「14.8℃カマクラ」山田稔明さんからのコメント

fishing with johnの11年振りの新譜「14.8℃カマクラ」がいよいよ発売になりました。このアナウンスを出来るとは本当に感無量です。永遠に世に出ないのではないかと思われましたが、出るのですね。「歩けリリー」という曲のレコーディングを2013年に行っているので、アルバム作りをそこから開始と見ると、足掛け7年かかったことになります。この7年の間に結婚したり引っ越したり独立したりラジバンダリと色々あったので余計に感慨深いです。今回は色々なアーティストとコラボしており、その辺の話はCD内に長文のライナーノーツを書いたのでそちらを読んでいただきたいのですが、こちらのブログでもちょこちょこ紹介していきたいと思います。また家にCDプレイヤーがない、物を持ちたくないという方には今後サブスク配信も予定していますので、そちらで聴いていただけたらと思います。まあ折角の可愛い猫ジャケだし、もうCDという形式でリリースするのも今回で最後かと思うので、ご祝儀代わりにコンパクトディスクを買っていただくなんてのも乙かと思います。音も断然良いですし。

アルバム発売に向けて山田稔明さんにコメントを書いていただきました。毎回彼の新譜がリリースされる度に「五十嵐くんコメントよろしくね」と恒例のように頼まれるので、「山田さんコメントよろしくね」とお願い返しました。
この間恵比寿天窓switchにて行われた山田稔明with夜の科学オーケストラのライブも会場のswitchが年内で閉店するというのもあり、とても感慨深いものになりました。思えば私がswitchでの夜の科学に参加し出したのも11年前で、この11年アルバムを出していないのに「fishing with johnの五十嵐くん」という紹介をしてもらっていたので、何とか間に合ったなと思うのと同時にこれからもうここでライブが出来ないのかという寂しさもあり、色々胸がいっぱいになりましたね。
山田氏とは「いつアルバム出るの?」みたいな話をこの11年していたのでようやく出せたという感じです。山田バンドに参加させてもらうことで音楽的モチベーションが保たれたというのもあり、アルバムは彼がいなかったら完成しなかったかもしれないです。美しい賛辞までいただき、本当に感謝しかありません。


音の錬金術職人が長い時間をかけて紡いだ音細工は例えるならばカレイドスコープのピンボール、夢とうつつ。fishing with johnから届いた「うた」を再生すると僕の意識は銀色の玉になって、乱反射するみたいにその音像のなかで右往左往、遊泳する。見たことのない景色と懐かしい風景が交互に波のように押し寄せてきて、胸の奥のひきだしにずっとしまってあった感情なんかもふわっと浮かび上がるみたいだ。走馬灯レコードだ、これは。

 


山田稔明(GOMES THE HITMAN

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fishing with john「14.8℃カマクラ」リリース決定

