隙間ラジオ

私は普段仕事しながらだいたいラジオを聞いているのですが
(以前も確かこのブログに書きましたが)、
「ゆうゆうワイド」とか「たまむすび」とかのリアルタイムでの放送に加え、
他の時間帯の番組もポッドキャストyoutubeなどで聞く機会も増え、
一日中何かしらラジオからの声を聞いている状態が日常化しており、
最早ジャンキーと呼んでも差し支えないくらいなのですよね。
ラジオをベースに一日を過ごしているような様相で。


ラジオ好きで知られるミュージシャンのRAM RIDER氏が
「AMラジオが好きな人は貧乏性なのではないか、
空いてる時間に少しでもためになる情報を聞きたい、
楽しみを得たいと貪欲なのではないか」というような意見を述べていて、
わかるわかると首を縦にぶるんぶるん振って共感したのですが、
生活の隙間に気軽に配置出来る娯楽ってラジオくらいなんですよね。
視界も奪われないし手作業の邪魔にならないし。
ながら聞きが前提ですからね。
仕事中は勿論、家事をしながらや電車や車や徒歩での移動中、
下手したら録音作業中、波形の編集中などにもラジオを聞いていたりしていて、
音を作る作業中に他の音を聞いてどうするんだという感じなんですが、
それだけラジオを聞くという行為が自分にとって楽しいし、しっくり来るのです。
私は新聞を取っていないのでニュースもラジオから得ているし
(まあ一応ネットでも見ていますが)、
新しい音楽もラジオで知ったりするのですよね。


たまに本屋とか八百屋とか食堂とか、
個人経営のお店に入ってラジオが鳴ってると
「あ、ここの店主はTBS派か」と思ったり、
「あ、もう荒川強啓デイキャッチの時間なんだ」と、
時計の代わりに一日の時間を把握したりしつつ
親しみを覚えたりするのです。
ここの店主も仲間か、と思ったりして。
ミュージシャンのかせきさいだぁ氏がゆうゆうワイドの音楽コーナーを聞いていて
気になった曲があったからiTunesで買った、みたいなことをツイートしていて、
ゆうゆうワイドという古くからの長寿番組の渋い選曲と
iTunesという最新の配信システムの距離感が凄いなと思ったんですが、
ラジオって本当にたまに凄くはっとするような選曲が見られるんですよね。
流行りとかタイアップとか時代とか関係ないところで
ふいにかかる曲に心奪われる瞬間に楽曲の強みを感じたりします。


あとラジオでのパーソナリティートークはテレビでの編集、完成されたものとは違い、
「今朝は寒かった」みたいな些細なことから話題をどんどん膨らませ、
最終的に面白く着地させてしまう手腕に感心してしまうのですが、
日常のどこに視点を置き、どこに光を当てるのか、
そしてそこから生まれる思想をどう語るのか、
言葉が立ち上がってくる生の瞬間を耳に出来るのが魅力だし、
スリリングで物を作るヒントにも活きる気がするのですよね。
深夜ラジオのスターと言えば伊集院光氏ですが、
彼の場合例えば「箱根にパンを買いに行った」という話だけで1時間全く飽きさせないし、
ひとり語りで時間が持つし、聞いててとにかく面白いのですよね。
最近は南キャン山ちゃんを筆頭に
芸人がラジオで喋ったことをネットニュースで取り上げ、
それが炎上するパターンも多いですが、
その前後の文脈やその時の空気感、言葉の間の取り方などで
だいぶ話の印象が変わるし、
その伊集院のトークなんかも脱線に次ぐ脱線、挟まれる余談などで
文字起こしすると面白さが充分に伝わらない内容なんですよね。
山ちゃんのトークも耳で聞いてると面白いんですが、
一部切り取って文字に起こすと炎上するという。


私が良いなあと思う文章は行間を読ませるというか、
ある物事を伝えるのにこういう例えを使ったり、
句読点をこう配置したりという文体の妙味が感じられるもので、
ラジオでのトークについても同じような語りの「文体」に
私は魅せられるのですよね。
伊集院の語りは内容が悪口でも下ネタでも下世話でも
文体が魅力的だから聞いていて面白いという。
あと伊集院の場合はひとり語りですが、
ナイナイやオードリーなどコンビ間での語りもその空気感や文体が魅力的で、
私はオードリーが学生時代から築きあげて来た関係性の上でで話す
他愛もないトークが凄く好きで聞いていて面白いのですよね。
若林が好きなアメフトチームのキャップを買いに行っただけの話とかも、
春日が聞き手だと妙に面白いトークに聞こえるのです。
特にオチもなかったりするようなユルいトークでも
文体が心地良いと何だか聞けてしまうという。
他愛もないただの言葉が投げて返って文体となる様子が
私にはとても大きなエンターテイメントに感じるのです。
おぎやはぎなどは余談のみで構成されていると言っても良い適当さなんですが、
そこが良いんですよね。


なんて色々書いて来ましたが、
そんな難しいこと考えずに適当に聞き流せるのもラジオの良さで、
ジャパネットの社長のセールストーク、最近スキルが落ちたなあとか、
パチンコ店のCMって謎なのが多いよなあとか、
ぼんやりと思いながら生活の隙間にラジオを置いています。