北欧旅日記 ラトビア編1

ラトビアリトアニアフィンランドを巡る旅の初日、早朝ミル坊に「行って来るよ、留守よろしくな!」と告げて(彼はにゃんで僕を置いて行くんだようっ、という哀しげな表情でした)、大きなスーツケースを転がし、まずは成田まで向かいまして。横浜からリムジンバスに乗って1時間ちょいで成田に着き、そこで今回同行する岩崎さんと合流し。もう何年も買い付けでラトビアに行っている岩崎さんは服装も荷物もそれ仕様で完璧なのであり、その旅の心得などを聞いてるうちにフライトの時間になり。今回はまずフィンランドまで飛び、そこからまた飛行機に乗り換えてラトビアへ到着というルートです。手元のチケットの時間を見ると15:40フィンランド着と書いてあったので、何も考えず「ああ、着くの3時間半後かあ」と呟いたらあやに「ゆうくん、時差が6時間あるから着くの9時間半後だよ!3時間半で着くって国内か!」とつっこまれてしまい、思わず出た己のボケ発言に「何てね、でへへ〜」などと誤魔化してみせたのですが、あやは「ねえねえ、ゆうくんがフィンランドに3時間半で着くって言ってるよー」などと岩崎さんに言いふらすので、「やめろ!バンマスとしての威厳がなくなるではないかっ」と全力で止めるというしょうもない小競り合いからのスタートとなりました。
9時間半も狭い席に座りっ放しなのは苦痛ではあるのですが、何より私に堪えたのは機内の寒さなのであり、とにかく冷房がガンガン効いているのです。弱冷房車指定はないのか、追加料金払うから冷房を弱めて!と思いつつ、ストールを首の周りにぐるぐる巻き、毛布で全身を多い、捨てられた子猫のようにぶるぶる震えていたのですが、周りの外国人はみなTシャツ1枚に短パンなどの軽装なのです。寒がリーダー五十嵐ここにありという感じで、おそらく機内で一番の厚着でフィンランドに向かいました。
機内では映画を見るしか時間を過ごす術がなく、「三度目の殺人」「オリエント急行殺人事件」「007 ゴールドフィンガー」「007 慰めの報酬」を続けざまに鑑賞し。007シリーズがことの外面白く、「007 スカイフォール」も見始めて盛り上がって来た頃にフィンランドに到着してしまい、何だよちょうど良いところだったのに、追加料金払うから続き見せて!と要求したくなったのですが、それでは永遠に着かないのでやむなく飛行機を降りました。
フィンランドでは今回の旅に同じく同行する大阪でcotenというお店をされているあやこさん、愛媛の洋服ブランドSa-Rahの千秋さん、ミュージシャン、カメラマンのaCaeさんと合流し。ドラクエの如くパーティーの人数が増えました。見渡すと同じくラトビアの森の市場に行くのであろう日本人の方が結構いるのですね。買い付けの業者さんもいれば個人の買い物客らしき人もいて。それらの人々と共に小振りな飛行機に乗り換え、1時間半くらいでラトビアに到着しました。
iPhoneの時計はいつの間にか現地時間の時計に変わっており。日本では深夜の時間帯なのにラトビアではまだ夕方なのです。しかもこちらでは夜の10時くらいまで明るいらしく、なかなか夜が到来しないのです。空港からタクシーで宿まで向かっているうちに「外国に来たなあ」という実感が湧き、ホテルのチェックインを済ませ(あやは空港の人に「AYAってこっちでは運転するって意味なんだよ」と話しかけられ、フロントの人には「あら、私もAYAって名前なのよ」と名前きっかけで気さくに話しかけられていました)、そこからみんなでリガの街へ繰り出しまして。ラトビアの首都であるリガはかなりの都会なのですが、今回宿泊した地域は旧市街で、古風な美しい建物が立ち並びとても雰囲気があるのです。ユーゲントシュティール建築と呼ばれる、花や植物などの有機的なモチーフや自由曲線の組み合わせによる従来の様式に囚われない装飾性や、鉄やガラスといった当時の新素材の利用などが特徴の建物はどれも美術品の如く見応えがあり。石畳のごつごつした路の周りにはパブやレストランが並び、みな外のテラス席でビアなんぞ飲んでいるのです。祭りのような雰囲気で楽しそうなのです。まるでジブリ映画の舞台に迷い込んだような気分です。(今回ラトビアリトアニアフィンランドと国が変わる度にジブリの映画の舞台のようだ、という感想を口にしていました。)そして街のそこかしこで音楽が聞こえ、バンドが生演奏しているのです。ふと角を曲がれば男性がジョン・レノンの「イマジン」を弾き語りしており、明るい街中でみなが笑顔で行き交っている様子を見て「ピースってまさにこういう風景のことを言うのだろうな」と思った次第です。
朝早く起きているので眠いはずなのですが、太陽の明るさと時計が示す時間を見ているとまだまだ昼間という体感で、この永遠に続くかのような長い昼間は何なんだ、これは夢なのか、どこかの絵画の中に迷い込んでるようだ、などと思いながらふらふらリガの街を歩き、その後みんなでレストランでビアなど飲みながら食事をしました。一体これは夕食なのか夜食なのか何なのかと思いながら。みんなも眠いはずなんですが、旅のテンションなのか料理の美味しさからなのか、会話も弾み。その後スーパーで買い物をして(この日はユーロを持ち合わせていなかったので岩崎先輩から借りました)ホテルに戻り、ビアなど飲みつつ(飲んでばっかりですが)ようやく眠りにつきました。この日はほぼ24時間起きていたことになりますが、これも旅の醍醐味なのです。旅の初日は長い長い一日となりました。ここから長いロードが続くのです。