気が付けば11月になっており、気が付けばその11月も終わろうとしているのです。早いのです。年末になり張子業が忙しくなるのと同時にfwjの新譜にまつわるあれやこれやも進行していて、毎日ひーひー言いながら作業していたらあっという間に時が過ぎておりました。本当に声に出して「ひ〜」と言っていた瞬間も多々ありました。そしてこれからも「ひ〜」と声に出して言うのでしょう。年末です。
fwjの新譜なのですが、そんなたくさんの「ひ〜」を経てようやく完成し、12月16日に発売が決まりました。まだ作業が残っているし、現物も出来上がっていないので、何とも落ち着かない状況ではあるのですが、ひとまず目処が立ちました。いやーまさか今年出せるとは思いませんでした。コロナの影響で時間が出来たというのが一番大きいのですが。
今回のアルバムでは色々なミュージシャンとコラボしており、データのやり取りを交わしつつ曲を完成させていったのですが、10月中にはひと通り曲が揃いまして。あとは自分がミックスする曲を残すのみとなり、早朝に起きて作業し(徹夜が苦手なので作業を朝に回すのです)、何とか終えて草テンでもお世話になった上野洋さんにマスタリングをお願いして音源が完成しました。私の誕生日にデータが到着したので良きプレゼントとなりました。今回上野さんには数曲ミックスもお願いしたのですが、全部リモートで行ったので対面していないのです。コロナの状況が変わって行く中で「今回はリモートで行いましょう」と話し合ったのですが、本当ならスタジオで顔を合わせて作業したかったなというのが本音です。あれやこれや話しながら作っていく中で生まれる豊かさもありますからね。
音源が完成したら次はジャケ周りです。かくたみほさんに撮ってもらった膨大な量のミル坊ココ坊の写真の中からジャケ周りに使う素材を選ぶ作業にも時間がかかり、「これも良い」「おーこれも可愛い」「これなんか最高やん〜」と私の審査がカルピスの原液並みに甘いので、第五次審査くらい経ても候補が10数枚残っており、これは永遠にジャケ写が決まらないのではないかと危惧されたのですが、時間も迫って来て「えいっ、これだ!」とようやく決めました。結果最高のジャケ写になったと思います。ジャケ買いで1万枚くらい売れても良いのではないかと踏んでいるのですが、私の審査はやはり甘いのでしょうか。
タイトル文字はインスタで素敵な手書き文字をアップしているhoshiさん(molnのお客様なのです)にお願いしたのですが、かなり気合いを入れてくれて、わざわざ鎌倉の海を訪ねてイメージを作ってくれ、これまた結構な数の候補を書いてくれて、その中から選ぶ作業も時間がかかりました。なぜなら私の審査が孫を愛でる祖父くらい甘いせいです。しかし時間が迫っていたので「えいっ、これだ!」と決めました。結果最高のタイトルになったと思います。ちなみにタイトルの「14.8℃」はあやが昔アートディレクターのフルタヨウスケさんとコラボして出版したZINEのタイトルから借りました。「人々が春を感じ始める気温」なのだそうです。molnにまだこのZINEの在庫があるので、関連商品として売ろうという商売目線も少しあるといえばあるような気もします(笑)。
素材を揃えたあとはデザインなのですが、草テンでもお世話になったhooplineりえさんが忙しく、なかなか作業に入れないという状況で。その間に流通の方と連絡を取り合い、12月発売というスケジュールを決めたのですが、この日入稿しないとヤバいですよという前日にりえさんからデータが届き。天才デザイナーの面目躍如、最高のデザインに仕上げていただいてギリギリ間に合いました。プレスされた盤が届く日程も納品ギリギリなので綱渡りが続いている状況なのですが。裏ジャケも盤のデザインも最高に仕上げてくれて本当に感謝です。
今回CDには結構な文字数のライナーノーツを執筆したのですが、それを書くのも時間がかかり。早朝に起きてせっせと書いておりました。ぜひそちらを読んでいただけたら嬉しいです。
アルバム制作にまつわる話は尽きないので、また追ってここで書いて行くと思います。取りあえず発売が決まったというご報告です。fwj11年振りの新作です。


fishing with john
「14.8℃カマクラ」
2020年12月16日発売
 ¥2500(税抜き)


1.掌のラストシーン
2.14.8℃カマクラ
3.歩けリリー
4.マチネの庭
5.ジャングルジムで鯨釣り
6.5月は猫のもの
7.猫時計27時
8.ガール初舞踏
9.草原ヘッドフォン
10.ソワレの海
11.翠雨のファーストシーン


アコギと鍵盤ハーモニカで叙情的なメロディを奏でる、五十嵐祐輔によるソロユニット11年振りの新作。外部ミュージシャンとのコラボで織りなす、美しきささやかなる日々を謳う11曲。


Guest:
LASTorder/G.M-KAZ/aCae/itoken/pasadena

 


Produced by 五十嵐祐輔
Mastered by 上野洋


Photograph かくたみほ
Title yuko hoshi
Design 吉積里枝(hoop line)


Amazon、全国のCDショップでお買い求めいただけます。
サブスクは旧作含め近く解禁予定です。
どうぞよろしくお願いいたします!

