春のラーメンズ祭り

ラーメンズ第16回公演『TEXT』 [DVD]

ラーメンズ第16回公演『TEXT』 [DVD]

ラーメンズ第5回公演『home』 [DVD]

ラーメンズ第5回公演『home』 [DVD]

再発や新作など今年はラーメンズのリリースラッシュで嬉しい限りです。
「TEXT」は言葉にこだわったネタが満載で小林賢太郎流言葉マジックが堪能出来ます。
彼がマジック好きなのはファンの間では有名ですが、
ある言葉がひとつのきっかけで意味や形や空気を変える手法にマジックと同様の物を感じます。
仕掛けが功名に成されているので笑った後に「ほほう」と感心させられてしまうのです。
大喜利などで見られるあいうえお作文であれだけの物語を作り出すイメージ力も凄いですし、
同音異義語でストーリーが重なるネタも実に構成が巧みです。
アンジャッシュも似たようなネタよくやってますけどね)
会話のバリエーションで展開していく「条例」というネタも
ただ「〜の場合」みたいに毎回変えていくだけでなくて後半にオチも加えてあって巧いのです。
アメリカ映画の吹き替えの雰囲気とか腹抱えて笑いました。
片桐仁がひとりでひたすらボケ倒す「ギリジン」系のネタが今回も入ってますが、
同じ舞台にずっと喋らない相方がいるというのがポイントなのですよね。
片桐仁のピン芸じゃなくてあくまでもコンビで成立しているネタなのです。
相方が喋らないのに成立してるネタって他のコンビではあまりないように思います。
最後の「銀河鉄道の夜のような夜」というネタは
銀河鉄道の夜」の世界を言葉という観点から笑いに変換したネタで、
まさかあの物語がお笑いの題材になるのかという感じで実に新鮮でした。
印刷所のくだりは確かに「言葉を拾う」そのままのシーンですもんね。
映画の「銀河鉄道の夜」では印刷所のシーンって言葉がほとんどないし、
静寂に印刷機のノイズの反復という寧ろ音楽的ですらある印象でしたが、
実は無数の言葉を集めているのですよね。
「常盤」「金村」という名前もにやりとさせられるというか、
後で時間経って気が付くタイプのボケで、こういうところも巧いなあという感じで。
(あえて「ときわ」なのが良いと思うのです。ジョウバンでは耳レベルでつまんないのです。)
きちんとあの物語同様の叙情というかもの寂しさというか、
「死」という原作のテーマが(あくまでもぼんやりと)敷かれているのが見事でした。
しりとりのすれ違いがそれの現れなのかという感じで。
透明人間の話がフリになってるのも巧い流れです。
言葉というテーマであらゆる角度からの表現を考えていったと思うのですが、
「え、そこ突くんだ?」みたいな驚きはそのままマジックを見た時と同様の驚きだったりして、
そういう意味ではもう彼はマジシャンに近いんじゃないかと思う次第ですよ。
私がお笑いを見る理由には「ただ笑いたいから」というのもありますが、
「視点の意外性で驚きたい」というのもあり、
ラーメンズを見る度に私は驚かされるというか感心しつつ
「へええ」だの「ううむ」だの唸ってしまうのです。
あとラーメンズは音楽がとても良いです。
徳澤青弦氏のラーメンズサントラは私の秘かな愛聴盤です。
まあ別に秘かにしなくても良いんですが。
徳澤氏がメンバーのanonymassというバンドは素晴らしいですよ。