キュートかつエレガントなミーティング

鎌倉molnでの高橋徹也氏、青山陽一氏ツーマンライブ「鎌倉ミーティング」も無事終了しました。
たくさんのご来場ありがとうございました。
山田氏と高橋氏と吉祥寺で飲んで意気投合した後「ライブやりましょう!」となり、
何となく流れで決まったライブでしたが、私も敬愛する青山さんも共演と相成り、
大変良い夜になりました。


当日高橋氏は入り時間よりだいぶ早く会場にひょろりと現れ、
「ちょっと散策に」とひょろりと出かけたと思ったら甘い物を買ってひょろりと帰って来て。
冒頭から甘党ぶりを発揮した後、入念なリハを行い。
この日初めて披露する新曲の歌詞を書き写したり、曲順を確認しておりました。
(刑事が取り調べに使いそうな黒いメモ帳が印象的でした)
彼持参のアンプもいい音で鳴っており。
その後青山さんが会場入りし、
「ご無沙汰です〜」などと挨拶をし(私は会うの10数年振りでしたので)、
準備などしていると青山さんが「うわあ!」と悲鳴を上げたので何事かと聞けば
アンプの電源コードを忘れて来たとのことで。
電源コードがないと音が出せないぞ、どうする?となったのですが、
偶然高橋氏のアンプが青山氏のアンプと同じメーカーで。
よって電源コードを使い回せることが判明し、無事音が出せたという。
鎌倉にそんなプチ奇跡が舞い降りた瞬間に立ち会えたのですが、
聞けば青山さんが使ってるアンプを見て高橋氏が同じメーカーのを買ったとのことで。
今回の鎌倉ミーティングはそこから繋がっていたのだな、
同じアンプによってその魅力が増幅されるに至ったのだなと勝手に解釈した次第です。
(青山さんでもそんな忘れ物あるんだなーと妙に親しみを感じました)
今回は2人でお互いの曲をセッションしあうくだりがあり、
そのリハをリハの時間に行ったのですが、
青山さんの曲はコードも拍子も複雑ゆえ、事前に聞き込んで来たという高橋氏も
「ここはこのコードで良いんですか?」などと苦戦しており、
コーラスに於いても
「セイラ〜」
「いやセイラ〜じゃなくてセイラ〜」
「セイラー」
「いやセイラーじゃなくてセイラー」
などとセイラー問答が繰り返されており(ちなみに「難破船のセイラー」という曲でした)、
さすが青山さん普段ギターレッスンで先生をしているだけあるなと
その厳格なティーチャーぶりに感心したのですが、
いざ高橋氏の曲をやるとなっては
「青山さんがリードを歌うと違う歌みたいになる」(高橋氏談)ということで
青山氏はコーラスとギターに徹することになったのですが、
それはそれ青山さんのギターが入ると曲がぐんとドライブするんですよね。
(ちなみに「真夜中のドライブイン」という曲でした)
ソロもオブリもエレガントで素晴らしく。コーラスもばっちりでした。
そんなリハを開場時間過ぎまでやっていたのですが、
すでにお客さんが並んでいたので切り上げてもらい。
たくさんのお客さんに入っていただき(満員御礼でした)、
いざ本番となりまして。


1番手の青山さんは「後ろの人見えないかな」と急きょ立って演奏することになり。
おかげで彼の巧みなギターワークがよく見えました。
オープンチューニングのスライドプレイなどは見てて痺れましたね。
「最後はヌード」や「ベッドが走る」などの懐かしい曲も聞けましたし。
複雑かつ独特なコードワークも「あのポジションで弾いてるのか〜」と観察出来ました。
ブルースを基調とした土臭いコード進行の曲でも
乗ってるメロと言葉が妙にポップだったりしてそこが面白いのですよね。
あとギター弾いてる時の表情が豊かで、顔で弾くタイプの人なんだなあと思いました。
全体、弾き語りならではの魅力を堪能出来ました。
(バンド編成のグルーヴィーな演奏もかっこいいですけどね)