 

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猫たちの目線、fwjジャケット撮影

気が付けば10月なのです。早いのです、時の流れは。ありがたいことにコロナの影響で落ち着いていた仕事も7月辺りから徐々に増えて忙しくなり、9月は「あれ?ひょっとして自分プチ売れっ子なんじゃない?」と思われるくらい仕事に追われ、あわあわとそれらをこなしつつ、合間に山田バンドのリハーサルや配信ライブもしつつ、fishing with johnのレコーディング作業もしつつで、馬車馬の如く働いているうちにあっという間に過ぎ去ってしまいました。そして今年もあと3ヶ月で終わりという。本当に早いのです。こんなに時の流れが早いのはきみのどーるちぇあーんどがっぱーなーの香水のせいだよ〜とか歌ってみたくなるのですが、この歌のそこの部分しか知らないし、きっと香水のせいではないのでしょう。
まだ完成していないfwjのアルバムですが、何があるかわからないご時世、先にジャケット写真とアーティスト写真を撮ってしまおうと先月カメラマンかくたみほさんに我が家に撮影に来ていただきました。fwjのファーストからサードまでかくたさんに撮影してもらっているのですが、ファーストのロケを行ったのが2003年の暮れのこと。だいぶ時が経ったけどお互い変わってないね的な感じで緩やかに撮影が始まりました。スピッツのジャケット写真で有名な彼女ですが、何と言っても名猫ジャケであるきのこ帝国の「猫とアレルギー」のジャケットを撮影した方なのです。今回猫ジャケにしたい旨を話したら「私動物の撮影が得意で、ムツゴロウならぬカクゴロウって呼ばれてるから」との力強いお返事。
撮影されるとは知らずのほほんとしていたミル坊は見知らぬ人が来た!とソファー下に隠れるも、ココ坊はかくたさんの荷物の匂いを嗅ぐなど興味津々の様子。ならばまずはココ坊から攻めるかとシャッターを切り始めるカクゴロウ先生。今回警戒されないようシャッター音がしない設定にして来たそうで、さくさくと撮影が進みます。今回カメラ目線を撮りたいと希望していたので、おもちゃや全猫が好きでお馴染みのちゅ〜るなどを餌に「ほら、ココ坊こっち向いて〜!」と視線をカメラに向かせ、背景を変えつつ何パターンか撮りました。「昼間だと黒目が小さいんだよね〜」と目の大きさにも配慮するカクゴロウ先生。流石です。その後ミル坊もようやく慣れて来たので、抱きかかえてミル坊の目線も撮影。ミル坊とココ坊どちらを表のジャケットにするのか悩むところだねと話すと「ジャニーズみたいにジャケット2種類にしたら?」とカクゴロウ先生。果たして表のジャケットはどうなるのでしょうか。
その後猫たちを抱いてのアーティスト写真も撮影し、家の中で遊んだり寛いだりする猫たちを撮影し。合間に我々もコーヒー飲んだりして休憩していたんですけどね。逃げ回るミル坊と違ってココ坊は「こんなショットはいかがかしら」とサービス良く色々なポーズをしてくれました。ついでにあやも一緒に入り家族写真も撮ってもらっちゃいました。どの写真をどこに使うかはこれから選別するのですが、良いジャケットになるのではないでしょうか。
一日中モデルをさせられて、次の日はふたりともぐったりと寝ておりました。よほど疲れたのでしょうか。fwjの11年振りとなるニューアルバム、完成間近です。


