札幌デイズ3

私が札幌にいる時期と同じくして山田氏もツアーで札幌に来るとのことで、
彼からは前もって「来ちゃいなよ」と軽快に言われていたので
「じゃあ行っちゃいますよ」と軽快に合流に至りました。
私の出張先が彼のツアー先と被るのは大阪と福岡に次いで3度目なんですけどね。
今回もライブには間に合わないので打ち上げだけ参加といういつものパターンで。


日曜日のライブ会場はレストランのやという所で。
札幌から一駅の苗穂という駅だったので電車で向かったんですが、
いざ降りてみたら札幌の都会っぷりが嘘のように人気がなくて。
何だこの寂れた雰囲気はと思いながら駅を降りると周りに何の店もなく。
ほの暗い北の地の小さな駅といった佇まいにぽつねんと居乍ら
本当にこんなところにライブをするような店があるのだろうか、
私はきつねかたぬきに騙されているのではないかと疑念を抱きながら歩き出すと
汽笛の音なんかが哀愁を帯びて聞こえたりして。
私は札幌に来て初めて旅情を感じてしまいました。
嗚呼、私は北の地に旅に来ているなと。
そんな旅情フィーリングで暗い道を歩いていると砂漠の果てのオアシスの如く突如灯りが目前に現れ。
おお光だ、水だ、と思いながら店内に入ると山田氏が
「おお五十嵐くん来た〜」と迎えてくれたので
嗚呼きつねやたぬきに騙されたわけではなかった良かった、と胸を撫で下ろすに至ったのですが、
そのレストランのやさんは宮沢賢治の童話に出て来そうな様相のとても良い雰囲気のお店で。
ライブ会場がまた響きの良い空間でこんなところで歌ったら気持ち良さそうだなと思ったら、
色々なミュージシャンの方がライブをされているんですね。
今度ぜひここで生の音を聞きたいし、演奏をしたいものだと思いましたけどね。
そんな場所でオーナーの方が山田氏のために用意してくれたご馳走の数々を
演奏もしていない私がいきなり来てご相伴にあずかるという展開になり、
恐縮しつつ図々しくもいたいだのですが、これがまた美味しいものばかりで。
いかの刺身やじゃがいもに塩辛を合えたものやピザやサラダやパスタやらに舌鼓を打ち、
さらには夕張メロンやらお手製ケーキやらもデザートで出て来て、
私はその美味しさを語る語彙を駆使することが出来ず「うー」「おー」「あー」だの
母音を発するに至りそうになったのですが、そんなことをしているとお店の方々に
「何だこいつ変な声出して、さてはきつねかたぬきの類いが紛れ込んでいるな」と
あらぬ疑いをかけられ延いては山田氏の信用をも失うことになると思い
「美味しいですね!」と人間然と言葉にしてみたのですが、
本当は小田和正ばりに言葉に出来なかったのでした。
美味しいものをいただきました。
ライブを見られなかったので何なのですが、
旅先で知り合いに会うと何だか嬉しいものだなと改めて思った次第です。
のやさんにはまたぜひお客としてお邪魔したいものだと思いました。


でもって次の日のライブ会場はたべるとくらしの研究所というカフェで。
(明日も来ちゃいなよと彼に軽快に言われたので軽快にお邪魔することにしたのです)
この日私の催事が最終日ということで終わるのが早く、
これはライブに間に合うなと急ぎながら向かったのですが、
地図を見るにつけこれは徒歩で余裕で行けるなと己の健脚を信用して歩き出したのですが、
これがまたなかなか辿り着かないのですよね。
私はこれはきつねかたぬきに騙されているのではないか、
同じ場所をぐるぐると回っているだけなのではないかと疑念を抱きながら20分強歩き、
所定の住所のところまで何とか辿り着くもそこはうら寂しいロケーションで、
本当にこんなところにライブをするような場所があるのだろうかと思い、
頭上の月などを望みながらしばし旅情に浸っていると
どこからか風に乗って山田氏の聞き覚えのある声が聞こえ。
おお、あれは月あかりのナイトスイミングではないかと思い、
月光の下で聞く彼の歌を頼りに歩くと突如砂漠の果てのオアシスの如く灯りが目前に現れ。
何とか店内に入り、ライブを(途中からですが)鑑賞出来ました。
たべるとくらしの研究所は入り口には木々の緑が垂れ下がり、
どこか昭和を感じさせる懐かしい雰囲気の外装で。
でも店内は洒落ていてとても良いお店でした。
(いただいたおやつも美味しかったです)
ライブはというとキッコリーズという地元のバンドとの共演で。
女性ボーカルの方の声がとても素敵で、曲も良かったですね。
キッコリーズの曲を山田氏とデュエットしたり、
山田氏の曲をバンドの面々が参加して演奏したりと普段と違うステージで楽しめました。
(この間のイノトモさんでも思ったんですが彼の声と女性ボーカルとの絡みが良いんですよね)
「やまびこの詩」では私は音源上キッコリーズのヴァイオリンの方と共演してるんですが、
今回初めてご本人と対面出来ました。
こうして間に合うのがわかっていれば私もギターで参加したかったんですけどね。
音源を生で再現できたんですが。
その「やまびこの詩」も良かったし、高野寛氏の「確かな光」という曲のカバーもとても良くて。
歌詞の内容に何だかしみじみとしてしまい落涙するに至った私です。
会場では子供たちがどたばたと駆け回り、良い雰囲気でした。
ここも今度お客としてまた来ようと思いました。
山田氏が事前にお店用に私の招き猫を買ってくれて、
それをお店の方に渡したら早速飾ってくれました。
お店の名前を時間かけて入れたんですが、喜んでいただけたら幸いだなと思った次第です。
ライブ終了後はまたもや打ち上げに参加させてもらい、キッコリーズの方々と交流出来ました。
山田氏は2日間歌ってお疲れ気味でしたが終始笑顔でした。
私も後半疲れていたのか飲みながら半分寝ていたような気がするのですが、
焼酎だけはしっかり飲み干していた模様です。
その後ふらふらとしながら何とか帰りました。
山田氏は次の日の最終の飛行機で帰るとのことで、
あんたどんだけ札幌を楽しむ気やねんと思ったのですが、
夏の札幌は確かに過ごし易くて長く居たくなるなあと思った次第です。
月あかりの下の楽しい2デイズでした。
関係者の皆様ありがとうございました、お疲れさまでした。