2番手の高橋氏はガットギター弾き語りというスタイルでしたが、
独自の高橋世界に会場を染め上げており、素晴らしかったですね。
テレコで海の音を流しながら朗読するくだりなども良かったし。
聞けば彼の中ではカセットテープが一番好きなメディアとのことで。
テープコンプのかかったざらついた音色の波に彼の流麗な歌声が響き、
海の底か宇宙の果てにいるかのような感覚を味わえました。
(さらにそこに鎌倉駅の電車の走行音が被り異世界を作っておりました)
ボッサマナーの曲ではガットギターが美しいコードを響かせ。
そのスタイルにブラジルのボッサの先人たちの影が見え隠れしました。
彼に聞いたらあくまでメロが先行で、コードは後から付けてるらしいですけどね。
メロもコードも独特でぐわんと浮遊したと思ったら思いがけない場所に着地するのですよね。
中南米の文学を彷彿とさせる歌詞世界にも引き込まれました。
高橋さんも青山さんも独特なコードに独特な節回しのメロが乗り
さらに独特な言葉がそれをざらざらと彩っており、
ぐいぐい世界に引き込まれるのですよね。
2人とも優れたソングライターだなと改めて感心してしまいました。


アンコールはリハで問答していた2曲を披露し。
お客さんはレアなセッションに喜んだのではないでしょうか。
高橋氏が青山さんに「曲はどうやって作ってるんですか?」と聞くと
「普通にフォークシンガーのようにギター弾きながら作ってる」とのことで、
そんな普通の作り方であんなひねた楽曲が出来る青山回路は凄いなと思いましたけどね。
結局アンコール2曲が終わっても拍手は鳴り止まず、予期せぬダブルアンコールとなり。
急遽予定にない、高橋氏曰く「自分の持てる可愛いを結集させた」という
「もっとぎゅうっと」という曲を演奏し。
これがまた実際可愛い曲で店内のガーリーな小物が突然似合う空間になり、
高橋氏はこんな小技も持っていたのかとその幅広さに感心した次第です。
青山さんがまた初見なのに手元見ながらちゃんとバッキングしてたのが凄かったですね。
2人のやり取りも微笑ましく可愛いおじさん(お兄さん?)たちだなと思ってしまいました。
そんな思いがけず可愛いエンディングを迎えまして。
青山さん風に言えば「最後はキュート」という感じでしょうか。
いや見応えあるいいライブでした。


終演後は青山氏は仕事があるとのことですぐに帰られたので高橋氏と一緒に打ち上げに赴き。
ライブの感想など語りつつ楽しく食事して帰りました。
途中、話題がお笑い芸人に及んだ際、
彼が「あの『続けます』ってギャグ言う人は今どうしてるんですかね」と言うので、
果てそんなギャグを持つ芸人いたかしらと思考を巡らした末に
「ひょっとして長井秀和ですか?」と言うと「あ、それそれ!」と言うので、
長井秀和は確かにネタの合間に「続けます」とは言うけれど
どっちかと言うとメインは「間違いない」の方じゃないかなと心の中でつっこんだのですが、
メインじゃない言葉に着目する辺りに彼の作風の秘密があるのでしょうか。
後で思い出して笑いましたけどね。
そっちかよと(笑)。
また彼が何度となく皿から食べ物を落とすので
「高橋さん落とし過ぎですよ」と軽くつっこむと
「不器用なもので。」と高倉健以来の不器用宣言が飛び出したり、
彼が「このブラジルソーセージって何ですか?」と店員さんに聞くと
「あ、ブラジル産のソーセージです」と、まさかのおうむ返しを貰うなど
打ち上げでも高橋ワールド全開でした。
帰り際には「ご馳走さまでした!」と歌声と同じトーンで店員さんに言うので
またライブが始まるのかと思ったほどです。
この人は面白い人だなあと再認識した次第です。


そんなわけで鎌倉ミーティング、打ち上げもお開きとなりまして。
みんなでガタゴト電車に揺られて帰りました。
私は演奏に参加しなかったですけど、裏方として斯様な如きイベントを企画出来た喜びもあるし、
見ていて刺激を受けました。
またぜひ機会あればやりたいものです。
最初から最後まで。
キュートかつエレガントな感じで。