1万2000人とのラジオリスニング

仕事中にラジオを聴く習慣がついてもう何年くらいでしょうか。家にテレビもないし、レコードを聴く以外はだいたいラジオを聴いているのですが、ここ8年ほど毎週欠かさず聴いている番組があるのです。それが「オードリーのオールナイトニッポン」なのです。TBSラジオ派の私が唯一贔屓にしているニッポン放送の番組です。(ビバリー昼ズや他のオールナイトニッポンもたまに聴きますが)先日そのオードリーのオールナイトニッポンの10周年を記念したイベントが日本武道館で行われたので、見に行って来たのです。人気番組ゆえチケットは争奪戦となり、私も先行の抽選で2度も落選しており、これはもう無理かと諦めムードの中、一般発売の抽選に申し込んだら運良く当たったのです。
リトルトゥース(番組リスナーをこう称します)である私としてはグッズも欲しいぞ!といざチェックすると、ラスタカラーに片仮名で「リトルトゥース」と書かれたリストバンドや、胸にデカデカと「リトルトゥース」とデザインされたスウェット、Tシャツなどがずらりと並び。その余りのダサに最初は思わずのけぞった私なのですが、番組内でそのダサさをいじっているやり取りを聞いていると不思議なものでどんどん魅力的に思えて来るのです。しかしリトルトゥースなどと書かれた衣服を己は日常で着るのかと何度も自問し、妻にも「そんなダサいTシャツ着ている人とは一緒に歩きたくないぞ」と宣告され、まあグッズなんてなくてもイベントだけ楽しめばいっかとリトルトゥース魂を心の内に忍ばせて武道館に向かったのです。
しかし九段下に向かう地下鉄に乗った時点でそこかしこに「リトルトゥース」と書かれたTシャツを着用している人たちがいるのであり。みんなリトルトゥース魂全開なのです。心の内に忍ばせていないのです。「LITTLE TWOOS」と英語表記で書かれたトートバックを持っている人たちもいて、あ、あの人もこの人もリトルトゥースなんだ!と気付いた時のテンションの上がりようったらないのです。グッズは前日から販売され、飛ぶように売れている状況をツイッターで見ていたのですが、みんな当日着用するために前もって買うのかとそこで気付き、リトルトゥース魂を心の内に忍ばせている場合ではなかった、周囲に表明すべきだった!と思い直したのです。(しかし表明するのが恥ずかしい気持ちもあるのがまたリトルトゥースらしさでもあるのかなと思ったりする私。)
そして地下鉄を出るとさらにいるわいるわ、リトルトゥース魂を表明している人たちが。ダサいと思っていたTシャツもお客さんみんなお洒落に着こなしており、見ていると一緒のチーム感があって何だかテンションが上がるのです。(特にダサさ全開のラスタカラーのTシャツを着ている人の多いことよ!)そして会場前に行くとさらに人々のリトルトゥース着用率が上がり。何しろ全国から1万2000人が集結しているのです。ここにいる人たちみんながリトルトゥースなんだと思うと何だか胸がいっぱいになってしまい、すでに泣きそうになっている44歳のおじさんがここにひとり状態です。部屋で作業しながら孤独に聞いていた、そして己のやさぐれた心を癒してくれた数々の放送をこんなたくさんの人たちと共有していただなんて。オードリーの2人と番組構成作家藤井青銅さんの等身大パネル前には記念撮影の行列が出来ていて、何と1時間待ちとのこと。何だここはディズニーランドか!オードリーはまだしも藤井青銅さんなんてただのおじさんだぞ!と思いながらも、ミッキーを見るかのような目線を青銅さんに送る私。私もみんなもどうかしているのです。
