晩夏を飛ぶパーマン

昨夜はどういうわけか夢をたくさん見て、
そのどれもが目覚めた後も鮮明に記憶に残っていたので、
その残像を反芻しながら窓の外からの涼しい空気に触れて、
ああ、夏も終わりか。などと思ったりしたのですが、
今朝はもう秋の気配が濃厚だったような気がします。
晩夏。って感じですよね、もう。
晩夏。


その色々見た夢の中で目覚め間際に見たものが、
私が河川敷かどっかで女の子と一緒に座っていて
そこで私がパーマンについて話しているというもので、
パーマンとパー子がそれぞれ大事にしている宝物を見せるという、
そんなシーンについてうろ覚えで私は女の子に語り、
女の子はそれを目を細めながら聞いていて、
時折へえ、とか感心したように言うのに私はいちいち満足して、
喋り続けていて。
天気が良くて河原では少年野球が試合をしていて
私はパーマンについてとにかく熱を帯びて話し続けて。
「で、パー子がパーマンに自分の大事な宝物を見せると言って
渡したものが手鏡でさ。普通に女の子が使うような。
で、それを見て、こんなものが宝物なんだ?
パーマンが聞くとさ。パー子が言うんだよね。
『その鏡覗いてみて。何が映ってる?』ってさ。
パーマンが鏡を覗くとそこにはパーマンの顔が映ってて。。。
『え?僕しか映ってないよ?』とか言うと、パー子が顔を赤らめてさ。
『あなたよ。私の大事な宝物はあなたなの。』とか言うんだ。
そういう告白の仕方するんだよ、パー子って。
実はパーマンパーマンとパー子の壮大なラブストーリーなわけ!」
そう話しながら私はどういうわけか牛乳をごくごく飲んでいて、
給食を思い出すなあ、なんてぼんやり考えていて、
そしたら女の子が突然
「あれ、あそこに飛んでるのパーマンだよ!」とか叫んで。
見ると鳥が遠くの空を飛んでいて、私は
「あれはパーマンじゃない。見間違いだ。」と言って。
「いや、パーマンだよ。だって手鏡持ってるよ。」とか言って。
見ると確かにそれは鳥ではなくてパーマンで、
ああ、本当だ!この子は凄いなあ、本物のパーマンじゃないか、
とか感心しながら私は立ち上がり逆光を手で遮りながら目で追って、
女の子も立ち上がり、ちぎれそうなくらいに手をふっていて、
二人して河川敷でパーマンを遠くに眺めながら、
一体どこまで飛んで行くんだろうねえ。なんて話してたら
もう猛烈に泣きそうになってしまって、
幸福と不安の両方が押し寄せてくるのを感じながら
しまった、泣きそうだ。泣きたくてしょうがない。とか言うと
そこで河川敷の少年野球チームが突然ホームランを放ち、
歓声が上がり、鳥が羽ばたき、音楽が鳴り出して。
そしたら女の子は「ホームランだから泣くのやめたら?」
と私にそっと言って突然どこかへ走り出してしまったのでした。
私はパーマンを遠くに眺めながら、女の子を追うべきか
それともここで待つべきか迷いながらも
ああ、迷うことはない、だってあの子はもうこの世にいないのだ。
なんて思って「ホームランだから泣くのはやめよう」
と何度も言い聞かせて牛乳ビンを手のひらで叩いて
立ち尽くしてしまったのでした。
逆光の中で。ひとりで。


目が覚めて窓の外を見るとそこにはパーマンは飛んでおらず、
代わりに終わりかけの8月が重く漂っていました。
晩夏って感じでした、もう。
晩夏です。