建物考

今日、近くのガソリンスタンドのそばを通ったら
電気が消えて異様に暗く、建物ももぬけの殻で、
「ああ、このスタンド閉店したのか」
と驚いたのですが、
というのもつい数日前までは派手な看板や
風船などが飾られ、およそ潰れそうにない雰囲気を
存分に醸し出していたからであって、
それが急に機材類その他施設などがすべて
その敷地内から消滅しており、
何だか段階を踏まずに急に廃墟と化したかのような
気がしてしまって、
その異様な景色の変貌に不意をつかれてしまったのですが。
ガソリンを給油する機材(なんていう名称か知りませんが)、
洗車する機材(洗車機とでもいうのでしょうか)、
そういう類いのものすべて撤去された
いわば「入れ物」だけとなったその元スタンドの建物は
意外にシンプルで洗練されたデザインで、
「ああ、ガソリンスタンドってこんなにきれいだったのか」
とか気付かされたのですが、
廃墟は廃墟であり、
人気のない建物はかくも暖かみがないものかと
同時に驚かされもしたのですが。
何もなくなった建物は「死んでいる。」
という表現が実に似合うものだとしみじみ思ったわけですが、
そういう「死」が突然表出すると面食らうというか、
いつもあると思ってたものが突然消失することもあるという
当たり前のことに気付かされてはっとさせられますね。
まあでもまた新しい「中身」がすぐに現れて、
その新しい景色が日常と化すわけですが。
それにしてもガソリンスタンドもそうですが、
「あれ、ここ漫画喫茶になってる。」とか、
「あれ、ここのコンビニ潰れたのかー。」とか、
駅前など回転が異様に早い土地というのはあるもので、
そういう移り変わりというか、大げさにいうと
生と死の繰り返しを見かける度に
歴史が刻まれる感じというか、
その分、年を取ったという感じがついしてしまうもので、
ああまた季節が巡ったのか。
と感慨深くなるわけなんですが、
年末はそんなことを自然と考えてしまうもので
元スタンドのあった土地に新しい景色が現れたら、
その景色の一年をまた僕は過ごすことになるのだろうと
思ったりし、そしてまたその一年はどういう年になるのだろうかと
思いを馳せてしまったりする僕なのです。
しかしガソリンスタンドの存在していた建物はやはり後がまも
ガソリンスタンドなのでしょうか。
昔、さえない学習塾みたいなのが入ってた建物に
その後アダルトショップが入り、
かつて勉学を奨励していた建物が一年と経たず猥褻なる色に
染められたのを見た時はちょっと笑ってしまったものでしたが。
(そしてやがて哀しい。という感情になりましたが)
みなさんの街はいかがですか。