そんなどうかしている光景を眺めながら、著名人から贈られた花など見ながらいざ会場内に入るとさすが武道館は広いのです。バックステージ側も客席として解放しているのであらゆる角度からステージ上を見られるようになっているのですが、ステージ上はシンプルにラジオブースだけなのです。満員の武道館でただただラジオをやるというストロングスタイルなのです。期待に胸膨らませながら1万2000人のリトルトゥースと待っているといよいよ開演時間になり。
オードリーの2人が舞台に登場し、ラジオブースに座るといつもの土曜の夜カスミンと若林のトークが始まり。ラジオ番組をこの規模で共有する喜びたるやです。冒頭のアイドリングトークを経て若林がこの日披露したフリートークは青森のイタコにお父さんのお墓問題を聞きに行くという珍道中で。
若林「俺のお父さんがお隠れになって」
春日(クスクス笑う)
若林「お前何笑ってんだよ!」
というお馴染みのやり取りで番組では笑い話になっていますが、若林にとってお父さんの存在が大きかったことは彼の著書「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」を読めば明らかなのであり。詰めの甘いイタコとの間抜けなやり取りの描写が実にコミカルで面白く一級の漫談でありながら、青年が亡くなった父の声を再び求めに行く家族のドキュメントとしても深く考えさせられる内容で、最後に若林も同行したサトミツさんもイタコ自身も号泣したというオチには笑いの後に得難い感動があり、本当に素晴らしい語りでした。
片や春日もさんざ番組内で語って来た「狙ってる女」こと付き合ってる彼女との結納話を赤裸々に語り、こちらも週刊誌にスクープされ、お互いの家族とひと悶着ありというドタバタを語った一級の漫談でありながら青年が新しく家族を作ろうと一歩踏み出すドキュメントとしても何だかしみじみさせられる内容で、こちらも笑いの後に感動が押し寄せ、その感動をこれだけの人数と共有していることにもまた心打たれてしまった私です。
ヒロシのコーナーでの春日の彼女のサプライズ出演あり、バーモント秀樹、ビトたけしといった仲間のユルい演芸あり(でもビトさんの歌う「浅草キッド」にはちょっと感動してしまった私です)、松本明子、梅沢富美男の一流芸能人の芸も挟みつつ(若林のラップ最高でした!)、圧巻だったのはラストの30分に渡る漫才でしたね。春日の身体を借りてお父さんの声を聞くという若林のフリートークを振りに使った漫才でしたが、顔芸あり、ドツキあり、迫力満点の漫才でした。漫才は人(にん)だと言いますが、まさに2人の関係性と人柄が織りなす言葉のやり取りがスパークしておりました。
「もうお前とは漫才やってられないよ」
「お前それ本気で言っているのか」
「本気だったらこんな楽しく漫才やってないよ」
「でへへへ」 
のくだりもそうですが、若林がボケとして語った「一緒にコンビ組んでくれてありがとうな」という台詞にもグッと来てしまい、何というか笑いながら泣けて来る感じで、感情を揺さぶられました。最高でした。
終演後、気が付けばふらふらと物販に行き、リトルトゥースTシャツを購入している己がいました。日常で着ることがあるのだろうか、妻も一緒に歩いてくれぬぞと一瞬自問したのですが。しかし心が挫けそうになった時、土曜の夜の放送を聞きながら、そっと着用してみるのも良いかもしれないなどと思った私です。着用してこの日の感動を思い出すのです。イタコにお父さんの声を下ろしてもらうかのように。
しみじみラジオって良いなと思いながら帰路に着きました。声と言葉は癒しであると思いながら。

