私、水色の世界で

日頃から運動不足であることを自覚しつつ何もして来なかった私ですが、ついこの間プールで泳いで来たのです。それも流れるプールとかウォータースライダーなどの娯楽系プールではなく、ガチで運動するためのプールです。
プールに行くためにはまず水着を買わなければならないと思い、某スポーツ店に行ってみたものの目に付くのは娯楽系の水着ばかりで、チャラ男がギャルをナンパするために着るかのような派手な仕様のものばかりなのです。しかもそういうのに限ってお値段も張るのです。ここには私の欲する水着はないと諦め、結局アマゾンで地味で無難なユルめの水着を購入したのですが、水着というものはやはり実際に試着した方が良いですね。いざ到着した水着はユルいがゆえに水の抵抗をもろに受け、泳ぎにくいことこの上なしなのです。さらに一緒に買った度付きのゴーグルもド近眼の私には度が弱いのであり。色々とファーストチョイスで失敗したものの、まあ泳げれば良いのさ、といざ近所の屋内プールにあやと一緒に出掛けまして。
思えば泳ぐのは高校の体育の授業以来で、久々だけどまあ何とかなるっしょと泳ぎ始めたら、何とかならないのが人生なのですね。高校時代の自分と今の自分の体力の違いたるやです。25メートルを2往復しただけで「ぜぇ〜、ぜぇ〜、ぜぇ〜!」とすっかり息が上がってしまい。気付けばプールサイドにあしたのジョーのラストシーンの如くうなだれる己がいたのです。全然真っ白に燃え尽きていないのにです。「ゆうくん体力ないね」とずばりと真実を述べるあやに「準備運動せずに泳いだのがいけないのだ」と言い訳をしながら、ひとまず往復水の中を歩くところから始めて。歩くレーンにはリハビリとおぼしきおじいさんしかいなかったのですが、ある意味私もリハビリなのです。おじいさんと共に水の中をゆっくり歩き。それから再び平泳ぎで泳ぎ出したのですが、久々に全身を動かしたので体中がばっきばきと悲鳴を上げているのです。「五十嵐さん、急にあっしらをこき使わないでくだせえよう〜」と。一方のあやは池を優雅に泳ぐカエルの如くすーいすいと30分くらいノンストップで泳いでいるのです。負けるかっと私もそれから何往復かしたのですが、ユル水着は水の抵抗を受けまくるし、もうすっかり疲れてしまい。体の方からも「五十嵐さん、もう勘弁して下せえ〜」と訴えられたのです。あしたのジョーのラストシーン再びです。己の体力のなさを実感した次第です。映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」のワンシーンの如くプールから顔を出したら奥菜恵がホースの水をかけて来て「ねえ、今日の花火大会一緒に行かない?」と誘って来るというようなこともなく。実際にはプールから顔を出したら監視員の若いお兄さんが「だらしのないおじさんが無様な姿を晒しておるな」と半笑いで見下しているだけなのです。(あの監視員さんに常に見張られているの、安全面では良いのでしょうが、自分の泳ぎを採点されてるみたいで何だか嫌なものですね。)しかし度の弱いゴーグルとはいえ水の中の世界がわりとクリアに見られるのが新鮮で、魚気分を味わえるのですね。水色とはよく言ったもので水の世界の色は水色なのです。現実世界から逃避するにはこの水色世界に浸るのも悪くないかもしれないと思った次第です。
私は幼少の頃にスイミングスクールに通っていて、その時はプール終わりのおやつやジュースを楽しみにしていたのですが、大人になると先ほど消費したカロリーを台無しにするビールなど飲んでしまうのです。ぷは〜などと言いながら。何なのでしょう、このカロリーの急速な足し算と引き算の応酬は。すでに筋肉痛になっている全身でその謎に想いを馳せた私です。