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窓の向こうのサムシングニュー

先日行われた恵比寿天窓Switchでの山田稔明with夜の科学オーケストラの無観客配信ライブ「夜の科学vol.60-窓の向こうのサムシングニュー」ですが無事終了しました。たくさんのご視聴どうもありがとうございました。7月以来の配信ライブでしたが、楽しく演奏出来ました。山田氏から「9月にも予定入れてるんだよねー」と聞かされ「へー弾き語りでやるんだー」と思ってたら、「バンド編成でやろうと思うんだよねー」「今回音源化されてないセットリストにしようと思ってるんだよねー」「実は新曲もあるんだよねー」と次々とだよねーラインが到着し。「サブタイトル何か良いのない?brand new seasonみたいな新しい区切りなんだけど」と言われたので、まさにそれは「夜の科学」の歌詞の「きっとそこにあるサムシングニュー」ではないかと返したら彼の中でピンと来たらしく、すぐに「窓の向こうのサムシングニュー」というサブタイトルが決まりました。会場の天窓にかけたタイトルです。60回目にして夜の科学の原点に立ち返ったのではないでしょうか。
リハーサルの2日前に新曲の譜面と音源が届くといういつものパターンに「だよねー」と思いながらリハーサルに臨み。今回初めて演奏する「長距離ランナー」という曲はまさにランニングを習慣にし始めた自分には何だかぐっと来るものがありましたね。音源未収録曲っていつの間にこんなに増えていたのかとセットリストを見て思いつつ、何年も長距離をランし続けて来た積み重ねがこれなのだなとこれまでの彼の道のりを振り返った次第です。
そして迎えた本番ですが、お客さんのいない会場でのライブも2回目となると慣れたもので、割と落ち着いて演奏出来ました。テレビ中継ってこんな感じなのかなと思いつつ。本番前に山田氏と近藤さんが出演するオンラインイベント「みんなイヌみんなネコ」用に演奏を収録したのですが、それこそテレビ収録みたいで楽しかったですね。テイク2を撮ったりして。2曲バンドで演奏したのですが、イベント内で放送されるそうですので、ぜひ見ていただけたらと思います。
今回もお客さんのコメントを見ながらの演奏で、感想がリアルタイムで可視化されるのって凄いシステムだよなと思いながらネットの向こうのお客さんの拍手を目で眺めておりました。やたら「近藤さん〜」と近藤さんファンの熱い声援ばかりが続き、山田氏が「近藤さんばっかりやな!」とツッコミを入れておりましたが、あまり近藤さんにばかり声援が集中して可哀想だからしょうがねえ五十嵐にもひと声入れてあげっか、みたいな優しさによる「五十嵐さ〜ん」コメントを目撃し、野に咲く花を見付けたような温かな気持ちになりました。その花摘んで帰りますありがとう、と思いながらベースを弾いておりました。「長距離ランナー」は「45歳からのヒット曲」がテーマとのことで、まさに45を過ぎてランを始めた自分にぴったりではないかと思いながらランの気持ちで演奏しました。「notebook song」や「吉祥寺ラプソディ」はツアー先の大阪でも演奏したなあ、あれ何年前だっけと回想しつつ、思えば我々は山田氏の長距離ランニングに並走してこれまで付いて来たのだなあとつい己の道のりも振り返ってしまいましたね。そしてここからまた始まるサムシングニューなのです。
今回開演が20時半からで、夕方からリハーサルして終わったのが22時でそこから片付けして、早い時は23時には寝る朝型生活をしている自分には夜更かしだよねーという感じでしたが心地良い疲れでした。メンバーと雑談して近況を話したりしながら「何はなくともみんなが元気でいればね」としみじみ思った次第です。ネットの向こうのお客さんたちも元気でいてくれればと思いつつ。次回恵比寿天窓Switchでのライブはすでに12月に決まっております。その時は直接お客さんと会えたら良いなと思いつつ帰路に着いた私です。窓の向こうのサムシングニュー。

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9月のランニングマン(猫は膝)

