札幌デイズ2

そんなわけで札幌にいるのです。
折角札幌に来て観光しないのも何なのですが、
いざ催事が始まると一日中デパートの中にいなければならないですしね。
ずっと建物の中にいると暑いのか寒いのか晴れなのか雨なのかもわからないですし。
動けるのも朝か夜かになってしまうので遊びに行きようがないのです。
まあ仕事なので仕方ないんですけどね。


取りあえず札幌ぽい食べ物をどこかで一度いただきたいものだということで、
焼き鳥を食べた次の日には我々なぜかうなぎ屋に赴き。
高級うな重をいただくに至りました。
本当はスープカレーの美味しい店に行こうと思ったんですけどね。
いっぱいだったので方針を変えたのです。
うなぎが札幌ぽいかと問われれば答えに窮するんですが。
いざうなぎ屋に入ったはいいものの、お値段どれくらいなのかしらと見やると
ほほう、と唸るお値段であり。
私は「すみません急に用事を思い出しました」と怖じ気ついて出ようかと思ったのですが、
飴細工職人のS氏による「や、ここの勘定は俺が」という男らしさ全開発言によって
ブラシ職人のA氏と共に腰を落ち着かせ高級うなぎを食すに至ったのでした。
我々が頼んだのはうな重が二段重ねになっているというというやつで、
うな重をほじくり返すとさらに下層にもうな重ありという豪華なもので。
うなぎのダブルバーガーみたいなものでしょうか。
食べ物を食べ物に例えてどうするんだという話ですが。
何しろ豪華なる仕様なわけです。
その美味さを語る語彙を私は駆使することが出来ず、
「うー」「おー」「あー」と母音だけを発するに至ったのですが、
前日から歯痛に悩まされているA氏は「うー」「おー」「あー」と
同じ母音の発音ながら微妙に違う感情を露出させておりました。
「痛いけど美味い」という名言を発しつつ。
その夜、部屋に帰って「孤独のグルメ」というドラマを見ていたら
偶然題材がうなぎで、原作者の久住さんが同じように二重のうな重を食しており、
「あーそれそれ。私もさっきそれに感動していたんだよう」と
うなぎの美味しさを反芻したのですが、
A氏にしてみれば歯痛も同時に思い出してしまうのでいただけなかったことでしょう。
(しかしあのドラマの主人公、一回の食事でどんだけ食うんだという話です)


さらに次の日には同じ面子に加え江戸染め職人のT氏も同行し、
みんなで飴細工のS氏の知り合いだという方のお店に赴き。
そこはすすき野のとあるビル内の最上階にあるステーキと蟹料理のお店だったんですけどね。
私はすすき野自体初めてで、大きなニッカウヰスキーの看板を見やり
「おおここがススキノかあ」と街行く露出多めのドレッシーな女性やらホスト系男子やらを見やり、
情緒ある歌舞伎町といった風情だな〜などと思いつつドレッシーな女性のドレッシーなお店に
「あれステーキのお店はここじゃないですか?」と、
ドレッシーに間違えた振りをして入店したい衝動にも駆られたのですがそうもいかず。
おとなしくS氏の後をついていってそのお店に辿り着いたのですが、
そこは一見さんには入りにくい店構えの揃ったビル内の一室で。
中に入ると普通に雰囲気の良いお店だったんですけどね。
そこでステーキやら刺身やら蟹やら魚やら豪華な料理ばかりをいただきまして。
しかも全部高級な食材でどれも抜群な美味しさで。
そこでも私は美味しさを伝えるための語彙を駆使することが出来ず、
「うー」「おー」「あー」と母音に感情を乗せて発するに至り、
歯痛に悩まされているA氏も「うー」「おー」「あー」とまた別な感情で母音を発しておりました。
歯を使って噛まねばならないステーキなどはA氏曰く
「歯が痛くてあんまり食べられないんでみんなで食べて下さいー」とのことで、
その時ばかりはみなで「A氏、歯痛でいてくれてありがとう」という、
感謝の言葉がすらすらと出て来ましたけどね。
何とも残酷な話ですが。
ちなみに私は江戸染めのT氏と催事で一緒になるの10年振りくらいだったんですけどね。
こうして札幌の地で再会して食事出来るとは嬉しい限りでした。
とても良い宴と相成りました。
そんなわけで札幌滞在3日目にしてようやく札幌らしい食べ物を食べるに至りました。
まあどれがらしいものでどれがらしくないものかとかよくわからないんですけどね。
そんなわけで一行はススキノの街を後にしたのでした。
今後ニッカウヰスキーを見る度にススキノを思い出してしまいそうです。
ドレッシーな光景と共に。