誌と音楽と珈琲と時間と

もう先々週のことになりますが、巣巣にて開催された15周年記念イベント「詩と音楽と珈琲」に朗読と演奏で参加させていただきました。たくさんのご来場をどうもありがとうございました。とても豊かな時間を過ごさせていただきました。
この日は巣巣店主である岩崎さんと近しいミュージシャンや作家さんなどが一堂に集まり、自作の詩を朗読したり歌ったりして巣巣の15周年を祝うという趣旨のイベントで、我々草テンメンバーは早めに会場入りし、ステージや客席作りなどを手伝いました。(ミルブックス藤原さんも出演こそしなかったものの、ステージ作りから手伝ってくれました。)早くもお客さんが外に並び始める中、山田氏も到着しPA周りなど色々チェックしてくれまして。時間もなく全員のリハも出来ない状況ながらもセッティングしてくれました。(山田氏はこの日PAスタッフとして演者のマイクを調整したりと大活躍でした。)
そして岩崎さんの挨拶からイベントはスタートし。ちょうど巣巣ではやまぐちめぐみさんの原画展が開催中ということもあり、やまぐちさんに向けて書かれたという言葉をゆっくりと語る岩崎さんの声が会場に満ち、とても良い雰囲気の始まりとなりました。次いでこの日コーヒーを淹れてくれたアアルトコーヒーの庄野さんが自作の詩を朗読してくれて。庄野さんらしい男っぽい詩の内容にぐっと来ましたね。詩の中に「お昼はかき揚げそば一択」というフレーズが出て来て、ちょうどその日の昼にかき揚げそばを食べたばかりの私はそのフレーズが印象に残り、イベント終了後も自宅にて「ハイボール一択」「お風呂一択」「ミル坊一択」などと、やたらと引用しておりました。ヒサマツエツコさん、イシカワアユミさんの優しさの伝わる朗読やキッチンシスターズの2人の絵本の朗読に癒されているうちに第一部が終了し。
庄野さんの美味しいコーヒーをいただきつつ始まった第二部では高橋徹也さんが登場し。ガットギターの弾き語りと朗読で我々を魅了してくれました。彼の朗読を聞きながら彼の詩の舞台となる世界へと旅に出たくなりましたね。その風景を現実に目にしてみたくなるというか。最後の曲では草テンからボーカルのあやもゲストで参加し、タカテツさんとデュエットしておりました。後で「ちょっとギター間違えちゃいましたね」と言っておりましたが、タカテツさんが照れ笑いしながらデュエットする様子が楽しそうでとても良い雰囲気でした。
続いては近藤研二さんが登場し。近藤さんは朗読はしませんでしたが、代わりにガットギターの独奏という形で語ってくれました。お客さんのほとんどが近藤さんのインスタで彼の愛猫のモイとウニを見ていると思われ、曲の解説で「こっちがモイで、こっちがウニね」と近藤さんが猫に例えると客席がうんうんとうなづくという、謎の阿吽の呼吸が生まれておりました。近藤さんはギタリストとしても一流ですが、作曲家としても本当に美しいメロディーを書くなと聞きながらしみじみしてしまいました。
続いては高橋久美子さんが登場し。自作の詩をたくさん朗読してくれました。時にはピアノを鳴らしたり、グロッケンを鳴らしたりしながらのその語り口は優しいけどとても力強く、言葉がすいすいと耳に入って来るのですよね。抑揚や緩急の付け方など、さすがラジオ番組のパーソナリティーは違うなと喋りのプロの語りに感動してしまいました。オノマトペの柔らかさなど言葉のチョイスも彼女の人柄が伝わって来て、ずっと聞いていたいなと思わせるのです。何とここでも草テンからあやがゲスト参加し、彼女と連詩を交互に朗読しておりました。本番の2日前に久美子さんから詩が届き、そこから何ターンか返事のようにお互いが詩を書いて当日ぶっつけ本番という形でしたが、とても良い連詩になっておりました。まさに手紙のやりとりのようで面白かったですね。昔チャットモンチーのコピバンをやっていたというあやからしたら嬉しい共演だったことでしょう。
そして続いては山田氏が登場し。この日は裏方のような働きでイベントを盛り上げていた彼ですが、ステージに上がってもさすがの盛り上げ方なのです。熟練の弾き語りと爆笑トークで会場を沸かせておりました。山田氏と岩崎さんとのこれまでの時間や思い出を振り返ったり。(そうそう、この日の全体のテーマが「時間」でみんなその題材で詩を書いて来たのでした)思えば私が岩崎さんと知り合ったのも山田氏がきっかけだったのです。その後バンドを組むことになるとは夢にも思いませんでしたが。岩崎さんからのリクエストでさだまさしのカバーなど歌ったり、この日一番の山場となりました。
続いての登場はけものさんで。この日はトオイダイスケさんとのデュオでの出演でした。ボーカル青羊さんのエレキギターを持つ姿がとても絵になってかっこいいのですが、鳴らされる音もかっこよく、最高にロックでした。狙って出せない拙さというか、初期衝動というか。ああいうギタープレイは自分には出来ないなあと遠い目をしてしまいました。最後には草テンメンバーが全員ゲストで参加し、けものさんとセッションしたのですが、ただただ楽しかったです。すっかりけものファンになってしまった私はアナログ盤も買って青羊さんにサインもしてもらいました。(ただのミーハーです。)
そしてラストは草テンの出番となり。あやに続いて私も「手紙」という自作の詩を朗読したのですが、「迫力があった」「すごく男っぽかった」などと演者の方々にたくさんリアクションをいただいたので、語りがいがあったというものです。大阪から来たお客さんに「五十嵐さんの詩が一番ぐっと来ました!すごく良かったです!」と熱く感想を言われて嬉しかったです。その後草テンで2曲演奏しまして。レコーディングばかりしていたのでライブは久々だったのですが、楽しく出来ました。最後岩崎さんが草テンの演奏に合わせて朗読したのですが、まさに巣巣15周年を振り返る内容で、彼女らしく壮大でとても良かったですね。お店を15年も続けるというのは大変なことです。店主岩崎さんの紡いで来た時間に演者やお客さんが寄り添うような、とてもピースフルな空間になっていたと思います。長丁場でしたが、思い出深い一夜となりました。最後まで見ていただいたお客さんに感謝です。
終演後には巣巣で打ち上げをしたのですが、あゆみ食堂さんの料理がどれも美味で、思い出にさらに味がひとつ乗っかりました。色々な話をして楽しい宴となりました。草テンのCDも発売になるし、岩崎さんのこれからの時間も充実したものになるのでしょう。取りあえず15周年、おめでとうございますということで。