気が付けば9月なのです。早いのです。そして「9月になったらすぐ大晦日」というプチ鹿島氏の名言がよぎるのです。もうすでに年末を見据えながら残暑を過ごしています。

8月は毎日海辺をランニングし、仕事をして猫を可愛がり、「北の国から」を見ているうちにあっという間に過ぎました。海辺での日焼け止めなど効かぬ猛烈な日差しにすっかり焼けて黒くなりました。その間ドラマ内で純くんは横山めぐみ宮沢りえと付き合い別れて、最終的に内田有紀と付き合っておりました。実生活でもふたりは結婚したのだから純くんはモテるのだなーと想いを馳せていたら何と純くんコロナ罹患だとのこと。五郎さん高齢だし黒板家は大丈夫かなとつい北の国から世界線で現実を見てしまいましたが。吉岡秀隆(50)という表記を見てその年齢に驚いたのですが、そりゃあ年も取るはずだよと己を顧みた私です。
私のソロユニットfwjのアルバム作りも地味に進んでいます。先週短い夏休みをいただき、その間も作業を進めておりました。ちまちま自宅で録音とミックス作業をしています。昼間こそ暑いですが、夕方にはすっかり秋めいて虫の音が鳴り響くので、自ずとマイクがその音を拾ってしまうのですが、録音していたらギターの持続音と虫の音が一緒になって良い感じだったのでそのまま使うことにしました。その時録っていたのは「文を書く(猫は膝)」という曲で一番新しい曲です。夏の終わりの虫の音が入っています。一番古いのは2011年頃の曲ですかね。何しろこの10年の間、断続的に制作していたのです。何とか年内に出せたらなと思っているところです。それこそ猫を膝に乗せて作業しています。
毎日海辺の入口に門番のように座っているおばあさんがいて、何するでもなくただそこにいる様子が猫のようで密かに猫おばあさんと呼んでいたのですが、毎日のように顔を合わせるので「こんにちは」と挨拶を交わすようになりました。高齢の猫を人間化したらこんな感じなのかなという可愛らしいおばあさんで、見たらサーファーとか犬の散歩の人たちと挨拶や会話をしているようなので、それを楽しみに海辺の入口に座っているようなのです。猫っぽいとはいえおばあさんの頭を撫でたり喉元をゴロゴロ言わせたりするわけにもいかず、ただ挨拶をするだけなのですが、私の中では街に数いる猫の1匹と認識しています。猫のように海辺に佇む生活ってある意味理想な気がします。佇むという行為を一生懸命に行う猫を見ていると生きているなと思うのですが、おばあさんも猫のように生きて海辺の景色の一部になっているのです。もしスケッチブックがあったらおばあさんを猫の姿に描くことでしょう。嗚呼、美しき光景哉。また私と同じように毎日のように海辺を走っているランナーたちがいて「あ、今日は赤パンがいる」「あ、緑のシャツのおばさんだ」「今日は黒のおじさんもいるのか」とだいたい着ている運動着の色で認識しているのですが、それで言うと私は「青いやつ」と呼ばれているに違いありません。青いアシックスのシャツで走ることが多いからです。青いやつは戦隊物では主役のレッドに次ぐサブながらクールな役どころなので、そんな心づもりで走っています。ブルーなラン。
波に乗るサーファーの姿を見ているとサーフィンをする人生も悪くないと思うのですが、その波に乗れなかった自分というものも意識するものです。同じくスケボーに乗らなかった自分も。ヒップホップを聴きながらスケートボードに乗ることはない自分と、サーフミュージックを聴きながらサーフボードに乗ることのない自分をつい省みてしまいます。伝説のサーファーの驚異的な波乗りをYouTubeで見ながら夏の終わりを感じています。

9月、私は何とか元気です。

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8月のランニングマン、北の国から

気が付けば8月なのです。早いのです。永遠に明けないと思っていた梅雨も明け、あっという間に猛暑に突入、「みなさんこれが夏ですよ!」とばかりに2020サマーは颯爽とやって来てどすんと居座り、蝉を鳴かせ気温をぐんぐん上げアイスクリームやビールの売上げを伸ばしているのです。この勢いたるや。しかし今年は花火大会も夏祭りも盆踊りもないし、そもそも大人数が集まれないという特殊な状況、ただただ猛暑の中を滝のような汗をかいて日々を過ごしています。いかがお過ごしなのでしょう、みなさまにおかれましては。

7月から始めたランニングですが、三日坊主にならず毎日続けており、すっかり習慣となりました。朝の海はサーファーや犬の散歩の人や海水浴の人などちらほらいますが、海の家もないし、例年に比べたら静かなものです。あやは海に足を浸けながら歩いているだけですが、私は浜辺をただただストイックに走っています。波の音を聞きながらひたすら走っていると「頑張ってる俺」というオーラをまとえるので気分が上がるのです。デパートに行っても「頑張ってる俺」というオーラは売っていないので、こうして自力で得ないといけないのです。日差しが強くなるときついので、最近は朝5時に起床し暑さが控えめな時間帯に走るようにしています。海辺を走るために朝5時に起きる健康的な生活になるとは思いも寄りませんでした。コロナ禍で良かったことのひとつかもしれません。

