時は透き通る水

雪の降らない冬というのは
汗や涙を流さない青春のような、
体感度の希薄な硝子越しの対面のような
物足りなさを感じさせてしまうもので、
「あの頃のあいつはもっとぎらぎらしてたのに!」みたいな、
瞳に輝きをなくしたライバルへの失望と激励みたいな、
そんな想いを分厚い手紙に託して投函したくもなるのですが、
「さみ〜。さみーでいびすじゅにあ。」
みたいなくだらない駄洒落を言いたくならない暖かい冬は
何だか不健康極まりないよなあと思ったりする私です。
まあ寒くなくて楽なのは否めないですけど。


ところで昨日はテニスコーツというバンドのライブを見て来たのですが、
インプロ含め、色々なタイプの演奏を展開していて楽しめたし、
(出音をエフェクト処理するダブ的なアプローチが取られてました)
何より本人たちがリラックスしてやってる感じが良かったです。
何度となく書いてますがここのメンバーの植野さんとさやさんは
私の大学時代のサークルの先輩で、
10数年前から彼らのステージを見ているわけなのですが、
その佇まいの変わらなさと反面の深化っぷりに改めて感心しましたよ。
植野さんが使ってた白いストラトは大学時代から使ってたやつで、
「まだあれ使ってるの?」と驚きつつも懐かしくなったのですが、
あとで聞いたら「あれ1回盗まれて戻って来たやつだよ。」とのことで、
そういえば部室に泥棒が入って機材を大量に盗まれたという、
そんな事件があったなとか当時を思い出したりしたのですが、
そのギターだけゴミ捨て場に放置されて難を逃れたという話で、
そんな泥棒が残していくようなギターで今も音を出してるという、
その姿勢が大変美しいんじゃないかと思ったりしました。
ソロのフレーズやコード感、ノイズや空間系のエフェクトなど、
改めて素晴らしいギターを弾く人だなと思いましたよ。
彼のギターソロアルバムも多数出ているので
心あるギターリストはみな聴くと良いんじゃないかと思いました。
さやさんのイノセントな歌声も良かったです。
(しかしこの人は年を取らないなーとか思いました。
ジャケ見ると少女みたいですもんね。)

イピヤー

イピヤー



帰りにはなぜか植野さんにうなぎパイを貰ったので
うなぎパイを食べながら渋谷の街を後にしたのですが、
何だか10年後とかにもこうして彼のギターを聴くんじゃないかとか
ふと思ったりして、その時にはうなぎパイ貰ったなーとか、
そういう些細なことを思い出すような気がしたりして、
私はうなぎパイをぼりぼりと齧りながら10年て意外に短いよな、
とか思ったりしたのです。