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洗え荒野の果てまでも

ここ数ヶ月洗濯機の調子が悪く、途中でエラーが出ては停止したり、何度も同じ工程を繰り返したり、果てには微動だにせず沈黙してしまうなど、機械として末期を迎えているよアピールが甚だしく、まだ人間の如く徘徊しないだけ良いけど(あの巨体が街をうろついていたらやばいですね)、基本動作に難が見られるのは困ったもんだと途方に暮れていたのです。本体を見やれば使用年数7年と書いてあり、実際に購入したのが7年前で、こんなジャスト7年で壊れるように設計するなんて逆に凄くないかと感心してしまったのですが、7年殺しの秘薬でも投入されているのでしょうか。工場にずらりと並べられた洗濯機にケンシロウが「あたたたたたたたっ!」と秘孔を突いて、「お前らはあと7年で死ぬ」と言い捨てて去って行くのが最終工程なのでしょうか。「ケンシロウさん、お疲れさまでした!この後一杯どうですか?」と仕事後に飲みに行ったりするのでしょうか。「ドラム式は分厚いから秘孔突くのつらいな〜」などとケンシロウが愚痴を言ったりするのでしょうか。脱水の時間なのに何度も水を投入し直す洗濯機に「おじいちゃん!水はさっき大量に飲んだでしょ!」と注意し、動作を止めてしまった際には「ほら、頑張れ!洗濯機としての矜持がお前にはないのか!」と激励し、自作の洗濯機応援歌「洗え荒野の果てまでも」をミル坊と合唱する展開にまでなったのですが、さすがにこうなると買い替えです。
ビートウォッシュが良いらしいよというぼんやりした情報を得て、「ダンカン馬鹿野郎!」とビートなたけしが軍団連中を使ってウォッシュする図を想像したのですが、軍団の方々もそこそこ良いお年だし大変な作業だよなあ、そういえば水道水博士の体調は大丈夫なのかしらと浅草キッドにまで思いを巡らせながら家電量販店に行き、結局適当と思われるものを「じゃこれ下さい」と10分くらいで決めたのですが、あれこれ思い悩んで買ってもどうせ7年で死ぬという諦観があるからでしょうか。見たところ秘孔を突かれた形跡はありませんでしたが。
しかし思い返せばこの7年の間に居を移し、独立もし、ミル坊がにゃーにゃーにゃーとやって来たり色々あったわけで、その間の我々の衣服など身の回りのものを綺麗にしてくれたのだから洗濯機くんには感謝せねばなるまいと思った次第です。
毎日皿を汚し服を汚し身体を汚し、洗って綺麗にして明日を迎えるのが生活というやつです。洗濯機くんの引退を記念して乾杯した我々です。まあ何もなくても毎日乾杯はしているのですけどね。f:id:fishingwithjohn:20190214075435j:image

