猫の曲線

早くも2月になってしまいました。2018年もすでに1ヶ月が経ってしまったとは。気付かぬうちに時の流れが早くなる呪文でも唱えているのだろうかと、己の独り言を省みたりしているこの頃です。このままでは今年もあっという間に過ぎ去ってしまいそうです。
1月後半は大相撲一月場所に合わせて両国の催事に出ており、何かと慌ただしかったのですが(あのような騒動があったのにというか、あったおかげでもあるのか連日凄い人出でした)、それも終わってここ最近はひたすら自宅に籠って地味に仕事をしています。ありがたいことにmolnのお客さんから招き猫のオーダーをたくさんいただく機会があり、それをせっせと作っています。その合間を縫って草とten shoesのレコーディング作業も進めており、気付けば数日家から出ないみたいな状況になっています。
だいたい2階の自部屋で作業をしているのですが、夕方になると「とんっ」という音と共に部屋のドアが開き、何かと見やるとミル坊がトコトコ入って来て「ゆうくん、下に降りようようー」と足元でミャーミャー鳴くのです。「ゆうくん、まだ仕事なんだよ」とミル坊を部屋から追い出しドアを閉めるも、またしばらくすると「とんっ」とドアが開き今度は部屋の外で待機しながら「お仕事終わるのまだ?」とばかりに中を覗き込むのです。とにかく私を下に誘うのです。その健気な姿が可愛いのです。「とんっ」という小気味好い音はミル坊が前足を使ってドアを開ける音で、家の中で唯一私の部屋のドアだけがユルいのでミル坊にも簡単に開けられるのです。たまにヘッドフォンをしてギターの録音をしている最中にドアが開くと吃驚するんですけどね。誰か見知らぬ者が侵入したのかと一瞬思い。しかも直後に「ミャーミャー」という鳴き声も一緒に録音されてしまうし。これまでもミル坊の声が入ってNGというのは何度もあるのです。もういっそお前をボーカルにしたろうかという向きもあるのですが。
ミル坊にとってはご飯もおやつも1階で貰えるし、遊んで貰えるのも1階だし、家族みんなが揃うのが1階なので、何となく「楽しい団欒は1階」という認識があるのでしょうか。夜は1階で過ごすのがマストっしょ、という顔をしているのです。ミル坊が私の部屋の外で待機中にふと1階に降りようとすると「わ、ゆうくん下に降りるの?やったあ!」とばかりにミャーミャー鳴いてドタドタ嬉しそうに階段を降りるのですが、再び2階へ上がろうとする私を見て「え〜、また行っちゃうの〜」と実に哀しそうな顔をするので、ついつい遊んであげてしまったりもするんですけどね。
逆に昼間は私の部屋に入って来て、「ゆうくん、ちょっと寝かせて」と私の膝の上に乗りグーグー寝るので、猫を乗せながら招き猫を描くという実に猫三昧な感じで仕事をしています。昼間寝るのは2階でもオーケーっしょという認識なのでしょうか。そんなミル坊に翻弄されながら暮らしている日々です。
時の流れがゆっくりになる呪文を会得出来ないものかと思いながらミル坊の背中を撫でています。冬毛に覆われてふわふわなその美しき曲線を。