私、崖の上のポニョを鑑賞し

先日宮崎駿監督作品「崖の上のポニョ」を鑑賞したのですが、
圧倒的な映像美とこちらの予測を上回る驚異の想像力に
改めて感心してしまった次第です。
67歳でこの感性を持ち得ている凄さというか。
ネタばれしまくりでざっと感想書きますので注意してお読み下さい。


この間の特番では監督は「まず描きたい場面だけ先に描いちゃう」と言っていて、
それらをつなげてストーリーを考えていく手法だったようですが、
その「監督が描きたかっただろう場面」の描写がやはり見事でしたね。
私が一番感動したのがポニョが人間になって宗介に会いに波の上を走って来る場面で、
私はこのシーンだけでも満足しちゃいましたけどね。
私は宮崎アニメの「キャラが走る描写」が大好きなのですが、
カリオストロの城」でルパンが屋根を疾走するシーンとか
コナンとジムシィが並走するスピード感と躍動感とか、
それらの集大成的な印象すら受けましたね。
正直、避難勧告が出てるのになぜか突っ切るお母さんの行動は疑問で、
(冒頭でもスピード出し過ぎ&よそ見運転してるし)
普通なら危ないので一旦戻るのでは?と思うのですが、
あそこで突っ切らないとポニョが追いかけるシーンになりませんもんね。
割と「その場面に行きたいからこういうストーリー展開になりました」
みたいなつなげ方でこんなシュールな話になってるのかなとも思いましたけどね。
荒天から一夜明けて街が海に飲まれてしまった一大事なのに
のほほんとボートに赤ちゃんと日傘差したお母さんが乗っているのも妙なんですが、
(私はこの場面、鈴木清順的なうっすらした狂気すら感じたんですが)
あれも「赤ちゃんに優しくしてあげて成長するポニョを描きたかった」そうで、
唐突にあそこで赤ちゃん出しちゃったのかと思ったんですけどね。
実際あそこのやりとりは可愛かったですけどね。
あの後大漁旗を掲げた船がわらわらと出て来る辺り、
つげ義春とか逆柱いみりとかのガロ系のシュール漫画を思い出して
ちょっと異様な感じもしましたけどね。
異様といえば宗介のお母さんて今までの宮崎キャラにないお母さん像で、
見てるとお母さん業が何だか粗雑な印象も受け、
(先程も述べた運転のくだりや旦那が帰って来ないとすねて料理放棄したりなど)
割と母親的立場というよりもお姉さん的な、
宗介とも友達みたいな目線も持ってる人として描かれている印象を受けましたね。
だから子供に自分の下の名前呼ばせてる設定なんでしょう。
(あれ最初は凄い違和感だったんですけどね)
「お母さん」なら子供の身を案じて異物のポニョを一瞬で受け入れないでしょうしね。
ああいうお母さんキャラは新鮮だったですね。
かと言って母性が希薄かといえばちゃんと溢れていますしね。
あと良かったのは料理の描写ですかね。
私は宮崎アニメの食べ物の描写が大好きなんですが、
今回「ハムの入ったインスタントラーメン」食べる率上がると思うんですよね。
見終わった後に。
なんつー美味そうなラーメンなのかと。
「おかーさん、ぼくハムたべたーい」と主張する子供が増えると思います。
子供に目をつむらせてその間にラーメンにハムを投入する母親演出は
私も真似してみようかと思いましたけどね。
ハムサンドも妙にボリュームあって美味そうなんですよね。
ラピュタ」でパズーとシータが食べるパンの上に目玉焼き乗せたやつとか、
何かパンが食べたくなるんですよね宮崎アニメ見てると。
(「魔女の宅急便」もパン屋が舞台ですもんね)
あと宗介とお父さんとのライトの信号によるやりとりも秀逸でしたね。
あれはあえてメールとか携帯とかの存在を忘れさせる演出もあったんですかね。
後半で宗介の冒険のためにお母さんと断絶される必要性があるわけですもんね。
(天気が荒れたくらいで携帯もEメールも全部駄目になるのかって話ですもんね)
その後出て来るハム通信は食べ物のハムとかかってるのかとも思いましたけど(笑)。
あと魔法が切れてボートがおもちゃに戻るのは良いとして
船長の帽子まで小さくなっちゃうの?とふと疑問に思ったんですけどね。
まあそんな類いの疑問に満ち溢れた展開ですけどね全編。
海から拾った生き物を水道水に入れて大丈夫なの?とか。
(まあ後に水であれば大丈夫であることがさり気なく語られてましたけどね)
最後はおとぎ話を踏襲したオチで綺麗に着地した印象ですが、
全体的に「こんな感じの夢見たことあるなあ」的な不思議な映画でしたね。
宮崎作品史上一番アヴァンギャルドな作品なんじゃないでしょうか。
実際子供はどういう感想を持つのでしょうかね。
あとあのぽにょぽにょいう主題歌の殺傷能力も凄いですけど、
劇中お母さんがさり気なく「トトロ」の挿入歌を歌うくだりがあり、
ジブリ作品の主題歌の存在感の大きさというものにも改めて感心してしまった次第です。


ところで劇場で見ていた際、私の隣の席のおばさんがあろうことか
大量のコーラを私の足下にこぼすという事件があり、
おばさんが「すいませんすいません」言いながら手で下の席へとコーラを流し込み、
後で前に座っていた人が「あれ、床びしょびしょじゃね?」と気付くという事態で、
かようにコーラまみれで映画を見ることがあろうか、いやない、
と反語を用いて実感したのですがあれは最悪ですよみなさん。
思わず「コーラと愚痴は劇場にこぼすな」とかいうことわざを作ってしまったほどです。
ポニョを見てことわざがひとつ増えるなんて。
風が吹けば桶屋が儲かる的なあれですかね。