地図の上のサウダージ 貸切り図書館70冊目

先日は貸切り図書館70冊目、yojikとwandaさん、NRQさんのライブにたくさんのご来場をありがとうございました。ヨーワンさんがmolnに出演するのはもう3回目でしょうか。今回はイトケンさんも加わってフルバンド編成で出演してくれました。3曲も披露してくれた新曲はどれも良かったし、2人の息の合ったハーモニーに寄り添い、時に暴走する吉田さんの二胡、服部さんイトケンさんのしなやかなリズム隊も素晴らしかったです。歌詞に図書館が出て来る「ブライアンイーノ」という曲がカーティスのようで、実にかっこよかったですね。私がリクエストした超名曲「I Love You」にも落涙しました。(聴くと毎回泣いちゃうんですが)本の紹介ですが、wandaさんは雑誌「STUDIO VOICE」の「Flood of Sounds from Asia いまアジアから生まれる音楽」という特集を紹介してくれました。いまどき雑誌で音楽を紹介するなんて珍しいと手に取ったそうで、久々に雑誌を買った体験と音楽を知るツールがネットになって久しいというリスナーとしての雑感を語ってくれました。コラムのようなその語り口がwandaさんらしくて良かったですね。
yojikさんは町田尚子著「ネコヅメのよる」という絵本を紹介してくれ、朗読もしてくれました。猫の描写のアングルや夜の色味が迫力あって強く惹かれる本でしたね。yojikさんは仕事で子供の本の編集に携わっており、よく「子供たちが怖がるので暗い色は使わないで欲しい」というクレームを受けるのだそうです。自分は幼い頃に絵本の暗い世界に惹かれたし、子供の読むものが明るい健全なものだけでは感性が育まれないのではと違和感を抱いたという話をしてくれました。私も絵本など子供向けの本の夜の暗い世界の話にときめいたものでしたが、そんなクレームが来て作品作りに配慮されてしまうのは勿体ない気がしてしまいますね。「ネコヅメのよる」は猫好きにはたまらない怪しさがあって、手に取ってみようと思いました。
イトケンさんは普段あまり本を読まないけれど、安部公房だけは大好きで最近は全集まで揃えているという話をしてくれました。イトケンさんとは付き合い長いですが、安部公房好きだとは初耳でした。教科書に載っているのを読んで興味を惹かれたのだそうです。安部公房はシンセを使って音楽も作っているとのことで、後で検索したら本人と機材の映っている映像がありました。安部公房の機材をいじる姿はどこかイトケンさんに通ずるものがありましたね。
そして続いての登場はNRQさんです。昨年リリースされたアルバム「レトロニム」も素晴らしく、ぜひまたお呼びしたいと思っていたのでライブが実現して嬉しかったです。二胡とサックスとギターが奏でるいつの時代かどこの国籍かわからないけど、どこか懐かしいメロディーに惹かれてしまうのです。これをサウダージと呼ぶのでしょうか。グレッチをアンプ直差しの牧野さんの職人のようなギタープレイも良かったし、中尾さんのハイハットのキレの鋭さも凄かったです。(中尾さんのドラム聴くといつもチャーリーワッツを思い出します。)NRQの音楽を聴く度に、旅の途上にこういう曲が流れていたような気がすると旅の光景を回想してしまうのです。そして人生は旅であるとその旋律を聴きながら実感するのです。本当に素晴らしいライブでした。
本の紹介のくだりでは、まず服部さんが奥さんの実家から発掘したという「懐かしのメロディー66」という手のひらサイズの歌本を紹介してくれました。こういうコードも載っていない、歌詞だけ書かれた本で歌を共有出来た時代があったのですね。(と、解説を振られた中尾さんが語ってくれました。)
吉田さんは保坂和志著「カンバセーションピース」を紹介してくれました。この小説、何てことのない会話の連なりが主な内容ですが、作中に出て来る横浜ベイスターズについての会話に吉田さんがファン目線からツッコミを入れていて面白かったですね。野球好きが読むとそういう感想を抱くのかと新鮮でした。
牧野さんは本の現物を忘れて来たものの、内容だけ紹介してくれました。ナショナルジオグラフィック社から出ている「世界をまどわせた地図」という本で、古今東西に存在した嘘偽り、誤り、妄想、でっち上げなどによる幻の地図を紹介しているのですが、実際2000年代にメキシコ近辺にあるとされていてグーグルマップにも載っている島が存在していなかったことがわかり、マップから削除された例なんかもあるそうです。最近でもそんな話があるのだから過去にはあり得ない形の地図がたくさん出回っていたことでしょう。世界各国で地図に主観を入れていた時代があったはずです。聞いていてかなり興味を惹かれましたね。
中尾さんも牧野さんに続き本を忘れて来たのですが、さらにはタイトルも作者も忘れたという話には笑いました。内容だけ紹介してくれて、「タイトルは各自調べて下さい」とのことでしたが、調べたらおそらくラルフ・ジョルダーノ著「第二の罪 ドイツ人であることの重荷」という本のようですね。ヒトラー支配下での罪を心理的に否定する第二の罪についての話で、「ヒトラーもそんなに悪くなかった」と肯定することが罪であるというジャーナリストによる提言が書かれているようです。紹介にもメンバーの個性が出ていて面白かったですね。
最後の両者によるセッションもそれぞれの個性が出ていて素晴らしかったです。yojikさんの歌う「のーまんずらんど」では牧野さんがリハでイトケンさんに「めちゃくちゃに叩いて下さい」みたいな注文してて、実際本番でめちゃくちゃにかっこよく崩して叩いていたの最高でしたね。「それいけ探検隊」という曲では牧野さんのギターもyojikさんのリコーダーも炸裂していたし、みんなの掛け声も決まっておりました。先ほどの地図の話じゃないですが、幻の地図を片手にバンドが探検に出かけているような勇ましさと楽しさがありました。
yojikさんが服部さんのことをひそかにハッチと呼んでいるという話から、ヨッチだのマッチだのNRQ内でニックネームをつけ合う展開になったり、両者の良き関係が演奏に現れていてとても面白かったです。良きライブでした。
貸切り図書館、次回は3月16日ゲストに次松大助さん(THE MICETEETH)、難波里奈さん(純喫茶コレクション)を迎えてお送りします。こちらもぜひよろしくお願いしますということで。f:id:fishingwithjohn:20190212151516j:image
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サーフ ネコノテ カマクラ