海辺をランした後は家に帰る途中にある自動販売機で水を買って飲むのですが、よくよく販売機を見ると個性的な飲み物が結構あり。「え、ナタデココ入り炭酸グレープジュースて何?」とか「この迷彩柄にスポーツカーに美女のパッケージの栄養ドリンクってどんな味なん?」とか「ネクターってまだこのデザインで売ってるんだ?」とか発見があって面白いのです。毎日気になった物を買って飲んでいるのですが、まさか販売機がこんなエンターテイメントになるとは思いも寄りませんでした。ネクターのピーチ味なんて飲んだの30年振りとかじゃないかしら。レモンスカッシュを飲んだ感想が「アルコールのない檸檬堂みたいで美味い」だし、ド派手な栄養ドリンクは「ほぼオロナミンCと同じ味」だし、「めっちゃケミカルな味だな!」「駄菓子ドリンクだな!」とか言いたい放題言いながら販売機ドリンクをあれこれエンジョイしています。夏限定クリームソーダを飲んだ時は夏の入道雲と蝉の声と相まって「ああ、これ夏の味だなあ」と何だかノスタルジックな気分になりました。汗だくで海から帰る道で飲んだクリームソーダ。コロナ禍の夏の思い出が販売機の飲み物で彩られて行くのです。それもまあ一興なのかもしれません。
あと習慣といえばここ最近は毎日ドラマ「北の国から」をFODで見返しています。テレビレギュラーシリーズから特番シリーズまでかなりのボリュームなのですが、毎日黒板家の物語に「純、そりゃないよ〜」とか「草太兄ちゃんデリカシーないな〜」とかツッコミを入れながらも泣きながら見ています。当時ビデオで何回も繰り返し見ていたのでだいたいのシーンは覚えていたのですが、忘れている箇所も多く、「こんな繊細な演出が成されていたんだなあ」とか感心しながら見ています。おそらく今の私は父親の五郎と同じくらいの年齢だと思うのですが、五郎に全然感情移入出来ないのは田中邦衛に貫禄がありすぎるからでしょうか。号泣必至の「蛍がお母さんの乗ってる電車を追いかけて手を振るシーン」や、個人的ベストの「純と蛍が靴屋に古いスニーカーを探しに行きお巡りさんに注意されるも事情を話したら一緒に探してくれたシーン」などにさめざめと泣いている2020サマーです。しかし登場人物がこれほど煙草を吸うドラマも珍しいのではないでしょうか。煙草の演出に時代を感じました。昔はたくさんの大人が煙草を吸っていた気がします。子供の頃に感じた大人が集う時の煙の匂いを思い出しました。「子供がまだ食べてる途中でしょうが!」や「誠意って何かね」などの名台詞も久々に聞きました。当時とんねるずがパロディをやっていた印象が強いのですが、自分のなかでは昭和という時代がこのドラマに詰まっているような印象です。「北の国から」をきっかけに己の昭和に想いを馳せている夏です。
GO TOで旅行を推奨しつつ金にならない帰省は自粛しろという。オリンピックをまだやるつもりの昭和のおじさんたちはこの猛暑と感染拡大を押さえられていない現実を見て何を思うのでしょうか。見たいものしか見ていないのでしょうか。捨てられた資材だけで家を建て、およそ経済活動から外れた生活をしている五郎の姿を見て何だか考えさせられるものがありました。

