レコードショップですれ違い

最近さいたまの某所にいい感じのセレクトCDショップが出来たとの情報を得て、
あえてこの時代に実店舗を開き音楽を発信するなんて素晴らしいじゃないのと
応援のつもりで何か買うたろうかーくらいの気持ちで仕事帰りに赴いたのですが、
いざ私が店内に入ると店員さんがひとりPCの画面をじっと眺めているだけで、
いらっしゃいませ的な声がかからないのですよね。
あれ私の入店に気が付いていないのだろうかとがさごそ音を立ててもノーリアクションなのです。
まるで私が存在していないかの如く。
まあいいかと取りあえず店内の品揃えを眺めて「へーこんなの置いてるんだあ」なんて見てたんですが、
もうその時点でこの店でCD買う気が失せている自分に気が付いたんですよね。
たかがいらっしゃいませの声掛けがないだけで気を悪くするような偏屈野郎だったのか五十嵐よと
問われればイエスと答えるしかないというか、
前々から私は音楽を売る現場の人間が無愛想なのが嫌なのですよね。
大げさな話、客が来たら「いらっしゃいませ!うちのお店の品揃え最高なんです!
試聴して気に入ったら買って下さい!よろしくお願いします!」
くらい満面の笑みで言って欲しいのですよ。
クールに構えてないで。
客が入店したら何か言って欲しいんですよ。
ウェルカム的な言語を。
本当に音楽を好きなんだったらそれくらいの接客で音楽を売って欲しいという気持ちがあるのです。
今はもう少なくなりましたが90年代頃には「買いたきゃ買えば」みたいな態度の店員がいる
お洒落セレクトレコード店が結構あり、
私はそういうところでレコードを買うのが凄く嫌だったんですよね。
そういうところに行ったあとは「あの店潰れれば良いのになあ」と
小石を蹴りながら背中を丸めて帰ったものでしたが
(その後本当にそれらの店は潰れましたが)、
その頃の空気を思い出してしまって少々がっかりしたという話です。
まあこの店、ネットでも商売しているのでネットがメインなんでしょうけども。
若い客の中には「放っておかれてる感じが心地良い」みたいに思う人もいるのかもしれませんけどね。
私が昔「あの店すげー感じ悪いな!」と怒り心頭したレコードショップがまだ存命していて、
ちょっと前にその店入ったらすごく良い接客になっていて、
「やはりこのCD売れないご時世に実店舗やってたらお客様大事にするしかないもんなあ」と
しみじみ思ったばかりというのもあったかもしれません。


しかし私自身客商売をしているので(矛盾するようですが)店員さんの立場もわかるんですよね。
たまたま作業に熱中していて声をかけそびれただけかもしれないし、
長時間店番しているとたまにだれる瞬間なんかもあるわけだし。
こっちはそんなつもりないのにお客から言いがかりのようなクレーム付けられたりもあるのです。
私がここに書いた「いらっしゃいませ言われなくて買う気失せた」話も
向こうにしてみれば「え、こっちは全然ウェルカムな気持ちでいましたよ〜」と
クレームのように取られるおそれもあるわけです。
しかし私はもうこの店で買う気が失せてしまったし、今後足を運ぶこともおそらくないでしょう。
それを店側の立場で考えたらおそろしいことだなと思ったりしたのですよね。
たまたま入店した客にたまたま声をかけなかっただけで客をひとり失ってしまうのだなと。
しかもいとも簡単に。
そして私自身もたまたま声をかけなかったなどの瞬間のすれ違いで
過去大事なお客をたくさん逃して来たんじゃないかと思ってちょっと怖くなったのですよね。
そう思うと今後もひとりひとりのお客さんに丁寧に接客していくしかないよなあと
自分自身を戒める気持ちになったのです。
私があえてこの話を書いたのはこの店をdisりたいとか「不愉快だった」と愚痴りたいわけではなく、
「お店とお客が良い出会いを出来なかった」という事実に、
何だかもやもやした気持ちになったというか、
ちょっと哀しかったということを書いておきたかったわけです。
しかしまあ音楽自体に罪はないわけで。
全国のレコードショップの人には笑顔でお客さんに音楽を手渡して欲しい。
そんなことを願ってみたりする私です。