気が付けば2月になっておりました。早いのです。時の流れは。

1月中旬からは独立してカマクラ張子として活動を始めつつ、ほぼ毎日molnに立ってお店スタッフとしての業務もしていたので、何というかまあ単純に忙しかったです。店長のあやに「いらっしゃいませの言い方が違う!」といらっしゃいませ千本ノックさせられたり、「掃き掃除の仕方が違う!」と掃き掃除千本ノックさせられたり、接客だのレジの締めだのカード決済だの研修生の如くビシビシ仕事を教えられ、44才にして雑貨屋店員として新人デビューを果たした月となりました。「お前は仕事が出来ねえな!」と罵声を浴びせられ、「ひー、すみません〜」と言いながら素敵雑貨を売る簡単なお仕事です。夢を売るって素敵なことね。
そんな新人業務の合間に張子作家として招き猫のオーダーをせっせと仕上げつつ、1月は貸切り図書館を3回も開催したので、何だか盛りだくさんという感じでしたね。タカテツさん、直枝さん、うりさんのライブは本当に素晴らしく、このようなライブを企画出来た喜びは大きかったです。自分の店で好きなライブを見られるというのはありがたいことです。
張子のオーダーは飼い猫の招き猫の注文が多く、描く際には資料としてたくさんの猫の写真を見るのですが、猫の写真を見ていると本当に癒されるのですよね。猫って可愛いな〜と癒されながらmolnで招き猫を仕上げ、帰宅したら我が家のミル坊に癒され、猫の可愛さに支えられながらのスタートとなりました。忙しい時は猫の手も借りたいなどと言いますが、実際に猫の手を借りて乗り切った感じです。ミル坊も「ほら、貸してやるにゃ!」と快く手を差し出してくれました。
招き猫に関しては様々なオーダーを受けているのですが、この間は「28年前に亡くなった猫の写真を肌身離さず持ち歩いているのですが、その猫の柄の招き猫を作ってくれませんか」という依頼があり、その写真を見ながらお作りしました。28年前に亡くなった猫を今も忘れられずに写真を持ち歩いていることや、その猫の思い出を招き猫として形に残そうとする愛情の深さに何だかジーンとしてしまった私です。毎回猫の柄の美しさに感動しながら描いています。猫に乾杯しなければなりません。力をくれる存在に。
そんなカマクラ張子ですが、ロゴをイラストレーターの福田利之さんに描いていただきました。素晴らしく可愛い仕上がりに歓喜した私です。ロゴを受け取って、以前吉祥寺で福田さんの個展を見た時に「こ、この人は凄い!」と衝撃を受けた時のことを思い出しました。福田さんラブ!と心のうちにハートを送ってしまった私です。そんな福田さんのラブなロゴが目印のカマクラ張子のインスタには私の描いた招き猫などがアップされているので、ぜひ見ていただきたいのです。そしてフォローしていただきたいのです。
 https://www.instagram.com/kamakurahariko/
あとツイッターFacebookも開設したのでよろしければ。
http://twitter.com/kamakurahariko
https://m.facebook.com/kamakurahariko
SNSの紐付けがうまくいかず、全部個々にアップするのは骨が折れるのですけどね。いずれはミル坊の手でも借りてやっていこうかと思っているところです。猫の手マークのいいにゃ機能でもあれば良いのですけどね。
はてなダイアリーを2004年から始めて、結構な量の文章を書いて来たのですが、近くサービスが終了するのだそうですね。仕方なく今書いているはてなブログというのに移行したのですが、ダイアリーとブログとどう違うのでしょうか。トリップとトラベルの違いみたいなものでしょうか。ラブとライクはだいぶ違いますけどね。過去の記事はたまに出来事を思い出すのに検索するくらいで読み返さないのですが、よくよく考えたら財産だなあと思ったりします。そんな財産を増やす1年に出来ればと思っている2月の初旬です。

今年もあっという間なのでしょうか。きっとあっという間なのでしょうね。波に乗っているうちに過ぎるのでしょう。そんな予感がしているこの頃です。

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賑やかなるノスタルジー 貸切り図書館69冊目

先日は貸切り図書館69冊目、中山うりさんのライブにたくさんのご来場ありがとうございました。もうmolnには4回目の出演となるうりさんですが、今回は初めての編成で新鮮でしたね。うりさんの凛とした歌にトランペットにアコーディオン、南さんのウッドベースと小林創さんのピアノによる鉄壁のアンサンブルが素晴らしかったです。特に小林さんのピアノ、初めて聴きましたが主役を食う勢いの超絶プレイに耳を奪われっ放しでした。(星野源の「恋」でピアノを弾いてるのが小林さんだそう。知らずに何度も耳にしていたのですね。)トリオなのにビッグバンドみたいな賑やかで迫力ある演奏にうりさんの楽曲の良さも際立っておりました。個人的にはデスメタル好きな女の子を好きになる女の子の歌「デスメタルラブ」にグッと来てしまいました。この曲はカバーだそうですが、歌詞がうりさんのキャラクターに合っていてすごく良かったですね。

うりさんの紹介してくれた本は金沢の古本屋で買ったという金子みすゞ「日本語を味わう名詩入門」、エレカシのインタビュー本「俺たちの明日」上下巻でした。金子みすゞの言葉には自分にはない感性があるとのことで、いくつか詩を朗読してくれました。合わせてうりさんの子供の頃の思い出話なども語ってくれました。

