闇と光のバラード

先日、仕事先のデパートの社員用トイレの個室に入っていたところ、
突然電気が消されて真っ暗になるという不測の事態に見舞われ、
わっ、何?停電?はたまたテロ?と慌てふためきつつ、
これは「五十嵐を暗闇に包ませるの会」の会員による仕業かと瞬間疑念を抱いたりしたのですが、
何のことはない社員さんが私が個室に入っているのに気付かずに電気を消してしまったのですね。
近頃はどこの現場でも省エネを声高に推奨しており、
デパートの社員用トイレにも使用する者がいない場合はその都度電気を消すよう貼り紙がしてあるのですよね。
消された瞬間「あっ、中にいますよ!」とか言えば良かったんですけどね。
五十嵐を暗闇に包ませるの会の存在に気を取られていたのでタイミングを逃してしまったのです。
私はしばしの間暗闇に身をまかせ、
昔かくれんぼの時に押し入れの中にひっそりと身を潜めた時の記憶を思い出し、
何だか懐かしいような切ないような不思議な気分にもなったのですが、
いつまでもこの暗闇にいるわけにもいきません。
かくれんぼはとうの昔に終わっているのです。
私は何か明かりはないものかと周囲に光を求めたところ携帯という文明の利器を思い出し、
ポケットの中から携帯を取り出しスイッチを入れるとほわっとした明かりが灯り、
私はその光の明るさと温もりに感動を覚え「つ、点いたよぅ〜!」と
北の国から」の田中邦衛の如きテンションで光を歓迎し感涙に咽び、
純くん蛍ちゃんがいれば抱き合うくらいだったものをいないのでひとり噛み締め、
その明るさを頼りにそそくさとズボンを穿き直し水を流して個室を出ることに成功をおさめたのですが、
暗闇に光が灯るとかくも嬉しいものなのですね。
北の国から」の田中邦衛の気持ちが心の底からわかった瞬間でした。
この暗闇との格闘の間に誰かがトイレに入って来た場合、
「誰もいない筈の暗闇の個室から物音が聞こえる!さては妖怪トイレ小僧だな?!」と、
妖怪扱いされ怪しまれ追及されること必至だったわけで、
誰にも見られず個室からの脱出に成功したのはラッキーだったと言えるでしょう。
妖怪トイレ小僧に間違われては厄介この上なしです。
そして私は入口にあるスイッチを押し、電気をつけ、
最初から明るいところで用を足していましたよという何食わぬ表情を
アカデミー賞主演男優賞受賞レベルの演技力を駆使して作りトイレを出たのですが、
こういう不測の事態には気をつけないといけません。
私は闇から抜け出した壮快感と少々の疲労感を感じながらトイレを後にし、
電気と共に大切にしなければならないのは気配りであるなと学んだのです。
誰もいないことを確かめて消灯。
それを怠ると妖怪トイレ小僧が出るのですぞ。
皆さんくれぐれもご注意下さい。