出のひとつとして印象深く刻まれました。感じたことなどをつらつらと書き連ねてみようかと思います。
開場時間が夕方とはいえまだまだ日は高いし、何しろ暑い日だったのです。夏の屋外は日差しを遮るものがなく、いざ入場して席に着いても猛烈な西日が直接我々を襲うのです。取りあえず持参した手ぬぐいにて頭を覆い、まずは飲むかと持ち込んだアルコール(氷結)をプシュッと開け。それを同行したあやと一緒に飲みながら埋まって行く客席を眺めながら開演を待っていると、前座という形なのでしょうか、ブラウンノーズのお2人がステージに現れ。これから幕を開けるカーネーションのライブに向けてステージを温め始めたのです。温める必要なくすでに(物理的に)暑いのですが、温めてくれているのです。いやー今日は祭りだなとそのご陽気な演奏にウキウキしながら氷結を減らしながら楽しんでいると、いよいよ開演時間となりまして。
まずはケラリーノ・サンドロヴィッチさんがステージに登場し。「カーネーションを世に出した人間として責任を持って」冒頭の挨拶をしてくれました。彼がいなかったらカーネーションが日の目を見ずに終わっていたかもしれないと思うと感謝しなければなりません。挨拶では前身バンド耳鼻咽喉科時代の直枝さんとのエピソードなどを語ってくれました。デビューの際にバンド名がカーネーションに変わると聞かされ、「バンド名が変わるのか〜、しかも花の名前か〜」とがっかりしたというエピソードには笑ってしまいました。確かに耳鼻咽喉科の方が個性的ではありますけどね。
その後いよいよカーネーションがステージに登場し。「アダムスキー」でライブは幕を開けました。直枝さんはこの暑いのに正装していたし、大田さんはじめメンバーみんな赤いカーネーションを差していたのがお洒落でしたね。今回は元メンバーやゲストなどかなりの人数が出るのでどうやって仕切るのだろうと思っていたら、ステージが進むにつれ自然にメンバーが入れ替わる方式で、合間にこの35年を振り返るトークやゲストによる挨拶も特にないのが何だかカーネーションらしいなあという感じでしたね。現行メンバーから初期メンバーに入れ替わってのアーリーカーネーションのステージは貴重でした。ケラさんのボーカルも聴けましたし。(今や演劇界の巨匠ですが、よくよく思えば有頂天のボーカルの方なんですよね)
そこから棚谷さん、鳥羽さん、矢部さんが加わっての編成にはアガりましたね。黄金メンバーが戻って来たという感じで。私は10数年前に自分のバンドを鳥羽さんにプロデュースしていただいたことがあるのですが、その際矢部さんにドラムのチューニングをしていただいたなあとか、カーネーションとライブで共演もさせていただいたけど緊張で直枝さんとはひと言も喋れなかったなあとか色々な思い出が蘇りました。「It's a Beautiful Day」のご機嫌な演奏には思わず身体を揺らし楽しんでしまいましたね。(この曲の歌詞に出て来る「ただの犬」というのは何犬なのだろうと犬種に想いを馳せたりしました。)「Garden City Life」にも痺れまくりでした。
その後曽我部恵一さんがゲストに登場しての「Edo River」で会場はもう大盛り上がりです。私自身も現在東京から少し離れたところに住んでいるので、勝手に己の境遇と照らし合わせて「ゴメンゴメンゴメン」と誰に対してかは知りませんが謝りながら踊ってしまいました。大谷能生さんの熱いSaxソロといい、もう最高でしたね。
この頃には持ち込んだ氷結ロング缶はあやと2人ですでに飲み干しており。「やべー酒が足りないぜ」と早速売店に買いに走ったのですが、ふと見やれば周りの人の飲酒率の高さたるやです。前方を見ると足元にすでにビールのロングの空き缶6本を置いているおじさんがいたり、いいちこの小さいやつを何本も飲み干しているおじさんがいたり、序盤ですでに泥酔しているお姉さんがいたり(この方、中盤ですでに寝落ちしていたようですが、大丈夫だったのでしょうか)、まさに大人のお祭りといった様相でしたね。私の隣には私よりちょっと年上くらいのお兄さん2人組がいたのですが、この2人、酒がなくなる度にどっちかが売店に買いに行き「はい、お酒〜」と渡し合うという仲の良さっぷりを見せていたのですが、何しろ酒を買いに行く頻度が高いのです。「大丈夫なのかしらそのペース」と隣で思っていたのですが、まあ今日はお祭りだからそのくらいは良いのでしょう。
その後ムーンライダーズの面々や渡辺シュンスケさんやヒックスヴィルの中森さんなど豪華ゲストが次々とバンドに合流しさらに盛り上がりを見せまして。(中森さんはアンガス・ヤングを思わせる半ズボンファッションで素敵でした。)黒猫チェルシーのドラムの方のプレイがタイトですごく良かったですね。今回この曲にはこの編成でという采配が素晴らしかったように思います。堂島孝平さんがゲストに登場した際には「一緒に九州を回った時は面白かったですねー」とようやくここに来て過去を回想するMCがあり。私の隣のお兄さんが「そのツアー行ったよ〜」と言っており、かなり熱いファンであることがここに来て判明しました。そりゃあ酒も進むよなという感じで。