エレカシはライブを見に行って以来「エレカシ沼にハマってしまった」とのことで、このインタビュー本を紹介してくれました。しかもちょうどこの下巻を読んでいた時に偶然飲食店でボーカルの宮本さんに遭遇し、勇気を出して話しかけたらお連れの人がたまたまこの本の編集者さんだったそうで。宮本さんは「自分より売れているミュージシャンに好きと言われると嬉しいけど、売れてない人に言われてもそうでもない」みたいな発言をしているらしく(まあ冗談なのでしょうが)、うりさんは自分がミュージシャンであることは明かさなかったそうです。うりさんと宮本さんのコラボなどもぜひ見てみたいですけどね。何より思っている相手に出会えるうりさんの引きの強さが凄いなと思いました。

ベースの南さんは「ISAN 旅するタイ・イサーン音楽ディスクガイド」という本を紹介してくれました。この本で紹介されているタイの音楽に興味はあるけど、タイ語で検索出来ないし、英語の検索にも引っかからないので内容を聞けずモヤモヤするとの話でしたが、非英語圏の文化へのアクセスに検索がネックになるというのはなるほどと思いましたね。Siriに聞くにも何て発音するのかわからない場合もありますしね。南さんはタイ映画の特集上映会があるのを知り、タイ音楽に触れられるかもと見に行ったらたまたま見た作品がぶっ飛んだ前衛的な内容だったらしく、よりモヤモヤしたというエピソードを語ってくれました。

小林さんは棋士村山聖を題材にしたノンフィクション小説「聖の青春」を紹介してくれました。小林さんは将棋を指している間だけ現実世界のことを忘れられるというくらい将棋が好きなのだそうで。小林さんの緻密なピアノプレイを聴いていると何だか合点がいきましたね。二手三手先を読みながら構築していく感じというか。「聖の青春」が映画化された際に村山聖役が松山ケンイチだったことについて「全然本人に似ていない、ドランクドラゴン塚地の方がぴったりだ」と小林さんは話していて、後で画像を検索したらなるほど塚地さんの迫真の演技だったら本人に迫れるかもとそのキャスティングの妙にも納得してしまった私です。三者三様の本の紹介が聞けて面白かったですね。

あと図書館つながりで言うと2月から北区の図書館の閉館を知らせる音楽とナレーションをうりさんが担当するそうです。図書館に閉館までいた経験は学生時代以来ないなあと思ってちょっとノスタルジーな気持ちになりました。これはぜひ北区まで聴きに行かねばと思った次第です。

貸切り図書館、次回はNRQ、yojikとwandaをゲストに迎えてお送りします。ヨーワンさんはバンド編成なのでイトケンさんも来ます。ぜひこちらもよろしくお願いしますということで。

2月10日(日)鎌倉moln

「貸切り図書館70冊目」

出演:NRQ/yojikとwanda(+itoken、服部将典吉田悠樹

開場18:00 開演18:30

 

前売り¥2800 当日¥3300(+1drink)

ご予約はmolnまで。

http://cloud-moln.petit.cc/banana/2848417

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演芸と音楽 貸切り図書館68冊目

 

 

先日は貸切り図書館68冊目、直枝政広さんのライブにたくさんのご来場ありがとうございました。moln的にはタカテツさんの翌日に直枝さんという実に濃ゆい2デイズでしたが、たっぷりと堪能させていただきました。前日の江ノ島カーネーション公演と連続して来られた方もいたようなので、お客さん的にも濃ゆい2デイズだったことでしょう。

直枝さんは最近アコギの音をラインで出すのが嫌になったそうで、出来るだけ生の鳴りを聴かせたいと今回マイクで音を拾ったのですが、アルペジオストロークの強弱やプレイの細かいニュアンスが生々しく伝わって来て、すごく良かったですね。歌唱の凄みも部屋で聴いているかのように間近で体感出来ました。

リハの時に「明日は満月だそうですよ」という話をしたら「あ、じゃああの曲やろう」と歌詞に満月が出て来る「LOVERS & SISTERS」を歌ってくれましたが、基本弾き語りのセットリストは客席を見ながら全部その場で選んで決めているのだそうです。そんなセトリですが、弾き語りバージョンで初めて聴いた「サンセット・モンスターズ」も感動的だったし(暑い&熱い野音を思い出しました)、「Strange Days」「十字路」「やるせなく果てしなく」などみんな良かったのですが、何よりもこの日の「ANGEL」は胸を打つ名演でしたね。本の紹介のくだりでは演芸の話題が多かったですが、まさに落語家の名人芸を見ているかのようでした。語り、息遣いに生き様が現れているなあと。直枝さんご本人も「今日のANGELは良かった〜」としみじみ仰っておりましたしね。

