猫と俳句

仔猫が我が家にやって来てからというもの、生活の中心に猫が居座るようになってしまい、「かまってよう〜」とみゃーみゃー寄って来る時は勿論「よしよし」とかまってあげ、「今は別に放っておいてくれて構わないにゃん」という時も「よしよし」とかまってあげ、「今は眠いので寝ます〜」という時も「よしよし」とかまってしまい、結局四六時中かまってしまうのであり、猫の引力たるやおそろしいものであるなと実感せずにはいられません。言うなれば24時間よしよし状態です。部屋に入ると「うわあ戻って来たあ〜」とフルテンションでこちらに駆け寄り、足元にすりすりとまとわりつき、ひょいと抱きかかえるときょとんとした大きな目でこちらを見て「みゃー」と鳴くそのイノセントな眼差しは世界のキュートネスを凝縮したかのようであり、「お前の可愛さは何なのだ」と永遠に解けない問答を投げかけるしか成す術がないのです。猫じゃらしやネズミなどのおもちゃを見せると「こんなものは初めて見た!」と毎回初見の如く驚き、何回か追いかけたりもてあそんだり興じるのですが、途中で飽きるのか追いかける情熱を失うのか、そっぽを向いて「僕もう飽きたなあ」みたいな顔をするので、「あきらめないで!」と真矢みきの如きテンションでおもちゃへの情熱をけしかけると再び「こんなものは初めて見た!」みたいなテンションでおもちゃにじゃれつくので「お前、2分前にそれと遊んだばっかりやで」と教えてあげるのですが、やつはそんなことは気にせずみゃーみゃーおもちゃに興じては飽きて横になるを繰り返しているのです。斯くも自由な生き物がいようか、いやいないと反語を用いて協調したくなるほどの自由さで我が家に暮らす猫を見ながら7月を迎えました。もう夏です。



ちょっと前の話になりますが、俳人の堀本裕樹さんと知人を介して知り合う機会があり、一緒に食事をさせていただきました。堀本さんはピースの又吉直樹さんの俳句の師匠であり、出版されたばかりの又吉さんとの共著「芸人と俳人」も話題を呼んでいる気鋭の俳人です。私は穂村弘さんなどの短歌には前々から興味があり、自分でもそれらしきものを嗜んだりはしていたのですが、短歌よりも短く季語を入れなければいけない俳句はハードルが高く、自分には無理だなと思っていたのですが、それこそ「芸人と俳人」を読んで「これは意外にやってみたら面白いかもしれない」と認識を新たにしたのでした。この本では俳句の成り立ちや作り方などが初心者にもわかりやすく解説されており、また又吉さんの理解度や句を深く読み込む感性の鋭さが俳句の魅力を伝えるのにかなり役立っており、読むと俳句を嗜んでみたくなるのですよね。堀本さんは穏やかで優しい方で、俳句初心者の私にもわかりやすく解説をしてくれ。又吉さんについても「テレビで見るあのままの方ですよ」と又吉ファンの私に色々話してくれました。(単なるお笑い好きのミーハーな自分が何だか恥ずかしかったですが。)堀本さんとは鎌倉で句会を催せないかという話になり、何とか実現出来たら良いですねという話になりました。575の17文字で宇宙並みの広大な世界を表現出来る、古来から伝わる俳句という魅力的なコンテンツをぜひたくさんの方と共有したいものです。堀本さんには取りあえず著書にサインをしていただき(またミーハーな自分!)、句会の実現について約束をしました。我々が感じる細かい機微を広大な世界の事象を575に落とし込む俳句に挑みたいと思っている私です。
猫にかまけている私に俳句など作れるのでしょうか。果たして。

芸人と俳人

芸人と俳人