コーネリアス、小沢健二についての雑感

先日はコーネリアスのライブを見に横浜ベイホールという所まで行って来たのですが、「横浜か、近い近い〜」とすっかり油断して直前になってから場所を調べたら最寄駅は横浜駅ではなく元町・中華街駅なのであり、しかも駅から徒歩15分とそこそこ歩くのであり、「早く言ってよう〜」と慌てて出て大雨の中を歩きギリギリになって会場に着いたのですが、初めて行く場所は事前に調べた方が良いですね。ベイホールは勝手にzeppみたいな大きいホールを想像していたら普通のライブハウスで、結構近くで見られるなと思っていたもののいざ幕が開いたら主役の小山田圭吾氏が大きな柱に隠れて見えないという状況で、私も周りの人たちも「早く言ってよう〜」とわらわら見える位置に移動しておりました。
そんなわらわらな中で見たコーネリアスのライブですが、音響と映像と照明が渾然一体となって素晴らしいステージでした。緻密で精巧なアート作品の如き楽曲が躍動感を伴って生々しく伝わって来ました。「point」以降の映像とシンクロしたステージはすでに体験済みなので、初見の新曲の再現が楽しみだったのですが、「あなたがいるなら」のダブ処理とか、生のギターソロとか(小山田氏がチョーキングしてる!と思いながら見てました)見応えありましたね。何よりドラムのあらきゆうこさんが完全に音源を再現していて見事でした。(柱に隠れて姿は見えなかったですが。)サングラスをかけたクールな小山田氏も良いけど、ロックスター然とした堀江博久氏の佇まいの良さも魅力的でした。カウベルを叩く所作のかっこよさよ。(私はニール&イライザから彼のファンなのです。)
コーネリアスの楽曲は音の位相や響き、リズムの組み立てなど作曲と言うよりは彫刻とか立体像とか、空間美術のようなものだと思っていて、今回の新譜は歌声が多めにフィーチャーされている分、より親しみやすく目に映る立像のような印象を受けました。「あなたがいるなら」のボーカルには大人の色気さえ感じて、フリッパーズからの時の流れを感じました。
コーネリアスの音響の凄さを聴くにつけ、片や小沢健二氏はキックの低音とか全体の音像などにはあまりこだわらないのかなと思ってしまうのですが、あの言葉の強度とメロディー、繊細なアレンジはコーネリアスとは別なベクトルで凄みがあり、絵画とか書道とか文学とか紙の上の芸術のような気がします。ライブではそれを肉感的に再現するのがまた凄いのですが。
小沢健二が仕掛けるここ最近のプロモーションは広告代理店的な発想からではなく「こうしたら素敵じゃない?」から成されていると思うのですが、無邪気に見えるそれはいちいちお金がかかっていて、採算取れるのかなみたいな視点などどうでも良く思える優雅さが凄く、セカオワとフルコース料理食べながら新曲について語り合う映像の豪華な衣装やセットなどを見るにつけ小沢健二だなあという印象を受けます。こんな異なる表現者である2人が一時期活動を共にしていたことが奇跡なのかもしれません。世界を旅して来たオザケンがドメスティックな活動に落ち着き、日本でコツコツ作品を作っていたコーネリアスが世界で評価を受けているというのも面白いです。オザケンのライブはチケットが取れなかったので見てないのですが、機会があればこちらも見てみたいものです。
コーネリアスの素晴らしいライブを見た後は同じく見に来ていたミルブックス藤原さんと中華を食べて(誕生日ということでご馳走していただきました)落語の話をして帰りました。良い夜でした。