今回直枝さんは本の他にもDVDやレコードも持って来てくれて、色々と紹介してくれました。(以下、リストは直枝さんのインスタからの引用です。)

 

「赤めだか」(DVD)
二宮友和、ビートたけし主演 TVドラマ版
昭和元禄落語心中」(TVドラマ)
「やっぱ志ん生だな!」ビートたけし(書籍)
立川談志と落語の想像力」平岡正明(書籍)
「野ざらし」三代目 春風亭柳好(LP)
カーネーション 35周年記念パンフレット
「~35 YEARS OF CARNATION~THE BOOK OF SUNSET MONSTERS」(書籍)
中央公論」1960年12月号 (雑誌)深沢七郎「風流夢譚」掲載号
「講談入門」神田松之丞(書籍)「週刊文春WOMAN」(雑誌)「地べたの二人」玉川太福(CD)「木馬亭浪曲師たち」(DVD)「Elliott Smith Songbook」(書籍)
「時間は実在するか」入不二基義(書籍)
落語を愛する直枝さんはかつて本気で小三治師匠に弟子入りも考えたくらいだそうで、今回は落語を題材にした作品をたくさん紹介してくれました。談志師匠は当時生で見ることが叶わなかったので、後追いで本や映像で勉強しているのだそうです。歌に関しては自分が作っているものなので自己流で表現するだけですが、落語は代々古典を引き継いで時代に合わせて表現していくという難しさがあり、それを追求する姿に憧れを覚えると語ってくれました。直枝さんは噺を身体に入れるとはどういうことなのかを考え、三代目春風亭柳好の「野ざらし」を車の中で繰り返し聴きながら練習して、遂には「身体に入れた」のだそうです。客席からも「聴きたい〜」と声が上がっていましたが、直枝さんバージョンの「野ざらし」をいつか聴ける日が来るのでしょうか。(以前ポップ鈴木さんに落語をやらないかと誘われたこともあったそうですが。)いっそmolnで高座を作って本気で直枝さんの落語会を企画しようかなとちょっと思ったりした私です。直枝さんは以前の貸切り図書館でも上林暁の小説「花の精」を丸々書き写して文章を身体に入れたと語ってくれましたが、表現の会得のためにコピーするという行為が直枝さんにはきっと必然としてあるのでしょう。作品を客前で仕上げていくという一人芸として、落語に学びながら弾き語りを極めていきたいとのことでしたが、この日の「ANGEL」にはその直枝さんの「芸」がまさに現れていたように思います。素晴らしい弾き語りでした。
あとは去年のカーネーション野音公演で販売されたパンフレットの裏話や(本当にギリギリ進行だったそう)、たまたまmolnの隣の古本屋で買った中央公論の話から語ってくれた深沢七郎のエピソードなども面白かったですね。
あと直枝さんは落語の他にも講談、浪曲にも興味があるそうで、神田松之丞さん、今度カーネーションと共演する玉川太福さんを強く推しておりました。神田松之丞はラジオでの強烈な毒舌と小気味好いトークが人気ですが、直枝さんは「対談に於いて人から話を聞き出す手腕に優れている」とか、「講談の面白さを伝えようとする意識の高さが素晴らしい」とか、芸の観点からきちんと彼を評価していて流石だなと思った次第です。私も神田松之丞さんのラジオを毎週聴いていますが、「おもろいな〜」とただただケラケラ笑ってるだけですからね。玉川太福さんはサンキュータツオさんが絶賛していたので気になっていたのですが、直枝さんも推しているとなればチェックせねばと思いました。演芸界の若い才能をきちんと押さえている直枝さんのアンテナが素晴らしいなと思いましたね。2人とも音源をサブスクで聴けるとのことなので、気になった方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
あとエリオット・スミスのスコアはライブで彼の曲をカバーするのに参考にしたとのことで、今回も歌ってくれましたが、やはり学ぶ際には一度身体に入れるという行為が必要になるのだなと思いましたね。
直枝さんはライブの終盤で、今も13歳の時の気持ちのままで物を作っていると語っておりましたが、作品の瑞々しさや演芸や文学、音楽へのあくなき探究心など、まさにそうなのだろうなと思いました。そこに年齢や経験を重ねた円熟が加味されてますます深い表現になっていくのではないでしょうか。直枝さんが70代になってからの「ANGEL」はどんな表現になるのだろうかとふと想いを馳せた私です。
 

