KYON2という表記は誰が考えたのか考えつつ

KYON2「とかげ」を読む。
というタイトルのCDがあるのですが、
みなさんご存知でしょうか。
最近私はこのCDをiPodに入れて散歩しながらなど
日々の中で頻繁に聴いたりしているのですが、
これが何だか妙に良いのですよ。
小泉今日子さんが吉本ばななさんの小説「とかげ」を
朗読しているだけのCDなんですけどね。
これって1993年に発表されたものなんですが、
何だかひと回りして今の気持ちにしっくりくる感じなんですよ。
それこそ93年て私が大学生だった頃で、
当時吉本ばなな作品を私はかなり愛読していて、
周りの文学少年少女も確実に愛読していた印象なんですが、
いつの間にかすっかり遠のいてしまったなあ、という印象で、
今となってはあの頃あんなの読んでたなー俺、みたいな
遠い記憶になっていたのですね。
それを耳から小泉今日子という女優さんの声を通して聞いて、
久しぶりに言葉に反応したという感じで、
何だか懐かしい人に会って話を聞いたみたいな心地良さがあるのです。
実際「とかげ」って読んだはずなのにすっかり内容忘れてて、
へえ、こんな話だっけ、そうそうこんな文体だったな、
この人はこういう喋り方だったよ、と記憶が蘇る感じがとても新鮮で。
ただこれ、実際目で文章を再読しただけでは
ここまで引っかからなかったと思うのですよね。
小泉今日子さんの声の素晴らしさに私は改めて気が付いたのですが、
彼女の声で語られるとすごく心に響いて来るのですよ。
何か文章の内容以前に声のトーンだけで泣けてきてしまうので、
ああ、私は涙腺が緩くなった、とか思ったのですが、
多分学生時代に聞いてたらそんなにピンと来なかったんでしょうね。
えー、キョンキョンで泣くかー?みたいな感じで(笑)。
時を経て今聞くと良いと思うものがあるって、
前回のディランの時も書きましたがそういうのを感じますよ。
ところでキョンキョンといえば数年前にやってた
恋を何年休んでますか」とかいうドラマの演技がすごく良くて、
私は再放送にも関わらずすごい真剣に見てしまって(笑)
しみじみしたのを覚えているのですが、
素晴らしい女優さんだと思います。
この語りをヘッドフォンで聞くリスニングは
素晴らしく音楽的ですよ。


しかし吉本ばなな作品てよく考えたらもう10年は
再読していないので内容はどれもうろ覚えなんですが(笑)、
今読むと確実に読み方が違うと思うので
読んでみようかなと思いましたよ。
実際「とかげ」もさくさくとはさみで切り付けるような
残酷さとか、疲れと癒しとか、会話の妙とか、
時を経ないとわかんないところが結構あったなとか感じました。
(またどこに共感してどこに反発を感じるかなども)
大島弓子さんとかああいう独特な女性の作家さんの作品て
吉本ばななが少女漫画だみたいなわかりやすい
批評て当時ありましたよね)
読む状態やタイミングによって全然感じ方が
違ったりとかありますけど、
昔読んでたものを懐かしさ半分新鮮さ半分で触れる機会って
なかなか良いことじゃないかと思ったりします。


ちなみにKYON2「とかげ」を読む。は、
ブックオフの安売りコーナーを探すと簡単に見つかりますので
(私の印象では3軒に1軒は置いてあります・笑)
ぜひ興味ある方は見つけてみて下さい。


「雨の日に吉本ばななを読み返す
『正』という字で死をかぞえつつ」
枡野浩一