美学と幽玄と狂気 貸切り図書館67冊目

先日は貸切り図書館67冊目、高橋徹也さんのライブにたくさんのご来場どうもありがとうございました。2019年moln初ライブをタカテツさんにやっていただけるというのは何だかとても縁起の良い感じです。リハーサルから柔らかなムードで、とても良いライブになりました。
今回はペダルスティールの宮下さんとのデュオでの出演でしたが、タカテツさんは最後までアコギ1本で通して、繊細なアルペジオから豪快なストロークまで息の合った演奏で魅了してくれました。そんなタカテツさんの美学と幽玄と狂気に寄り添い、時にブーストさせる宮下さんの職人技も素晴らしかったです。あの曲もこの曲もと盛りだくさんのセットは3時間を超えましたが、心地良い緊張感のある演奏とリラックスした雰囲気のトークは聴き応えがあり、あっという間でしたね。個人的には星新一の朗読からの「雪原のコヨーテ」の壮大さ、絵画的な「夏の出口」の美しさ、「大統領夫人と棺」の狂気には圧倒されました。(この3曲畳み掛けですもの!)弾き語りでこれだけの世界を描けるタカテツさんの歌の力たるやです。あと「夜のとばりで会いましょう」も改めて良い曲だなあとしみじみしてしまいましたね。「靴をけとばす」という同じ言い回しが時を経て違う曲に登場するという話は興味深かったです。けとばされた靴が宙を舞い、数年後の歌に着地するだなんて何とロマンチックなんでしょう。(そういえば「3つ数える」というフレーズも複数登場しますね。)宮下さんのソロ演奏も素晴らしかったです。
愛読書トークでは40代から好きになったという村上春樹について語ってくれました。最初はいけ好かねえ野郎だと思っていたそうですが(このタカテツさんが江戸っ子口調でディスるスタイル、私は好きなのです)、マラソンとレコードという共通項から入って良さがわかるようになったそうです。春樹が愛好するジャズが40年代から50年代のものというセレクトに好感を持ったというタカテツさんの感想がレコード愛好家のそれだなあと思いましたね。あとは筒井康隆の話なども語ってくれましたが、トークショーのようにきちんと構成されていて、タカテツさんの喋り上手くなったなあと感心してしまいました。初めて貸切り図書館に出演した時はトークに自信がないと事前にレジュメを作ったりしていましたが。宮下さんの時代小説の話などもあり、とても聴き応えありました。
アンコールでは何とmoln店主にして草tenボーカルあやも参加させていただきまして。草tenに提供していただいた「波の音が聴こえたら」をデュエットし、「Summer Soft Soul」ではコーラスをやらせていただきました。タカテツさんの声に女性声というのもなかなか良い感じでしたね。前日にハモりパートを猛練習した甲斐があったというものです。客席から手拍子もいただき、とても盛り上がりました。
タカテツさんは今年はOLのキラキラ感を目標にすると謎の決意を語っておりましたが、すでにフレッドペリーのカーディガンをOL風に着こなす選手権(40代男性の部)があったらぶっちぎりで優勝でしょう。お財布片手に優雅にランチへ出かける図が容易に浮かびました。この日のダッフルコートもお洒落でしたし。この夜のタカテツさんは終始優しい顔をしていて、もはや性別を超えたお釈迦様か菩薩のような聖なる生き物に見えましたね。笑顔にありがたみを感じるという境地です。それを言ったら「俺はロックンロールキャラだから!」と真っ向から否定しておりましたが。「大統領夫人と棺」を歌う菩薩キャラというのも新しくて素敵ですけどね。
最後には持参した本をジャンケン大会でお客さんにプレゼントというどこまでも盛りだくさんの内容で終わりました。愛読書をご本人からもらえるだなんてこんな嬉しいことはないでしょう。
タカテツさんの新しい1年のスタートを鎌倉で切れたのは我々にとっても嬉しいことでした。彼の今年の活動も楽しみです。貸切り図書館も2019年たくさん開催しますので、そちらもよろしくお願いしますということで。