私も落語が好きなので、終演後には直枝さんと落語の話で盛り上がりました。そもそも神田松之丞をラジオパーソナリティに抜擢したトナミディレクターが凄いとか、あの回は神回だったとかラジオの話も出来て楽しかったです。直枝さんの落語もいつか聴いてみたいものです。直枝版「野ざらし」の初披露の機会は果たしてやって来るのでしょうか。楽しみに待ちたいと思います。

 

深い話がたくさん聴けた貸切り図書館、ぜひ次回もお楽しみにということで。

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美学と幽玄と狂気 貸切り図書館67冊目

先日は貸切り図書館67冊目、高橋徹也さんのライブにたくさんのご来場どうもありがとうございました。2019年moln初ライブをタカテツさんにやっていただけるというのは何だかとても縁起の良い感じです。リハーサルから柔らかなムードで、とても良いライブになりました。
今回はペダルスティールの宮下さんとのデュオでの出演でしたが、タカテツさんは最後までアコギ1本で通して、繊細なアルペジオから豪快なストロークまで息の合った演奏で魅了してくれました。そんなタカテツさんの美学と幽玄と狂気に寄り添い、時にブーストさせる宮下さんの職人技も素晴らしかったです。あの曲もこの曲もと盛りだくさんのセットは3時間を超えましたが、心地良い緊張感のある演奏とリラックスした雰囲気のトークは聴き応えがあり、あっという間でしたね。個人的には星新一の朗読からの「雪原のコヨーテ」の壮大さ、絵画的な「夏の出口」の美しさ、「大統領夫人と棺」の狂気には圧倒されました。(この3曲畳み掛けですもの!)弾き語りでこれだけの世界を描けるタカテツさんの歌の力たるやです。あと「夜のとばりで会いましょう」も改めて良い曲だなあとしみじみしてしまいましたね。「靴をけとばす」という同じ言い回しが時を経て違う曲に登場するという話は興味深かったです。けとばされた靴が宙を舞い、数年後の歌に着地するだなんて何とロマンチックなんでしょう。(そういえば「3つ数える」というフレーズも複数登場しますね。)宮下さんのソロ演奏も素晴らしかったです。
愛読書トークでは40代から好きになったという村上春樹について語ってくれました。最初はいけ好かねえ野郎だと思っていたそうですが(このタカテツさんが江戸っ子口調でディスるスタイル、私は好きなのです)、マラソンとレコードという共通項から入って良さがわかるようになったそうです。春樹が愛好するジャズが40年代から50年代のものというセレクトに好感を持ったというタカテツさんの感想がレコード愛好家のそれだなあと思いましたね。あとは筒井康隆の話なども語ってくれましたが、トークショーのようにきちんと構成されていて、タカテツさんの喋り上手くなったなあと感心してしまいました。初めて貸切り図書館に出演した時はトークに自信がないと事前にレジュメを作ったりしていましたが。宮下さんの時代小説の話などもあり、とても聴き応えありました。
アンコールでは何とmoln店主にして草tenボーカルあやも参加させていただきまして。草tenに提供していただいた「波の音が聴こえたら」をデュエットし、「Summer Soft Soul」ではコーラスをやらせていただきました。タカテツさんの声に女性声というのもなかなか良い感じでしたね。前日にハモりパートを猛練習した甲斐があったというものです。客席から手拍子もいただき、とても盛り上がりました。
タカテツさんは今年はOLのキラキラ感を目標にすると謎の決意を語っておりましたが、すでにフレッドペリーのカーディガンをOL風に着こなす選手権(40代男性の部)があったらぶっちぎりで優勝でしょう。お財布片手に優雅にランチへ出かける図が容易に浮かびました。この日のダッフルコートもお洒落でしたし。この夜のタカテツさんは終始優しい顔をしていて、もはや性別を超えたお釈迦様か菩薩のような聖なる生き物に見えましたね。笑顔にありがたみを感じるという境地です。それを言ったら「俺はロックンロールキャラだから!」と真っ向から否定しておりましたが。「大統領夫人と棺」を歌う菩薩キャラというのも新しくて素敵ですけどね。
最後には持参した本をジャンケン大会でお客さんにプレゼントというどこまでも盛りだくさんの内容で終わりました。愛読書をご本人からもらえるだなんてこんな嬉しいことはないでしょう。
タカテツさんの新しい1年のスタートを鎌倉で切れたのは我々にとっても嬉しいことでした。彼の今年の活動も楽しみです。貸切り図書館も2019年たくさん開催しますので、そちらもよろしくお願いしますということで。