I Love Youな周波数

先日は鎌倉molnにてyojikとwandaさんのレコ発ライブを、ゲストにAlfred Beach Sandalさんを迎えてお送りしました。たくさんのご来場をどうもありがとうございました。ヨーワンさんのライブをバンド編成で見たいなあ、じゃあ呼んじゃえということで企画したんですが、とても良いイベントになりました。
今回ヨーワンさんは専属のPAさん含む大人数で来てくれまして。PAさんは早速スピーカーと卓とケーブル類をささっと組んでくれて、イトケンさんも手早くドラムセットを組み、他のメンバー(NRQの吉田さんと服部さん)もセッティングが手早く、流石のチームワークだなと感心しながら見ていたんですが、ギターのwandaさんだけ早くも汗をかきテンパり気味だったのが何だか微笑ましかったですね。普段は私がPA的なことをやっているのですが、専属のPAの方がいるとこんなに楽なのか〜と思いながらリハをお客さん気分で眺めてしまいました。(ついでにビーサンさんのPAもやっていただき感謝です)。この日はバレンタイン前日ということでyojikさんから男性陣にチョコが配られ(女子力高し!)、一同良い感じにテンションが上がりいざ本番となりまして。
満員御礼となったこの日、まず登場したのはAlfred Beach Sandalさんで。ガットギター1本と歌声というシンプルなセットであの独自な楽曲の世界観を過分なく表現していて素晴らしかったですね。不穏で独特な響きのコードにどこに着地するか見えないメロディー、短編小説を読んでいるかのような歌詞が美しいボイスで朗々と歌われる様に思わず引き込まれてしまいました。新譜では5lackをラップでフィーチャーするなどサウンドへのアプローチも面白く、古今の様々な音楽の要素を自分の持ち味に見事に落とし込んでいるのが魅力だなと思いましたね。この日は店のBGMでフアナ・モリーナの「Tres Cosas」というアルバムをかけていたのですが、終演後に突然ビーサンさんが「わ、今フアナの曲と外の踏切の音が完全にシンクロしてた!」と発言していて、この人は普段からこういう感じで音を捕らえているのだろうなと彼の耳の秘密に触れた瞬間がありました。(彼曰く「俺、このフアナのアルバムめっちゃ好きなんすよ〜」とのことでした。)
そんなビーサンさんに次いで登場したのがこの日の主役yojikとwandaさんで。昨年リリースされたアルバム「フィロカリア」のレコ発と銘打ちながらこの日は新曲ばかりを演奏していてもうすでにユニットは新しいモードに入っていることが伺え、とても良いライブでしたね。特にwandaさんは激しく動いているわけでもないのにひと試合戦ったボクサーのように汗だくになっており、その歌声から熱きパッションが伝わり素晴らしかったです。あの愛すべきいじられキャラは貴重なんじゃないかと思いました。お客さんがレスポンスする決まりの曲ではバッチリ客席から歌声が聞こえ、ファンの皆様の気合も感じられましたね。イトケンさんも流石のサポートで、NRQのお2人の演奏もとても良かったです。私は以前NRQとライブで共演したことがあるのですが、彼らに言われるまでそれを忘れていて初めましてテンションで話してしまったんですが、共通の知り合いがいて色々な繋がりがありましたね。MCではバレンタインについての話になり、ベースの服部さんがクラスのマドンナからチョコを貰ったのに何だか恐くなって川に捨ててしまったという話が面白かったですね。ちょっとわからなくもないなあという。yojikさんとwandaさんのデュオも良いんですがバンド編成も魅力的でとても良かったですね。
アンコールではビーサンさんも交えて名曲「I Love You」を演奏してくれまして。ビーサンさんはこの日のリハで初めて曲を聞いてその場で1回合わせただけだったんですが、本番ではバッチリだったので流石だなと思った次第です。貴重なセッションを見る事が出来ました。「I Love You」は毎回聴く度に泣いてしまうのですが、この日もリハを見ながらうるうる来てしまっていた私です。「どうして与えられた困難を乗り越えようとしないの?」「どうして鳥のように歌わないの?与えられた声で一生懸命に歌おうとしないの?」「あなたのいう自由が世界から逃げるためのいいわけでしかないのなら」「私の言葉は結局I Love You」と歌われるこの2人の関係性は大人が子供を諭す歌にも聞こえるし、恋人や夫婦が相手を励ます歌にも聞こえるし、自分で自分を叱咤する歌のようにも聞こえるのですが、その行き着く先は結局I Love Youでしかないという広い人間愛に満ちた歌で、これをyojikさんの母性溢れる声で歌われると何だか無条件に泣けてしまうのですよね。「偽りのラブソングでしかないわ」「あなたを抱きしめるふり」などというひねた言葉が添えられているのも良いし、「大人になれたらね」「19に戻りたい」と歌詞の中で大人と子供を行ったり来たりするのも、どっちの立場にも成り得る人間の弱さを歌い込んでいるようであり、何層にも複雑にひねってあるラブソングになっていて、毎回見事だなと思ってしまう私です。ビーサンさんのコーラスと共に聴けて良かったです。
終演後には近くの店で一同打ち上げをしまして。ビーサンさんがレコーディング中に、エンジニアのZAKさんがご飯を食べずに集中して作業するので自分も食べ損ねて5キロ痩せたという話や、イトケンさんの音叉の話とか服部さんのおばあちゃんの話とか色々面白い話を聞けました。音叉って440Hz以外にも様々な周波数のものがあるらしく、自分に合う周波数の音叉でヒーリング効果を得られるというのは興味深い話でしたね。
そんな楽しい宴の後、さらにイトケンさんがミルクに会いたいというので自宅まで来ていただきまして。警戒して隠れていたミル坊を巧みに呼び出し、撫でることに成功したイトケンさんの猫使いとしての手腕が見事でしたね。ミル坊も初対面なのにすぐに心を許しておりました。最近イトケンさんの自宅にも通い猫が来ているそうで、そこで磨かれた腕なのでしょうか。イトケンさんのミル坊への優しいまなざしが印象的でした。その後コーヒーなど飲みつつあれこれ雑談しつつ、イトケンさんは東京へ帰っていかれました。本当はきょうこさんにもミル坊に会わせたかったなと思いつつ。
みゃーみゃー鳴くミル坊の姿を見ながら、猫相手にも結局I Love Youということなのかもしれないなと思いつつ、ライブで聴いたあの曲のフレーズを反芻した私です。まあ猫は困難を前にただただ寝るだけなんですけどね。