くちびるアラート、6月の赤

6月も後半に差し掛かり、越境移動も解禁されいよいよ街にもたくさんの人の行き来が見られるようになりました。マスクをしている者、マスクをアゴにかけている者(飛沫がアゴから出る特殊能力の持ち主かと毎回ツッコミたくなりますが)、マスクをせずに闊歩する者、様々ですがこのままだと第二波も必至かもなあと観光客で賑わう鎌倉の様子を見ながらぼんやり思ったりしています。経済を回さないと生きて行けぬので社会が通常モードに戻るのは歓迎でありつつも、どこかまだ違和感を拭えぬ己がいます。東京アラート解除後に感染者数も増加していますしね。そもそも都庁とレインボーブリッジを赤く灯して東京アラートって何やねんそれという話ですけどね。それっぽい名前付けりゃ良いってものではないでしょうに。こちとらそもそも売り上げ減って赤字だし、泣いて腫らした目は真っ赤だし、自身の身体に流れる赤い血潮をたぎらせながら必死に生き抜き決死の思いで日々赤い夕陽の到来を迎えているのです。私アラートは赤く発動しっぱなしなのです。女帝のアピールで赤く光らせてくれなくても充分赤いのです。「自粛要請するなら補償せよ」と赤いルージュの伝言を残したいくらいです。緩和は歓迎だけど本当に緩和して大丈夫なのかと懐疑的でもある微妙な心持ちのままです。

それにしてもアベノマスクを着用している者を街で一切見かけないという不思議さです。全世帯に配ってこれだけ世の中で目撃されないなんてことあるのでしょうか。部屋の片隅にそっと放置された無用の極みたるアベノマスクという名の我々の税金。その税金を他の用途に使えばもっとコロナ禍対策に役立てたのではと思いながら未開封のアベノマスクにホコリが被るのを見ている私です。ご本人は一応ホコリを持って配布したのでしょうけどね。
ところで赤いルージュといえばマスク着用が当たり前の昨今、口紅の売上げが不振というニュースを目にしました。確かに口周りは隠れて見えないから塗っても無駄だし、塗ったところでマスクに付着しますしね。でも逆にいざという時の勝負として口紅の価値が上がりそうな気もしますけどね。心を許す者だけに開放される口許。そこにしっとりと塗られた真紅のルージュ。このくちびるアラートを消せるのは貴方だけよと耳元で囁かれてくちびるへの接触を抗えぬ者がいるでしょうか。マスクの下に赤いくちびるを隠し持つレディが伝家の宝刀を抜く時。きっと恋のアラートが鳴り響くのでしょう。
そういえばたまに来るお客さんで片方の耳が聞こえにくい女性がいて、なるべく大きな声で接客するようにしていたのですが、先日なかなか言葉が伝わらない場面があり。その時はマスクをしていたのでひょっとしてと思いマスクを外して会話したらスムーズに通じるようになりました。その方は相手のくちびるを見ながら話を理解していたのですね。よく手話を使う方も手の動きと同時にくちびるの動きを読みながら理解すると聞きますが。マスクをしていると読唇術を使えないという弊害があることに気付きました。我々は言葉だけでなく顔の表情や口の動きでコミュニケーションを取っているのですね。目は口ほどに物を言うとは言いますが、口許も言葉ほどにメッセージを伝えているのです。
先日長らく自粛していた外食も久々に解禁し、知り合いと馴染みの店でワインなど飲んだのですが、お店で酒を飲み食事をして人と会話することがこんなにも豊かな時間なのかとはっとさせられました。我々が自粛をしている間に閉めてしまった飲食店もたくさんあることでしょう。なるべく無理のない範囲で行くようにしようと思った次第です。マスクのないコミュニケーションは心の距離を近づけるのです。

戻ったようで戻っていない、これまでと違う世界に生きている自分らを改めて実感している6月です。そして口許に意思を持って発信しなければ。我々の税金が勝手に企業に中抜きされたり権力者に私物化されたりしては堪りません。顔を真っ赤にして怒るべきなのです。ミル坊ココ坊を撫でながら赤ワインを飲みつつ思う私です。f:id:fishingwithjohn:20200623093556j:image
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