パラソルライフ

6月にこんな大型の台風が来ることがあるのか、
間違って早めに来てしまったうっかりものではあるまいかと思うも、
うっかりなどという言葉の似合わないかなりの強風と豪雨で、
どどう、などと宮沢賢治風の擬音を横に書き足したくなったのですが、
こんな時期に来ることがあるんですね、台風。
一体どれだけのビニール傘が死亡に至ったのか計りかねますが、
どんな台風にも耐え得るビニール傘の開発が急がれるのではないかと思ったりする次第です。
報道番組はわざわざ台風の現場に赴いてビニール傘が壊れる映像を流すのが常ですが、
ああいう台風の凄さを伝えるリポートの現場に駆り出されるビニール傘は可哀想ですね。
「さあ人々を雨から避けるべく働くぜ〜」と意気揚々と市場に出たのに
いきなり新品のまま台風リポートの現場に駆り出されて。
「え、まじで?俺一瞬で死んでまうやんか〜!」と嘆く間もなく現場に出され、
強風により一瞬で骨は折れビニールはおちょこ状態になり。
「ああ、もっと長く働きたかったなあ〜」と想いを残しながら死んでゆくのです。
台風の現場リポートさえなければ。
コンビニで綺麗なOLさんか何かに買われてそのビニール傘ライフをスタート、
彼女にぎゅっと取っ手を握られ、時にはぴったりと身を寄せられ、
休日に一日中買い物に付き合うなど雨の日の全ての行動を共にし、
会社でへまをして落ち込む日も逆にうまくいって足取りの軽い日も温かく見守り、
時には居酒屋で違う人に持って行かれそうになるなどの危機も乗り越え、
彼女が高級傘に乗り換えようとするところも何とか阻止し、
強風の日には骨が折れぬよう細心の注意を払いながら長く彼女の元で過ごし、
ある日女子会の帰り道か何かに小雨の空を彼女と共に見上げながら、
彼女の「こんな日々も楽しいけど、何かちょっとさみしいナ」なんて独り言に対し、
「俺がずっとそばにいるよ!俺が君を全ての雨から守るよ!」と、
そぼ降る雨の夜に彼女をぎゅっと抱きしめるかのように頭上に腕を広げ雨を避ける、
なんて素晴らしき愛に満ちたビニール傘人生が待っていたかもしれないのです。
それがまさか台風で瞬殺とは思いも寄らなかったでしょう。
報道番組のお約束に駆り出されて。
そんな風にビニール傘ごとに人生があるのだと思うと愛おしくなったりもするものです。
台風の次の日に街のそこかしこに溢れるビニール傘の残骸を見ると
人生の終着ってこんなものなのかと哀愁の念を覚えたりもするのですが、
そんな風に綺麗なOLさんと蜜月を過ごした後に
彼女を台風から守るべくして壊れた傘もいるかもしれないと思うと、
頑張ったんだな、良い人生だったなと声を掛けたくもなるのです。
人生いろいろ、ビニール傘もいろいろなのですね。


そんな私たちのビニール傘たちのいろいろな人生を彩る音楽の宴が催されます。
突然の台風に見舞われたりするこの6月の下旬の土曜日ですが、
たまには生演奏など聞きながらゆっくり過ごされては如何でしょうか。
等々力の閑静な住宅街を抜けたところに隠れ家の如く存在する「巣巣」にて、
我々fwjがライブを開催致します。
共演はワールドスタンダードのメンバーでもあり、
最近ではハンバートハンバートなどのサポートでも活躍するSSW安宅浩司氏、
さらにはドラマーとしてトイ楽器奏者としてソロ活動の他d.v.dやharpyなどのユニット、
トクマルシューゴ相対性理論栗コーダーカルテットなどのサポートでも活躍するイトケン氏を迎え、
ゆっくり音楽を楽しめる週末をご用意致します。
山田稔明バンド(夜の科学オーケストラ)のメンバーが集うというコンセプトでもありますゆえ、
当の山田氏も会場に現れ、合流してくれるような予感がしています。
迷ってる方、ぜひ自身の背中をぽん、と押してぜひお気軽に遊びにいらして下さい。
世界が開けるかもしれません。
6月23日、我々と合流しましょう。


6月23日(土)等々力巣巣
「オーケストラの休日」
開場18:30 開演19:00
料金2800円(お茶とダンラナチュールのお菓子つき)
出演: fishing with john/itoken/安宅浩司
チケットのご予約 巣巣 http://www.susu.co.jp/news/p902.html