そんな客席が盛り上がっている中、気付けばもう周囲は暗くなっており。すでに夜に突入していた野音にいよいよあの方がステージに登場したのです。そう、森高千里さんです。ミニスカートにキラッキラと煌めくアイドル衣装でステージに立った森高さんはそれはもう実に可憐で美しいのであり。この方が来たとなれば演奏するのは「夜の煙突」でありましょう。客席からはどよめきに近い歓声が巻き起こっておりました。直枝さんはPVでもお馴染みのかつらを着用し、当時の雰囲気を再現していたのですが、何しろ森高さんの変わらなさたるやです。あのキュートな振り付けに釘付けになりながら、「はしごをのぼるとちゅ〜うで!ふりかえるとぼくのいえのあかりがみえる〜」と合唱する私とあや、そして隣の2人組お兄さん、野音のお客さんたち。江口洋介氏は家に帰ると森高千里がいるのか、何だかそれは許せないように思う!と謎の感情に襲われながら余韻に浸っていると次にステージに現れたのは岡村靖幸さんで。再びどよめく客席。この日最高潮の盛り上がりでありましょう。「学校で何おそわってんの」でセクシーな歌声とダンスを披露する岡村ちゃんに私のハートはずっきゅんと撃たれまくりです。直枝さんと岡村さんというセクシーなおじさん2人のツーショットに私の中の乙女がすっかり萌えまくってしまいました。続いて岡村さんのアコギのストロークから「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」が始まり。青春はワンツースリー、ジャンプをキメる私とあや、そして隣の2人組お兄さん、そして野音のお客さんたち。最&高でした。
そして次に山本精一さんが登場し。轟音ギターを響かせながら「ヘヴン」に突入しまして。この曲が始まるや否や隣のお兄さんが「うお〜」と俄然盛り上がり。隣ですんごいゆらゆらと踊っているなあと思っていたら私の肩に「ごん!」とぶつかって来て。「お兄さん、ぶつかってゴメンゴメンゴメン!」とEdo Riverマナーでしきりに謝って来るお兄さんに「大丈夫ですよ!」と言うと「お、俺、この曲大好きなんだよね、ぶ、ぶつかってごめんね!」と再び謝って来るお兄さん。「ぼ、ぼくはおにぎりが、だ、だいすきなんだな!」と裸の大将的な風情でこの曲への愛情を語るお兄さんにすっかり私は好意を抱いてしまい、「いくらでもぶつかって大丈夫ですよ〜」と心の中で思った次第です。隣のお兄さんをここまでにさせる山本精一さんのギターがヤバかったし、森高さんと岡村さんの後にこれを持って来るのが流石カーネーションじゃないか、と思った私です。
そして本編最後に新曲「サンセット・モンスターズ」が鳴らされまして。今回の公演に合わせて発売されたベスト盤には過去の名曲がたくさん詰まっていますが、その中でもダントツに良かったのがこの新曲だったのです。(私調べ。)新曲が一番良いだなんて現在進行形のバンドとしては最高じゃないですか。野音の夜空に鳴り響く「試合はまだ終わらせないよ」という直枝さんの堂々たる表明にこれまで続けて来た35年、そしてこれからもバンドを続けていく力強い意志のようなものを感じて、ぐっと来てしまいましたね。直枝さんかっこいいよ、カーネーション最高だよと。
そして本編が終わりアンコールを待っていると売店に行っていたと思しき隣のお兄さんが戻って来て「はい、これ!飲んで!」と氷結を手渡して来て。「さっきぶつかっちゃったからお詫び!」と言うのです。そこまでの害を被っていないのに何だかゴメンゴメンゴメンと思いつつも氷結を受け取り、裸の大将からおにぎりを受け取るとこういう気持ちになるのかなと思った私です。(どんな気持ちなんでしょうそれは。)そんなおにぎり、否、氷結を手にしているうちにアンコールが始まり。会場にはこの日の出演者がずらりと並び、それはもう壮観でございました。「The End of Summer」を聴きながら野音の夜空を見上げ、「ああ、今日はここに来て良かったなあ」としみじみ思ってしまいました。そして最後には再び「夜の煙突」で大団円を迎え。もう大満足でした。(オリジナルの振り付けで踊るムーンライダーズの面々がキュートでした。)
終演後、隣のお兄さんが「最高でしたね!」と話しかけて来て。「僕らカーネーションの大ファンなんですよ〜」と言うので「我々もです。氷結ありがとうございました」と礼を述べると「これから飲みに行くんですけど、一緒に行きません?」とまさかのお誘いがあり。「ライブ中さんざ飲んどいてまだ飲むんかい」と内心つっこみながらも「知り合いとこれから合流するのですみません〜」と丁重にお断りし。「そうか〜残念〜」と言うお兄さんのがっかりした表情を見てたら申し訳なく思ったんですけどね。
そして合流する予定だった横山夫妻(私にカーネーションを教えてくれた人でもあります)に連絡したら「体調不良なのでもう帰ります〜」とまさかの返答で。聞けば前日から謎の発熱で寝込んでいたそうで。遠足前に楽しみ過ぎて発熱する子供かと内心つっこみつつも、まあ炎天下の環境で見ていたら体調も悪くなるかもなと思い「お大事に〜」と気遣った私です。こんなことならさっきのお兄さんたちと飲みに行っても良かったなあ、我々鎌倉でmolnというお店をやっていて、音楽イベントもやっていて、直枝さんもゲストで呼んだことあるんですよ〜と、宣伝すれば良かったなあとちょっと思ったのですが、まあ仕方ありません。あやと共に野音の余韻に浸りながら帰りました。
改めてカーネーション35周年おめでとうございます。最高のステージをありがとうございました。そして氷結をくれたお兄さんもありがとうございました。あなたのおかげで良い思い出が出来ました。一緒に飲みに行けなくてゴメンゴメンゴメン。