千原ジュニア、明日の手法

3月30日

3月30日

文字の密度が低いので30分くらいで全部読み終わっちゃったんですが、
内容的にはかなり鋭く胸に迫るものがありました。
私は元々千原兄弟のファンなので大体の経緯は知ってるんですけどね。
今やテレビで見ない日はないほどの売れっ子になりましたが、
14歳の頃の引き蘢りに始まってその後急性肝炎、バイク事故と2度も死にかけ、
様々な挫折を経て今に至ってると改めて知ると実に感慨深いですね。
私が大学生だった90年代初めくらいに「千原兄弟ジャリズムが面白い」と
周囲の友人と話していたのを覚えてるんですが、
その頃ちょうど東京に進出しようかという頃だったんですね。
あれからようやく今になってジュニアや世界のナベアツが売れているというのは
ファンとしても嬉しい事態ですけどね。
ジュニアが「ジャックナイフ」と呼ばれて尖っていた頃は今やネタになってますが、
当時から他とは違う雰囲気を醸し出していたし、
ジュニアの毒気のある佇まいは確かに異彩を放ってましたね。
私が初めて見たネタは冒頭でジュニアが詩のようなものを独白するやつでしたが、
いざボケが始まると飛び交う鋭い言葉がもういちいち面白くて、
この人天才じゃなかろうかと感心したものです。
「サークルの勧誘」というネタなどビデオで何回も見直して
何度笑い転げたかわかんないくらいの高い完成度でしたね。
でもそこへ至るまでにネタが全然受けないという地獄のような日々があり、
そこから毎日舞台を見に行って研究を重ねたという経緯もこの本で語られるんですが、
引き蘢りから脱出してそこに至るある種戦いのような日々が
彼をジャックナイフたらしめていたのかと感心しましたね、読んでて。
まあその「わからないやつは笑わなくても良い」的な
カリスマ然とした態度が逆に全国区への進出を足踏みさせていたわけですが。
で、その後に壮絶なバイク事故で死にかけるわけですが。
この本ではそのバイク事故で入院中に色々な人がお見舞いに来てくれて、
その優しさに触れたことで客を選ばずに様々な人を笑わせたいという、
お笑いに対する態度が変わった経緯までが語られているんですが、
その入院中のくだりが稚拙とも取れなくもない朴訥とした文章で綴られていて、
読んでてなかなか泣けて来るのですよね。
トーク番組でも語られていましたが「家族が見ても誰だかわかんないくらい」
ぐしゃぐしゃに顔が変形したのを鏡で見て
「もうこれで人前に出られなくなった」と思った時の絶望感たるやですよ。
よくそこから現在に至ったなあという感じですよ。
今や優しい顔つきになっていますが、過去に一回崩壊してますからねあの顔。
そんな彼をお笑いの現場へ復活させた吉本の芸人さんの仲間意識みたいなのも
良いよなあと思いますよ改めて。
「すべらない話」なんてチームワークの勝利ですよねあの番組。


ところで当時のジュニアで私がよく覚えている映像があるんですが、
確かNHKの某番組の中で、彼が大のあしたのジョーマニアだということで、
内緒でジョーの作者のちばてつや先生の家へ彼を連れて行くという
ちょっとしたドッキリコーナーがあったのですよね。
で、いざちば先生とジョーマニアの彼がご対面となったんですが、
あろうことか憧れの先生を前に彼がガチで緊張してしまい、
ロケの間一言も口を利かない(利けない)という事態になり、
さしたる笑いもなくぼんやりした感じでそのコーナーが終わってしまったのですね。
番組としてそれはどうなのよと見ながら思ったものの、
私はその憧れの人を前に恐縮する少年のような彼の姿に
同じジョーマニアとして何だか好感を持ってしまったのですよね。
勿論芸人としてはあるまじき体たらくだし、
今の彼だったらきちんとトークを回して笑いを取るんでしょうけどもね。
何かでも「この人本当にあしたのジョーのこと好きなんだなあ」と思って
こやつは信用出来るななどと共感を覚えてしまったのですね。
確か爆笑問題と一緒の番組でしたけどね。
意外にも爆笑問題とのコントとかハマってたりして、面白かったですけどね。
今「検索ちゃん」などでジュニアと爆笑問題が絡んでるのを見ると
何だかその頃を思い出して嬉しくもなるのです。


現在、すっかり全国区の顔になったジュニアですが、
バラエティ番組でお茶の間に笑いを起こす彼の姿に
私は「売れて良かったなあ」と思わずにはいられないのです。
いやーお笑いって本当に素敵ですね。