私、言語の運動性を考察して

「すばる」9月号の穂村弘山崎ナオコーラ両氏の
言語表現を巡る対談がなかなか面白かったんですが、
言葉の渦巻きとも言うべき言語の運動性に
過去の体験や己の世界観を巻き込み表現するという
両氏の文体への確固たる姿勢が伺えて大変興味深く、
深い共感を覚えながら読んでしまいました。
山崎ナオコーラ氏のエッセイ集「指先からソーダ」にも
言語へのこだわりが言及されていますが、
宮沢賢治の『やまなし』を教科書に載せてくれた人に
ありがとうと言いたい」という文中においての表明には
何だか妙な感動を覚えた私です。
あの「やまなし」における「クラムボンが笑ったよ」は
意味よりも早い快感が言語に含まれることを
私たちに知らしめた良いテキストだったわけですが、
それにサンキューを述べる彼女の姿勢が
美しいんじゃないかと思ったりしました。
彼女の小説においての文体は
ぱっと見、読みやすい直球の文体のように見えながら
実は綿密な工夫と選択によって構築されているような印象で、
その詩的とも言えるチャーミングな部分が
エッセイではところどころで明確に顔を出していて、
そこが良かったように思います。
「文藝」に載ってた新しい短編も良かったですし。
彼女のデビュー作である「人のセックスを笑うな」は
何と映画化されるそうですが、
あれって実はストーリー自体は大した話でもないし、
彼女の男の子目線での文体があるからこそしみじみ泣ける
名作になってたんじゃないかと思うんですが、
映画化はどうなんでしょうかね。
まあこれで小説の方も売れるなら良いのかもしれませんが。


ところで「すばる」の両氏の対談、
ネット上での言語についても言及されていて、
それも個人的には興味深かったです。
言語を意識的に扱っている人なんかは
みなそれぞれの中で距離感が確立されているとは思いますが。


ところでfwjのレコーディング、実は大詰めだったりします。
夏休みの宿題に追われている小学生状態です。
イトケン+ジマニカとのコラボ曲はほぼ完成しましたが、
あと1曲をひーひー言いながらミックスしています。
まあ本当にひーひー言ってるわけではありませんが。
来週マスタリングする予定なので間に合わせたいところです。
夏はもう確実に終焉に向かっていますね。