北欧旅日記 ラトビア編4

次の日も我々と岩崎さん、あやこさんの店主チームは森の民芸市に買い付けに行き。昨日のような地獄タクシーはご免でっせとホテルに安全なタクシーを呼んで貰い、さらに料金を事前に確認してから乗り込みました。(結果安心の料金でした。)
昨日もわっさわっさと買った我々ですが、この日も何だかんだでわっさわっさと買い込みまして。隈なく見たつもりでも意外と見落としているものがあったりするのです。我々以外にも日本人の方がかなりいて、買い付けの業者さんだけでなく一般のお客さんもかなりいましたが、この雰囲気を味わいながらラトビアの雑貨を安く買えるので、旅としても楽しめるのでしょう。実際楽しい買い付けでした。我々、かなり良い物を仕入れましたのでぜひmoln、巣巣でのラトビアフェアを楽しみにしていただきたく。帰りは民芸市に出店している白樺細工の職人の方にわざわざタクシーを呼んで貰って帰ったのですが、嘘だろというような安さで、満点の楽園タクシーでした。チップを弾んだのは言うまでもありません。
夜はまた全員で集合し、ラトビア料理の店で打ち上げをしました。料理も美味しく、盛り上がりました。たまたま同じ店内に日本人の方がいたのですが、大阪在住のミュージシャンでサックスプレイヤーの方でした。この先大阪で一緒になる機会があるかもしれません。
食事後、くりももちゃんが明日には帰国するとのことで、「もう1軒行っちゃう?」と相成り。私とあやとくりももちゃんと千秋さんとaCaeさんの4人で行くことになったのですが、aCaeさんが「カラオケバーはどうでしょう」と言い出し。何やら千秋さんとaCaeさんが前日に行ったお店があるらしく。みんな酔ってるしラトビアハイになってるし、じゃあそうしましょうかと即決でその店に行くことになりまして。日本でも滅多に行かないカラオケにラトビアで行くことになるとはです。aCaeさんがaCae砲でみんなの写真を撮りながらきゃっきゃとはしゃぎながら20分ほど歩き、いざその店に辿り着いたら店内は何やら薄暗いを通り越して真っ暗なのであり。地下にある実に怪しげな雰囲気のバーで、私のアンテナが「これはヤバいぜ」と訴えているのです。一見さんはまず足を踏み入れられない恐いオーラが出ているのです。「ここは地獄バーなのでは?」と怯えながらaCaeさんを見るも、「ああ、ここですー」とスイスイ入って行くのであり。え、大丈夫?身ぐるみ剥がされても知らないよ?と思いながら店内に入り。とりあえずビアを頼み様子を見ていると、カウンターにひとり小太りのおじさんがビアを飲んでいる他は客がおらず。店員と思われる若いお兄さんとお姉さん数名が酒を作っているのです。とりあえずは乾杯してビアなんぞ飲んでいると急に大音量で音楽がかかり。何事かと見やるとカウンター内で酒を作っていた店員のお兄さんがおもむろに歌い出したのです。しかも巧いのです。美声なのです。ははあ、こんな感じで歌えるよと示しているのだなと我々はここがカラオケバーであることを再確認し、こちらからはまずaCae砲がマイクを握りまして。ルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」を物真似で歌い出したのです。これがまた巧いのです。美声なのです。aCaeさんが曽我部恵一さんのレーベルからアルバムをリリースしている音楽家であることを我々そこでハタと思い出したのですが、その歌唱にやんやと喝采し楽しんだのも束の間、また違う音楽が大音量でかかり。何事かと見やるとまたさっきの店員のお兄さんが歌い出したのです。あれ、またあの人歌うの?店員なのに?とその登場頻度に疑問を投げかけたのですが、この店員、客が歌ったら俺が歌うみたいなサンドイッチ方式を採用しているのかその後もやたらと歌うのです。なぜ歌うかって?そこにマイクがあるからさ、みたいなノリでとにかく歌うのです。aCaeさんも負けじとレディオヘッドだのジェフ・バックリィだのを美声で披露すると、店員のお兄さんは「我、好敵手見つけたなり!」とスイッチが入ったのか「お前の歌ナイスだな!だが俺も負けねえぜ!」みたいなノリでさらに負けじと美声を披露し。日本VSラトビア歌手対決の様相を呈して来たのです。そこへ千秋さんも「えんだ〜!」とホイットニーのオールウェイズラブユーをエモーショナルに投下し、私もジョンのイマジンを歌い、「想像してごらん、国境なんてないんだよ〜」と世界平和を訴えまして。ラトビア初日に路上で聞いたイマジンでラトビア最終日を締めたのでした。そのうち隣に地元客らしき若い女子ふたりがやって来てラトビア語の歌をノリノリで歌い、そこにまた店員のお兄さんが歌いと段々賑やかになって来まして。カウンターでひとり飲んでた小太りのおじさんがその若い女子ふたりをナンパし出したりして店内は盛り上がりの最高潮を迎えたのですが、あまり遅いと明日に差し障りがあるし、夜の街も危ないであろうという判断で「そろそろ帰りますか」と相成り。帰る準備をしていると店員のお兄さんが「ヘイ好敵手、こんな盛り上がってるのに帰るのか?」と引き止めるのであり。「最後に俺と1曲デュエットしようぜ!な?」と半ば強引に入れた曲はブライアン・アダムスロッド・スチュワート、スティングによる「オール・フォー・ラブ」で。店員のお兄さんはわざわざカウンターから出て来てaCaeさんの横に並び、親しげにお互いハーモニーを重ね、その美声で日本とラトビアの友好を形にしたのでした。いやー素晴らしいライブでした。ジョンもびっくりの世界平和の図がそこに展開されておりました。
会計をして貰っている間、ここは地獄バーではないのか、カラオケ1曲毎にメーターがぐんぐん上がるシステムで莫大な料金を取られるのではないかとビクビクしながら見たら、ジャスト飲み物代だけであり。カラオケ代も席代もなしで思わず「明朗会計〜」と口にしてしまった私です。あの怪しげな雰囲気は何だったのでしょうか。カマしだったのでしょうか。
外に出たらすっかり暗くなっており。ラトビアは夜10時くらいまで明るいので初めて暗い街を体験したのですが、みんなではしゃぎながら歩いて何だか心地良かったですね。まるで修学旅行のようで。くりももちゃんは「帰りたくないな〜」と旅を最後まで満喫している様子でした。青春みたいやん、とちょっとセンチメンタルになった私です。
そんなわけでラトビアの旅は平和に終わりました。次の日からリトアニアの旅が始まるのです。