小さな巣を作るように 草とten shoesデビュー記

去年のクリスマスイブの話になりますが、私参加の新バンド「草とten shoes」のデビューライブが巣巣にてございました。毎年恒例巣巣での山田稔明氏ライブの前座としての出演だったのですが、前売りは早々に売り切れ、いきなり満員の会場でのデビューと相成りました。たくさんのご来場をどうもありがとうございました。
そもそもこの「草とten shoes」とは何ぞやという話をしますと、今回デビューの会場となった等々力巣巣の店主の岩崎さんが「バンドやりたーい」と言い出したのがきっかけで始まりまして。巣巣ではイシカワアユミさんを講師としてピアノ教室も行なっているのですが、そこで岩崎さんもピアノを習い出したらしく、この折角のピアノの腕前をどこかで発揮出来ないかと思案し行き着いたのが「ガールズバンド結成」らしく。そこでメンバーに誘われたのがmoln店主の佐々木綾(私の妻)であり、その岩崎さんのピアノ講師であり草アーティストのイシカワアユミさんという面子で。バンド名の由来は店主たちの集まりだから複数形で店主ズ、ten shoesという駄洒落なのです。草はアユミさん担当で。(岩崎さん命名)。
しかしアユミさん以外は素人なわけで、曲を作ったり演奏をまとめたりする人がいないとバンドとして成立しないのではということで、たまたま近くにいた私も(半ば強引に・笑)参加させられることになりまして。まあいつもお世話になっている岩崎さんに「曲作ってー」と頼まれれば断るわけにもいかず、今回このバンド用に1曲書き下ろしたのですが、それを聞いた岩崎さんは大層気に入ったようで、こんな良い曲があるならライブしなきゃと山田氏にそのデモを聞かせてどう説得したのかわかりませんが(多分「山田くんの前座でライブやりたーい」と率直にお願いしたと思うんですが)、今回の初ライブが決まったわけです。
しかしそのデモは私がひとりで仕上げたもので、実際演奏するのは岩崎さんたちなのであり。そこから猛練習が始まったわけですがバンド初心者にはなかなか大変な作業であったと思われ。音程の取れぬ妻にはガイド入りのカラオケを作り「リズムが合ってない」「音が合ってない」などと手取り足取り指導し、岩崎さんには指定のフレーズを伝えやはり「リズムが合ってない」「音が合ってない」などと手取り足取り指導し。あしたのジョーに於いてジョーに拳闘を指導する丹下段平の如く「打つべし!打つべし!打つべし!」のテンションで指導していたら山田氏にもその様子が伝わったらしく「五十嵐くんがめっちゃ厳しいらしい」「超スパルタや」「現世に現れた鬼や」との評判をいただくに至ったのですが、というのも岩崎さんは何度練習してもうまく出来ないのであり、つい私も口を酸っぱく注意してしまい指導に熱が入ってしまうのですね。しかし岩崎さんが凄いのは普通あれだけ出来ないと「ああどうしよう大丈夫かな〜」などと不安にもなるものですが、彼女は常に「大丈夫ー、私本番に強いしー、きっと出来るしー」とポジティブなのです。ポジティブに揺らぎがないのです。常に南国の太陽の如く明るくにこやかなのです。これには私は「岩崎さん素晴らしいなー」と素直に感心してしまいましたね。岩崎さんの周りに人がたくさん集まるのはこの明るさゆえかと合点がいった次第です。人生で何か悩んだりしている方は巣巣に行って岩崎さんと話すか、岩崎さんの著書「小さな巣を作るように暮らすこと」を読むと勇気が湧いて来るかと思いますのでぜひご一読を。(別にステマではありません)。
そんな岩崎さんに「山田くんも曲書いてー」と頼まれたであろう山田氏が何とバンド用に1曲書き下ろしてくれるという嬉しいサプライズもあり、レパートリー2曲を得たバンドはさらなる練習を経まして。山田氏からも「お前ら俺の前座できちんと演奏出来るんだろうな〜」と逐一チェックが入り「ここにも鬼がいた!」とメンバーは震えたのですが、そんな鬼たちに見守られながらいよいよ初ライブに臨みまして。
ライブ直前に私が腰痛と胃痛でダウンというアクシデントを乗り越え迎えた当日、緊張したメンバーはみなちょい早めに集まりまして。厳しい目でチェックする山田氏と優しく見守る鍵盤の佐々木真里さんを前にリハーサルというか普通にがっつり練習し。そして迎えた開演、白い衣装に毛糸の帽子で揃えた我々は緊張しながらも用意した2曲を歌い演奏したのでした。
まず歌った山田氏書き下ろしのナンバー「冬の日の幻」はサイモン&ガーファンクル調の疾走感のあるフォークソングで。最後のリハまでうまく演奏出来なかった岩崎さんが本当に本番ではミスすることなく演奏出来てたので流石でしたね。白を基調に様々な色が重なっていくカラフルな歌詞がクリスマスイブにぴったりでした。これは女子3人でハモった方が絵的にも良いと思い「えー私歌えない〜」と言う岩崎さんにもコーラスを歌わせたのですが、雰囲気は伝わったのではないでしょうか。一方私が書いたのは「夏はまっしろ」という夏の歌で。岩崎さんをイメージして書いた1曲なのですが、私のここ最近の想いも存分に込めましたし、山田氏からも「あの曲ええやん〜」と太鼓判を押されたのでこのバンドのテーマソングになるのではないでしょうか。夏頃からずっと練習していた曲なので、かなりバンド全員の息が合った演奏になったと思います。メンバーがMCをしないので私ひとりであれこれ喋ったんですが(五十嵐さんがあんなに喋るキャラとは知らなかったと何人かに言われました)、次回はメンバーにもがっつり喋って貰おうと思った次第です。初めてのライブにしてはという前提付きとはいえ、客席で見ていた近藤研二さんやシンガーのけものさんにも「良かったよ〜」と言って貰ったのでまあ成功だったのではないでしょうかね。うん、成功だ成功。(ポジティブ思考がすっかり岩崎さんから伝染していますが)
その後山田氏のステージの方にも私は3曲ほど参加させていただき。巣巣での演奏は思えばかなり久し振りでしたね。クリスマス仕様のセットや近藤研二さんとのセッションなど見どころ満載だったんですが、この日のハイライトは山田氏が巣巣に捧げる新曲を用意して来たことでしょう。その名もずはり「小さな巣を作るように暮らすこと」。これが実に良い曲で染みましたね。岩崎さん感動で泣くかなーと見てたら岩崎さんはニコニコしていて、全然関係ないお客さんが泣いてましたけどね。そしてアンコールでは草とten shoesも加わって小沢健二の「いちょう並木のセレナーデ」を演奏し。これがまた楽しかったですね。クリスマス気分も盛り上がり。妻もデビューからいきなり山田氏と(しかもオザケンの曲で)デュエットするとは思わなかったでしょうが、真里さんに助けられながらハモっておりました。
終演後の打ち上げでは山田鬼からバンド一同「お前らもっと精進せなあかんでー」などと駄目出しされつつイジられつつ、楽しい時間を過ごしました。巣巣での山田氏のクリスマスイブのライブはもう7年目だそうですが、店主と演者とお客さんが毎年集い、このような空間を作り続けられるというのはとても素敵なことじゃないかと思った次第です。今回そんな店主と演者の手伝いで私も参加させていただき嬉しく思った次第です。どうもありがとうございました。
そんな草とten shoes、どこぞで見かけたらぜひ耳と目を傾けていただきたく。まあまだ2曲しかレパートリーがないですけどね。