昭和の夏とも平成の夏とも違う、これまでにない令和の夏を毎朝海辺を走りながら過ごしています。拝啓けいこちゃん、猫たちは元気です。

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アオハル探偵物語

先日の早朝、ゴミを出そうと家を出たら数メートル先の河村さん(仮名)のお宅の前に見知らぬ車が止まっており。果て、こんな朝早くに誰が訪ねて来たのだろうと思って後ろから見ていると運転席から煙がぷかぷかと出ているのです。運転手が煙草を吸っているのです。夏の朝の爽やかな空気を台無しにするようで「やれやれ誰だよ煙草吸ってるのは〜」と少しいらつきながら車を追い越しゴミを捨てて。踵を返して戻ろうとするとその車がこちらに向かって来るのです。運転席には若い男の子がひとり乗っており、これから帰るところなのでしょうか。その車を横目に見送り河村さんのお宅の前をふと見ると、ひとりの女の子が一心不乱に手を振ってるのです。先ほどすれ違った車に向かってバイバイをしているようなのです。その女の子は河村さんの娘さん(多分大学生くらい)で、おそらく自宅まで男の子の車で送ってもらったのでしょう。ゴミ捨てを終えて戻って来る私のことなど眼中になく、その先の車を見送りながら懸命に手を振るその姿はまさに恋する女の子のキラキラに満ちており。「ははーんこれは彼氏に自宅まで送ってもらっての朝帰りだな!」と恋愛探偵五十嵐はピンと来たのですが、いかんせん寝起きでよれよれのトレーナーを着た小汚いご近所のおじさん状態の私です。朝からふいにアオハルな光景を目にして面食らってしまい、娘さんとすれ違い様に「お、お、お、おはようございます!」とDJのスクラッチのような不審者然とした挨拶をしてしまったのですが、その娘さんが素晴らしいのは近所の小汚いおじさんa.k.a恋愛探偵五十嵐に朝帰りを目撃されたのに、堂々と彼氏の車が見えなくなるまで手を振り続けていたことなのです。その姿を見ながら私は「嗚呼、彼女は本当にあの彼のことが大好きなのだなあ」と朝から感動してしまったのでした。女の子が好きな彼氏を見送る姿ほど美しいものがあるでしょうか。しかもキラキラと輝く夏の朝に。

夏の夜のストーリーをふたりで作りあげた帰り道の朝。彼女の自宅前に車を止めて「昨夜は楽しかったね」などと思い出を語る彼氏。助手席にはまだシートベルトを外したくない、名残惜しい気持ちの彼女。運転席でおもむろに煙草を吸う彼。昨夜からの特別な空気をまだ味わっていたいという気持ちから煙をくゆらせたのでしょうか。夏の朝の空気に消えて行く煙。魔法のようなふたりの物語は永遠だよね、インスタのストーリーのように一日で消えたりしないよね、と切ない想いの彼女。彼氏は「じゃあ俺、バイトがあるから帰るね」とエンジンを入れ、彼女は車から降りて「気を付けてね!」と別れを告げるのです。恋するふたりのキラキラでサイダーのように弾ける朝の空気。彼氏の車が去って行く後ろ姿に向かって「じゃあね〜!」と手を振る彼女。手がちぎれんばかりに一生懸命に手を振り、この気持ちって本当(リアル)だよね、と問う彼女。その横をよれよれのトレーナーを着た寝起きの小汚い近所のおじさん(a.k.a私)が通り過ぎて台無しにしてしまったのです。今なら言えるのですが。その気持ち本当(リアル)だよと!
私だったらご近所さんに朝帰りを目撃されたらバツが悪いので、「じゃ!またラインするから!」とそそくさと下車して、もし小汚い近所のおじさんとすれ違ったら「おはようございます…」と人間に感知されぬレベルの周波数の小さな声でささやき、忍びの者の如く去ってしまうだろうと思ったのですが、彼女は車が見えなくなるまで堂々と手を振っていたのです。もうおじさん泣きそうです。キラキラに押しつぶされて。
最近FODにてドラマ「北の国から」を見直している私なのですが、運転席で煙草をくゆらせる彼氏とか、見えなくなるまで手を振る彼女とかの描写がリアルに「北の国から」の演出のように思え、本当(リアル)の恋愛ってこんなドラマチックなのだなあと感心してしまった次第です。

ご近所さんa.k.a恋愛探偵五十嵐としては今後も河村さん(仮名)の娘さんの恋愛事情を注視して行く所存です。コロナ禍で会えなかった恋人たちには辛い時期だったことでしょう。手を振って見送る彼女たちに幸あれと祈るばかりです。そんな7月の終わりです。f:id:fishingwithjohn:20200727211331j:image
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