SNS浦島

今回一緒に催事に出ている職人さんの妹さん(41歳・独身)が人生に於いてこれまで一度も携帯電話を所有したことがなく現在もノー携帯で生活していると聞き、「へえ、今時そんな人いるんだ?」とえらく驚いたのですが、よくよく考えたら自分も20年前まではノー携帯で過ごしていたわけだし、別になかったらないで生活に支障はないのですよね。聞けば彼女は実家住まいなので家に固定電話もあるし、パソコンを所有しているのでメールも普通に繋がるそうで、必要性を感じないから所有してないらしいのです。外出中に誰かに呼び出されることもないし、人付き合いの面倒くささから解放されてかえって良いのかもしれません。SNSの類いも一切やってないそうで、人間関係をぎゅっと凝縮した生き方は本人が満足ならありなのかもしれないなと思ったりした次第です。(しかしこれから恋愛を始めるのには不便な思いをしそうですが)。
そんなノー携帯ライフにえらく驚いたということは如何に自分が普段スマホに依存しているかの証しであるかと少々反省に至ったのですが、ある程度落ち着いた41歳という年齢的にはノー携帯でも大丈夫でしょうが、若い人であればあるほど携帯がないと人間関係の形成が難しいのだろうなとふと想いを馳せた次第です。クラスのLINEグループに入ってないのが自分だけとか、学生の身分だったら由々しき事態なのでしょう。そう考えると自分が学生の頃にそういう文化がなくて本当に良かったと胸を撫で下ろす次第です。人間関係に気を遣ったSNSでの賢い振る舞いなど学生時代に出来ていた自信がありません。
SNSといえば先日fwjバンドの初期メンバーのキシくんに久々に会ったのですが、話の流れで「そういえば彼は元気なの?」と共通の知人の話題になるも「さあ〜相変わらずなんじゃない?」と、結局その人がSNS上にいないので2人とも近況がわからないという状態だったんですが、今やそういう時代なんだなあとしみじみ思った次第です。私はツイッターフェイスブックとインスタグラムをやっているのですが、どれもやってない知人の近況は本人に連絡して聞くしかないのですよね。
と言いつつ私は普段フェイスブックをほとんど見ておらず、というのも次々とタイムラインに上がって来る名前も顔も知らない人のバーベキューの写真とか(名前も顔も知らない人のフレンド申請を承認する私も私なのですが)、どこかで一度挨拶した程度の薄い知り合いの家族団欒のほんわか写真などを見ても正直面白味がなく、お互い「いいね」を押し合う感じも何だか面倒くさいな〜と思ってるうちにパタリと見なくなってしまったのですが、この間久々に見たらいつの間にか知り合い夫婦に子供が産まれていて「えええっ?」と仰け反る事件があり(事件じゃないけど)、すっかりフェイスブック浦島になっている自分を自覚した次第です。
インスタグラムの方はミル坊が家に来て以来毎日写真を上げるようになったのですが、世の中猫好きが多いのかフォロワーさんが急に増え沢山いいねを押して貰えるようになり、以前はいいねボタンに抵抗があり、せっせと何度も写真を撮り直しマメにアップしては「こんなにいいねを貰っちゃった〜」とカゴの中にわっさわっさといいねを掻き集めてほくそ笑むような輩を「お前らはいいね収集家かっ、浅ましいわっ」と穿った見方をしていた自分なのに意外にもいいねを貰えると嬉しいことを発見してしまい、自分も他人の猫写真を見ては「かわゆす〜」といいねを自然に押すようになってしまったのでわからないものです。猫をきっかけにすっかりいいねボタンを受け入れる身体になってしまいました。
そんな調子で久々にフェイスブックを見たら自然にいいねを押している自分がおり、これまで見てなかった知人の近況を知るに至り、久々にSNSに参加した、という気分になりました。今年はなるべくフェイスブックの方も見るようにしようと思った次第です。そもそもあれって内容が面白い面白くないじゃなくて知人からの「元気でやってますよ」という日々の年賀状が届くみたいなもので、それを見てたまにいいねを押す感じで良いんだなと今更ながら認識した次第です。(そんな認識で良いのですよね)。
しかし1年の初頭の抱負を述べるべきところに「なるべくフェイスブックも見るようにする」という超薄ぼんやりした表明を(しかも2016年にもなって)堂々とするとは如何なものかという感じですが、そんな感じの始動になってしまいました2016年の五十嵐は。そんなネット上で日々行われている社交も、SNSもやらず携帯も持たない人にとっては無縁な世界なのであり、そんなものに振り回されることなく現実の社交だけをして生きるのもそれはそれで快適なのだろうなとふと思ったりするんですけどね。どっちが幸せか人それぞれなんでしょうが。
今日もタイムラインに上がって来る名前も顔も知らない外国人の浮かれた写真にいいねを押しながら「この人一体誰なんだろう。あ、私のトモダチか!」とふと思う、そんな年始です。
不思議ですね、SNSというものは。