ココ坊フライング

気が付けば10月になってしまいました。毎日慌ただしく暮らしていると時の経過が本当にあっという間なのです。ココ坊が我が家にやって来たのは6月なので、早くも4ヶ月が経ってしまったということです。その間も色々やらかしているイタズラ坊主のココ坊ですが、ココ坊フライング事件は特に大きな出来事として記憶されることでしょう。
事の発端はある朝、私がゴミ捨てに行こうと玄関を出ると、どこからかミャーミャーと猫の鳴き声が聞こえたのです。あれ近くに猫がいるぞと家の周辺をきょろきょろ探すとまさに我が家の横の植え込みにいたのです、ちょこんとお座りした猫が。それがやけにココ坊に似ているのです。いやよくよく見るとココ坊本人なのです。「あれ、この猫何だかココ坊そっくりだな〜。いや、ココ坊っ?本人っ?何で外に出てるのっ?」と私は驚き、取りあえず身柄を確保しなければと「ココ坊〜、おいで〜」と呼んでみるも坊はきょとんとして動かないのです。以前ミル坊が脱出した時は追いかけようとするとかえって逃げたなと思い出し、ここは全世界の猫が大好きでお馴染みのおやつ、ちゅーるで誘い出すしかないと「あやくん!ちゅーるを持って来てくれ!ココ坊が脱出した!」と家の中にいたあやを呼ぶとその尋常ならざる私の声色に驚いたのか「何っ?脱出だとっ?」と手にちゅーるを持ってダッシュで外に出て来て。さっきまで家の中にいたはずなのにどうしたことかとあやも動揺しておりましたが、まずは捕まえるのが先決です。いざあやが植え込みにいたココ坊にちゅーるを差し出すと最初は警戒して後ずさりしていたものの、その美味しそうな匂いに抗えぬのか「あれ、ひょっとしておやつ?好きなやつやん!」と能天気にこちらにトコトコと歩いて来て。「それ、今だっ!」と近寄ったところを私は渾身の力でココ坊の身体をむんずと捕まえ、「もうお前を離さないぞ!永遠に!フォーエバー!」とラブソングの一節のような言葉を発しながら何とか家の中に連れ戻すことに成功したのでした。いやー危ないところでした。あのままどこかに逃げて行って車に轢かれるなどしたら大変です。
それにしてもどこから外に出たのかです。ゴミ捨ての時に玄関開けた瞬間に足元を飛び出したのならわかりそうなものですが。すると2階を調べに行ったあやから「大変だ!網戸が全開だ!」との声が聞こえ。どうやら見たところ爪で網戸を自分でこじ開け、窓際で遊んでいるうちに2階から落下したようなのです。2階といっても結構な高さです。スイカを落としたら余裕で割れる高さです。ジャッキー・チェンなら軽く飛び降りれるのでしょうが、非ジャッキーである私ならどこかしら怪我をしてしまうことでしょう。こんな距離を落下して大丈夫なのかとココ坊を見ると足をひきずるでもなく辛そうでもなく普通に歩いているのです。顔を見たらあごに擦り傷はありましたが、それ以外は特に異常は見当たらないのです。お前はジャッキーレベルなのか、プロジェクトAの時計台落下シーンを人知れず再現したのか、これからお前をジャッキー・ニャンと呼んでやろうか!と感心したものの、外傷はなくても内臓に何かしらの異常があるかもしれません。一応病院に連れて行こうと思ったのですが、あいにくその日は休診日で。今日一日様子を見て明日連れて行こうと相成ったのですが、いつもは元気いっぱいのココ坊がその日は寝てばっかりだし、心なしかグッタリしているのです。ショックを受けているのか、もしくは落下により何かしらの異常をきたしているのでしょうか。終始気が気でなかったのですが、次の日の朝には何事もなかったかのように家中を走り回っており。昨日のことは忘れました!とばかりに元気いっぱいなのです。これはもう大丈夫かもなと思ったのですが、一応病院に連れて行って全身チェックしてもらったところ、「あ、元気ですね。異常ありません。」とのことで。ほっとひと安心した我々です。
病院の待合室では他のお客さんたちと「おたくの猫ちゃんいくつ?可愛いわね〜」「うちは3ヶ月なんだけど耳の調子が悪くて〜」「うちの子は元盲導犬だったんですよ」「わーお利口さんですね〜」などと犬猫交えた飼い主同士の交流が成され。お互いの犬猫を撫でながらこんなピースフルな空間があるのだなと感心してしまった次第です。世界の戦争を止められるのは最早可愛い猫や犬しかいないのではないでしょうか。
そんなわけでジャッキー・ニャンことココ坊を連れて帰ると、ミル坊が早速近寄って来てココ坊の全身をペロペロ舐めておりました。心配していたのでしょうか。その後1階にしか付けていなかったストッパーを2階にも付けたのは言うまでもありません。どこから脱走するかジャッキーの動きは読めないのです。 
ココ坊は2階からの飛翔の瞬間、こちらもリアルに飛んだ窪塚洋介の如く「アイキャンフライ〜!」と叫んだのでしょうか。おそらくその落下のスピードは初体験だったことでしょう。「春が2階から落ちて来た」は伊坂幸太郎の小説「重力ピエロ」の冒頭の文章ですが、ココ坊が2階から落ちて来た忘れられない夏になりました。ヒーキャンフライ。

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