ポールを考察

「ポールマッカートニ−とアヴァンギャルドミュージック」
という本を先日読んだのですが、なかなか面白かったです。
ポールといえば「イエスタデイ」「ヘイジュード」の作者で、
甘口なヒット曲を書く王道メロウポップの人というイメージで、
元ビートルの中でも特に揶揄されることの多い人ですが、
(特に相方のレノンがロックなイメージで、
死後は神の域まで崇められてしまった感もあって)
でもこの本ではそのポールこそが
ビートルのなかでも特に
アヴァンギャルドへの傾向が強かったのだという
その知られざる実験性に光を当てていて、
興味深かったです。
ビートルズ時代における「トゥモローネバーノウズ」
「レボリューション9」、「アデイインザライフ
などの実験性あふれる楽曲の他、未発表のままに終わった
その他の革新的なトラックを挙げながら、
シュトックハウゼン、ジョンケージなどの多大なる影響などを
考察した内容や、同世代のアーティストや新しさへの
貪欲なる追求の強さはポールが一番だったという
証言など、ビートルズファンとしては興味津々でしたね。
他にもオノヨ−コとの和解(?)セッションや、
アレンギンズバーグとの交流、
スーパーファーリ−アニマルズとの
野菜を齧るサウンドでのコラボなど、
僕もよく知らなかったことに焦点を当てていて、
また改めてポールを深く聴いてみる気になりました。
特に今の耳で確かめたいと思ったのが
ユースとのユニット、ファイアーマンで、
ここではアンビエントテクノをやってるのですが、
僕、当時は「へー最近のポールはこんなのやってるんだ」
くらいの印象で、
周囲でも全然話題にならなかった記憶があるんですが、
その制作の状況を本書で読んでいて、
これはぜひちゃんと聴いてみたいなと思いましたね。
(残念ながら今は廃盤のようです)
あとビートルズサウンドをサンプリングして作った
リバプールサウンドコラージュ」も、
早速これを読み終わってから聴いてみたのですが、
(これは普通に入手できます)
これはまあ「1回聴いたらもういいです。」
な内容だったんですが(笑)。
それにしてもビートルズ時代からオクラ入りを余儀無くされてきた
これらポールのアヴァン仕事ですが、それもこれも
「イエスタデイ」を書ける人間にはそんな実験作など
作ってもらわなくてもいいっす、というファンや会社の声であり、
また自身のイメージによるもので、
実際ポールの名をひた隠ししなければならなかった
(先入観によって圧倒的に聴かれ方が違うわけです)
ファイアーマンや、リバプールコラージュ、なども
一般のポールファンは喜ばないわけで、
(でも日本では「ポールがアンビエントテクノに挑む」
みたいにポールファンに買わせる気満々な印象でしたが)
そこにポールの苦悩を見て、なんか可哀相だなと
思ったりしましたね。
ポールのアヴァン先駆けともなった、
ビートルズ時代未発表曲の「カーニヴァルライト」は
結局ジョージに最後まで反対されて
「アンソロジー」から洩れたそうですし。
なにやってるんだジョージは、
おめーのインドも収録されてるじゃねーか、
とか思ったりしますが(笑)。
そういやビートルズのレーベルのアップルは
実験作をリリースするザップルというレーベルも
同時に立ち上げながら結局
ジョージの変なシンセのやつとか(僕は大好きですが)、
ジョンとヨーコのおかしなやつとか(これも好きですが)
リリースするだけで終わったそうなんですが、
他にも朗読ものなど面白そうなものが予定されていて、
これが軌道に乗ってたらまたビートルズへの
評価も違ったのかもしれないとか思ったりしますが。
それにしてもレノンと別れたあとも常にコラボする相方を
探して道を辿ってきた、
ポールの音楽家としての生き方も改めて
そうだなあ、と感心させられましたね。
(嫁のリンダやマイケルやコステロなど様々)
僕個人的にリンダの生前の音源を集めた唯一のアルバムが好きで、
なぜかリ−ペリーと録音したポップなレゲエチューンなど
いい曲揃ってて、これはポールの家族仕事として
相当いい仕事じゃないかと思うんですが。
(そういえばポールの飽くなき新しいサウンドへの志向は
常に家族の声がきっかけである、という本書での
指摘もなんだか納得しましたが)
にしても、もう仕事しなくても悠々と暮らせる大金持ちなのに
いまでも新作出してワールドツアーして
新しい音楽に挑戦するその姿勢は
素晴らしいんじゃないでしょうかね。
(しかし大金持ちなんだからチケット代1万4千円も
取るなよとか思いませんでした?みなさん 笑)
そんなわけで改めてポールを聴いていますが、
でもやっぱり「ジャンク」とかのメロの綺麗なのが
グっときちゃうのよね(笑)結局。