9月の太平洋 貸切り図書館10冊目

私が鎌倉molnで催している企画ライブ「貸切り図書館」の記念すべき10回目が先日行われ、
ゲストの高橋徹也さんにたっぷりと歌い演奏していただきました。
アーティストに愛読書を紹介、解説していただくこの企画、
おかげさまでお客さんにも演者さんにも好評でございまして。
本好きなアーティストさん多いんだなあと毎回その語り口に感心する次第です。
高橋徹也さんはというと「当日持ち切れないから!」と、
先に本だけ郵送するという気合いの入れようで、
さらには当日お客さん用のブックリストまで作成して来るという几帳面さで、
彼の真面目な姿勢が伝わって来ましたね。
会場入り口にはずらりと彼の愛読書が並び。
(元本屋さん勤務だったmolnスタッフさんが本屋目線で並べてくれたそうです)
演奏の合間に静かに、時折言葉を迷いながらも
その本の魅力や本にまつわる思い出など熱く語ってくれ、
ファンの方は喜んだんじゃないでしょうか。
時折「えーと何だっけ忘れちゃったな」などと
愛読書の内容を忘れるというおとぼけも見られましたが(笑)、
いつになく饒舌に語る文学青年高橋氏の姿が新鮮でした。
ケルアック、ヘミングウェイガルシア・マルケスサマセット・モームなど海外文学が多く、
日本作家では筒井康隆を挙げてましたね。
ちょっとシュールで狂気を感じる彼の作風のルーツを垣間見た気がしました。
中南米の明るい気候だからこそ浮かび上がる狂気みたいな話をしておりましたが
(普段明るい人が急に凶悪犯罪犯したら余計こわいみたいな例えでしたが)、
なるほどなと思いましたね。
そんな中演奏された未発表曲だという
「子供たちが眠らずにひたすらテレビを見続けている」という歌や、
「空港で電話をしている国際人は本当は電話をしていない」みたいな歌など
(すみません、うろ覚えですが)、
短いSF小説を読んでるかのような不思議な味わいがありました。
テレビの前で魂が抜けた顔で空虚を見つめる子供のイメージが浮かびましたね。
その後中盤になるとお客さんに
「みなさんどんな本を読んでます?」と語りかけ、
まさかのタカテツ客いじりが展開され(笑)、
ひとりのお客さんが「安部公房とか好きです」と答えると
「あー砂の器ね」と応答したので
すかさず私は「高橋さん、それ松本清張!」と心の内にツッコミを入れたのですが、
会場には「ふふふ高橋さんたら」という太平洋のさざ波のような笑いが起き、
暖かく彼の天然ボケを受け入れていたので、
タカテツファンの方々は優しいんだなーと感心した次第です。
(その安部公房好きの方には高橋氏から本をプレゼントされてました)
さらには話題は漫画に及び、
高橋さんが「ドカベンとか好きですねえ」と言うと
「私、全巻持ってます!」と返すお客さんがいて、
明訓高校について熱弁する高橋氏という図が展開されました。
さんざ堅い文学作品を紹介して来たのに結局ドカベンが客席ウケを独占するという(笑)。
ライブならではの展開が見られました。
何だかんだでステージは3時間に及び。
空間をすっかり高橋ワールドに染めておりました。
他人の作品を語りつつもその言葉が結局高橋さん自身を語る感じになっており、
オリジナルな人だなあと感心した次第です。


ライブ後はお客さんが本を実際に手に取って眺め、
そこに高橋さんが解説を入れるという、
HARCOくんの時と同じような光景が見られました。
本を媒体にしてアーティストと対話出来るというのもまた魅力であるなと思った次第です。


終演後はあたふたと片付け、店で軽く乾杯しまして。
(お酒飲めない高橋氏はチョコをつまみながらジンジャーエール飲んでました)
その後あたふたと帰りました。
慌ただしかったですが、楽しかったですね。
私もガルシア・マルケスを読んでみようかなと思いましたが、
実際に手に取って中の文字量の多さを見て、
これは時間とガッツがないと読めないぞと静かにページを閉じた次第です(笑)。
いつかは読んでみたいものですが。
「貸切り図書館」、次回は10月19日に我々fwjと朝日美穂さんが登場します。
興味持たれた方はぜひご来場下さい。